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【革新的サーフボード開発】宮崎県小林市の「kiriflex」が地元桐を活用し、サーフィン界に革命をもたらす!

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この春、cazualチームは宮崎県小林市で2週間のプチ移住生活をして、さまざまな取材活動を行なった。そんなプチ移住体験で出会った素敵な人や体験したアクティビティ、実際に住んでみてわかった小林市の暮らし心地をレポートするシリーズ記事を展開中だ。

そんな小林市をさまざまな角度から掘り下げるシリーズ記事の第11回に登場するのは山元智博さん(44歳)。「kiriflex(キリフレックス)」というブランドで、サーフボードのパーツを作っている。

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取材の数日前までインドネシアのバリ島にサーフィンをしに行っていた山元さん。「デカい波が好きなんで」という。

 宮崎県は海のイメージが強いが、鹿児島との県境、山間部に位置する小林市には海がない。山元さんはその海のない小林市でサーフボードを製作しているサーファーだ。

山元さんの実家は祖父の代から続く製材所。そこで製材された良質な南九州産の桐を芯材に用い、世界が注目する革新的なサーフボードを生み続けている。


「自分で作っちゃったほうが早いな」で始まったサーフボード作り

cazual編集部(以下、) 山元さんがサーフィンを始めたのは何歳のときですか?

山元さん(以下、) 17〜18歳ぐらいです。父親の弟、つまりおじさんがサーフィンをやってたので、何回か一緒に連れていってもらってました。その後、クルマの免許を取ってからは自分で海に行くようになりましたね。

 サーフボードを削り出すシェーパーの仕事は、いつからですか?

山 高校を卒業してから測量学校に通い、31歳までは建設関係の仕事をやってました。サーフィンはずっと続けてたんですけど、たまたまオーダーしたボードの左右の形が違っていたので、それをきっかけにボードを削るようになりました。

 サーフボードの製作って、いまだに手作業の部分が多いですけど、最近は、ブランクスと呼ばれる発泡スチロールのようなフォーム材をある程度の形まで機械で削り出すやり方がありますよね。山元さんのそれは10年ちょっと前の話ですが、テンプレートという型紙をブランクスに当ててラインを引き、そのラインに沿って削り出してたと思います。型紙を使っているのに、左右非対称になってしまうなんてことがあるんですか?

山 あります。というか、ありました(笑)。明らかに違ったんですよ、左右で形が。僕は測量をやっていたので、見た瞬間に左右が非対称になっていることがわかったんです(笑)。

 ということは、素人には気づかないレベルの話ですか?

 いや、測り方を知ってる人はわかるレベルですね。テンプレートは片側だけですから、それをひっくり返すときに間違えたんですよ。どこに合わせるかで全然違っちゃうんで。そういうのを見抜いてしまったから、「これちょっと違いますよね。測ってみてください」って送り返したんです。

そしたら左右一緒だってとぼけるもんですから、「明らかに左右で4ミリ違いますよね」って具体的に言ったら、最後は向こうも認めてくれて。こんなふうにモメるぐらいだったら、自分で作っちゃったほうが早いなって思って。それがサーフボードのシェープを始めるきっかけです。

目指すはシェアNo. 1 世界のサーフボードを全部「キリフレックス」にしたい

海のないエリアから、足しげくサーフィンに通う山元さん。高いお金を払い、せっかくオーダーしたサーフボードの仕上がりに納得いかず、ついには自分で作り始めることになった。しかしそれが、サーフィンの世界に革命を起こすことの第一歩になろうとは、誰が予想しただろうか。

 作ったほうが早いとサラッと言いますけど、サーフボードのシェープって、そんなに簡単なものですか?

 いや、全然簡単じゃないですね(笑)。でもまぁ、とにかく図面を起こすことからスタートして、作り続けていけばなんとかなるかなと。全部、ダメ元でやってました。

わからないところは、知り合いのシェーパーのところへ聞きに行ったりしましたけど、ほとんど独学。サーフィンも全部独学ですから(笑)。まずは自分で考えることが大事だと思うんです。

最初の4年くらいはハンドシェープで、それからマシンシェープも導入して。趣味が高じて、ついには仕事になりました。

 どんどん本格的になって行ったんですね。それがどのくらい前の話ですか?

