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小林市の起爆剤!青野さんが実践する、地域おこし協力隊での成功ノウハウ

【VOL.2】の記事はこちら

2016年に宮崎県小林市に移住して、地域おこし協力隊として活動する青野雄介さん(37歳)。最終回となる今回は、自身が感じた地方の課題や地域おこし協力隊としての心構えなどについて、話を聞いた。


地域の動きを外向けに発信することが重要

cazual編集部(以下、C) 地域おこし協力隊の任期2年目からは町の仕事と自分の起業準備の時間配分が5:5になりますけど、ご自分のプロジェクトとしてはどんなものを考えていますか?

青野さん(以下、) 結果論的なところが大きいのですが、マルシェ以外で言うと、これから『Kobayashi Organic』のプロジェクトの事務局に入らせてもらっています。小林市の有機農業生産者さんが団体になって、生産者部門と家庭菜園部門、消費者部門を作っています。生産者部門では生産者同士お互い学びあって、統一した基準を作ろうとしています。消費者部門には、それを買い支えてフィードバックをしていただく。

お金で応援していただく代わりに、生産者は野菜と一緒に持っている知識や体験を提供する。そうやって人同士がつながって、ギブ&テイクでぐるぐると回していけるコミュニティモデルを考えています。

生産者さんは生産に忙しいので、僕が事務局として外向けの発信を担う形で進めています。これはすでに地域の農家の方が立ち上げたプロジェクトに入る形ですけど、そういうふうにいくつかのプロジェクトに参加しています。情報発信やコーディネートを行うパターンが多いです。最終的にそれがうまくまとまって、地域発信に繋げていきたいと考えています。

C そうやって地域の課題と自分の思いに即した最終的なゴールを見つけていく、というのが地域おこし協力隊なんですかね。

 そうだと思います。

C 発信の仕方がすごく大事ですよね。地方をたくさん回って見ているクリエイターの方が、「地方にはこんなにたくさんの宝があるのに伝える能力がないのはもったいなすぎる」と言っていました。魅力発掘には、外からの目というのはあったほうがいいと思います。

C 小林市がまだ生かし切れていないと感じるポテンシャルはありますか?

青 外向けの営業やプロモーションですかね。一次産業はやっぱりすごく大変なことだし、本気でやればやるほど、ほかの余裕はなくなると思います。国は「農家もマーケティングしなきゃいけない」と言うけど、それもなかなかできることではありません。だからこそ、その部分を別の人間がお手伝いできれば面白いことになると思います。

C そういうことも、元々の興味である環境や仕組みを変えることにつながる?

青 農業は産業としても環境をつなげていくことに重要な役割を果たしているので、そこはいま一度盛り上げていきたいです。環境にもよいし、そういう部分に憧れて都市部の人も集まりますよね。都市に人口が集中するいびつな構造は、ひとつの問題だと思うので、都市の人が地方に来れば、そのバランスも少しずつ整えていけると思います。

小林市に来たら子どものアトピーがよくなった

C プライベートな生活面では、移住してきて良かったと思うことは?

 食ですね。素材が圧倒的に違うし、リーズナブルに手に入る。食生活は贅沢になりました。野菜も新鮮ですけど、特に果物と肉に違いを感じます。都会だとお店でしか食べられないような豚しゃぶを家で安く食べられるのがうれしいですね。

C ご家族の反応は?

 小林は水が本当にきれいです。最初はぴんと来なかったんですけど、お風呂や料理、生活のすべてに水は関係してきます。環境が変化おかげかもしれませんが、娘のアトピーと奥さんの手荒れがよくなりました。「ユートピアだ!」って、小林に来たときは本当に感動しました(笑)。

小林市は市内のいたるところで水が湧き出ている名水の街だ

「人が優しい」というのはどこの地方でも言われることですけど、小林の人は特に最初から距離感が近いんです。いい意味で、グッと距離をつめて親身になってくれる。ふらっと行って「話が聞きたい」と言っただけで1時間も2時間も話してくれたり。そういうところは初めに市の移住担当の人としゃべったときから好きで、今でも印象は変わりません。

C 小林市の暮らしで困ることはありますか?

 公共交通機関が少ないことくらいです。遠出したら飲んで帰れないとか、それくらい。子どもにとっても、車よりは生身で移動できて風を感じられる電車やバスのほうがいいと思います。

C 交通面はどこの地方に行っても不便さはあります。小林市に限った嫌なところは本当に感じられてないんですね。

 僕はないです。家族で来たというのも大きいと思います。独身の方からは娯楽がないという声も聞きますから。家族がいれば自然さえあれば遊べるし、温泉や図書館に行くだけも遊びになります。

C 子育てをするうえで小林市のいいところは?

 近くに自然にあふれていることです。都市部に暮らしていたころはお金を出して遊ばせていたけど、自然の中で遊んでいる子どもは本当に楽しそうだと感じました。

C お子さんは今おいくつですか?

 上が5歳の女の子で、下が1歳の男の子です。入学する校区の小学校では1クラスしかなくて、家のまわりにも子どもがほとんどいないんです。それは少し寂しいですね。

農家民泊には大きな可能性が秘められていると思う

小林市は湖や山、キャンプ場などさまざまなアウトドア資源が豊富だ

C アウトドアの遊びは以前からされていました?

 ほとんどしていませんでした。こっちに来てからはじめてキャンプをしたくらいです。でも、またキャンプはしたいなと思います。

C 宮崎周辺でアウトドアをやっている団体や地域は?

 九州全体に言えることですが、自然が身近すぎてあえてアウトドアをやろうという雰囲気はあまりないですね。ウォーキングなんかは日常茶飯事ですから。おじいちゃんおばあちゃんも朝5時からみんな歩いています。バーベキューだって「外でごはんを食べる」くらいの感覚ですし。

C ただキャンプをしに行くだけじゃなくて、昼間そこで何ができるかも大事だと思いました。トレッキングだったり、川遊びだったり。

 小林に住んでいると地元なのであまりわからないですけど、都会の子がこっちに来て不登校が直った、なんて話は聞きますね。農家民泊などで、自分たちで鳥をさばいて食べたりとか、宿主さんとの交流に感動する場合が多いみたいです。

地域おこし協力隊は出会いを楽しみながら目標を決めていくのがよい

C 地域おこし協力隊に入るにあたって、どういう想いをもった人が合うかを教えてください。

 最終的に何がしたいかは、ある程度なんでもいいと思います。でも、最初にやりたいことや方向性をガチガチに決め過ぎちゃうのはよくないと思います。僕にしても「農業がしたいので農業以外はやりません」って言っていたら、今のようにはならなかったと思いますから。

やりたいことは持っていてもいいんですけど、ある程度フラットな状態で入ってきたほうがいい。協力隊はいろんな方と関わることができるので、いろんな話を聞きながら、自分がこの地で何をしたら楽しいのか、地域にどういう貢献ができるのか、3年間軌道修正をしながら考えていくのが大事だと思います。

最初は何もわかっていないから、「これをやるんだ!」というのを無理やり決めていることもありがちです。でもいろいろな人と繋がると、可能性自体が広がっていくんです。

協力隊にシェフの方がいらっしゃるんですけど、イベントで小林の食材を使ったブースを事務局で出したり、生産者さんと商品開発をしたりするのも、その方がいるおかげで可能性がぐっと広がります。今の自分の可能性のなかで考えるのではなくて、広がる選択