 31〜32歳のころなんで、10年ちょっと前ですね。2008年ぐらいかな。で、サーフボードをたくさん削っていくうちに、今度はストリンガーのねじれが気になりだして……。

 サーフボードってフォーム材だけでできているのではなく、センターにストリンガーという木の芯材が入ってます。サーフボードを削り出す前のブランクスの時点で、その中にあらかじめストリンガーがサンドされてますが、それがねじれてるんですか?

 木は生き物だから、必ずねじれてしまうんですよ。僕は実家が製材所なんで、ちっちゃいころから木には親しみがあったんです。だから見た瞬間にねじれの原因わかってしまって、これはそもそもが間違ってると感じたんです。

マシンシェープした状態のブランクス。白い発泡材の真ん中にひと筋通るラインがキリフレックのストリンガー。

 ストリンガーは強度や反発力を高める背骨のような役割。もちろんサーフボードに使うわけですから軽い素材がいい。バルサのプライウッドというベニア材が主に使われてるんですよね?

 それをいろんな木に入れ替えて試してみて、地元である南九州産の桐にたどり着いたんですよ。もう全然違いました。

 桐の良さって何ですか?

 もちろん軽いっていうのはありますが、ねじれに強い。桐の特徴で一番いいのは、ねじれから反発して返ってくるスピードがダントツに速いことです。重い木はねじっても「ヨイショ」って感じでゆっくり戻ってくるんです。桐はねじったら、パンッと跳ね返ってくるんですよ。

 それで桐と、反射的という英語の“Reflex(リフレックス)”をかけた「kiriflex(キリフレックス)」という製品が誕生し、実用新案特許も取得したんですね。

 ブランクスに桐のストリンガーを埋め込んだ「キリフレックス」が生まれて6年になります。いまはブランクスにもこだわっていて、空気含有率をだいぶ減らしたりして「キリフレックス」専用に発泡してもらっています。空気含有率が低いタイプと高いタイプと2種類あります。プロサーファーたちが納得いくものと、一般サーファーが乗って納得いくものと、2種類で展開しています。

現在、日本で生産されるサーフボードの「キリフレックス」シェア率は、実はもう50%を超えてますが、世界で見るとまだ一桁台なんです。

 一桁台とはいえ世界シェアでですから、十分すごいことじゃないですか! しかも海のない小林市発信のサーフィン製品がですよ!

 世界のサーフボードのほとんどはオーストラリアで作られているのですが、いまでは「キリフレックス」もオーストラリアで認められるようになっています。「コアフォーム」というオーストラリアのブランドと「キリフレックス」のダブルネームで出している製品もあるので、目標としては世界のサーフボードのストリンガーが、全部「キリフレックス」になることですね。

最高の素材は地元にあった 南九州さんの桐はしなりがいい

2014年の特許取得からわずか数年しか経っていないというのに、日本のサーフボードのシェアはすでに50%を超えている「キリフレックス」。

「実家が製材所だったから」「サーフィンが趣味だったから」「オーダーしたボードにミスがあったから」「測量をやっていたから」「自分でサーフボードをシェープし始めたから」

ひとつでも欠けていたら、いまや世界のサーフィンブランドも着目する「キリフレックス」は誕生しなかった。

 いまはストリンガーだけじゃなく、サーフボードとしてもオリジナルブランドを持っているんですよね?

 「Moanalolo Surfboards(モアナロロ サーフボード)」っていうブランドです。「モアナロロ」の意味は“海バカ”です(笑)。そしていま「キリフレックス」はストリンガーだけじゃなく、フィンも作ってます。

”海バカ”というハワイ語が冠された自身のブランド「モアナロロサーフボード」。海のない小林市生まれだと、きっと誰も想像しないだろう。

ストリンガーに続いて、フィンでも特許を取得。世界で圧倒的シェアを誇るFCSから「キリフレックス」のフィンがリリースされている。

 製材所を拝見したところ、たくさんの桐が山のようにストックされていましたが、そのうちサーフボード用に使われるのは、何%くらいなんですか?

 100%サーフボード用です。桐は昔、高級家具に使われるほどでした。軽いし狂いがないし、乾燥を保ちますし虫を寄せつけない。米びつにも使われていました。でもいまは高級家具の需要はないし、米びつも使わない。全部プラスチックに取って代わられてます。現代ではもう桐の使い道がなかったんです。

 いまだに“桐=高級家具”の印象はたしかにありますが、考えてみると桐製品は最近はほとんど見かけませんよね。

 製材しても家具を作ると捨てる部分が多い。でも「キリフレックス」では1本の木からショートボードで60〜80本、ロングボードで20本ぐらいのストリンガーが取れます。さらに、残ったところは全部フィンの材料になるので、捨てるところがありません。

このデジタル時代において、サーフボードの製造はかなりアナログな工程を踏む。

 すごいエコ商品ですね。桐を使ったストリンガーって、誰かほかに考える人いなかったんですかね。

 桐は軽いし狂いがないことも昔から知られてることなので、そのアイデアはあったみたいですけど、製品化できなかったようです。サーフボードに使用できるほど完全に乾燥する技術がなかった。

自分のとこは実家が昔からの技術ある製材所だったから、それができた。軽くてねじれのない素材を探してたとき、祖父の「桐がいいんじゃないの」ってひと言があったから「キリフレックス」が生まれたようなもんです。

 その桐の中でも、ここ南九州産がいいんですね?

 最高にいいですね。サーフボードには最高にいい。寒い地方が産地の桐は、木目が詰まってて、軽いけど硬いんです。でも、南九州産の場合は、木目が広いからそれなりにしなりもあって、そのしなりがサーフィンでちゃんと機能するんです。

「海のそばに住んだら、仕事しなくなっちゃうんで(笑)」

 ちなみに、山元さんのお住いは小林市ではなく、都城市ですよね?

 通勤に、1時間くらいかかります。その1時間のあいだにいろんなアイデアを思い浮かべながら来るんです。

 お住まいから海までは?

 仕事場とは反対方向に向かって1時間くらい。いつも木崎浜の方で入ってて、波が上がればリーフに行ったりしてます。

 じゃあ、遊び場と職場の中間に住んでるってことですね。

 そう。朝起きた時に波情報を見て「波があるぞ」ってなったら仕事は後にして、まずは海だってなるんです(笑)。

 海の近くに住むとか、考えなかったんですか?

 そんなとこに住んだら、仕事しなくなっちゃうんで(笑)。

桐はひと冬乾燥させて、アクを抜ききってから製材する。乾燥方法や製材方法など、企業秘密の部分が多い。

「桐がいいんじゃないの」という、いまは亡き祖父のアドバイスによって生まれた「キリフレックス」。そして需要のなくなっていた桐材に、再びスポットライトが当たるようになった。

2020年には東京オリンピックが開催され、そのオリンピックからサーフィンが正式種目となる。そのとき一体何%くらいの選手が、海のない小林市から誕生した「キリフレックス」を使っているだろうか。 

独学で覚えたシェープ技術。ここを削れば、こんなふうに乗れる。高いレベルで自ら試せるからこそ、習得の近道があった。波がなければサーフィンはできない。波のない日は職場へ直行する。下手に近い距離にないからこそ、仕事に没頭できる。

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■プロフィール

山元 智博(やまもと ともひろ)さん

1974年、宮崎県生まれ。鹿児島測量学校を卒業後、建築関係の仕事に従事する。趣味のサーフィンが高じてサーフボードのシェープをはじめ、ストリンガーというパーツに着目。実家の製材所のアドバイスにより、ストリンガーに桐材を使用した「kiriflex(「キリフレックス」)」を開発。2014年にストリンガーの、2017年にはフィンの実用新案特許を取得する。

ブランドインフォメーション

「kiriflex(キリフレックス)」

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photo:ULALA

text:アマキン

【PROFILE/アマキン】

本業はクリエイター。アウトドアアクティビティ、DIY、クッキングを得意とすると豪語しながら、すべてはプロフェッショナルには遠く及ばない「素人にしては、まあ上手だな」程度のレベル。

構成:所 隼登

(本記事は宮崎県小林市と協働製作したスポンサードコンテンツです)


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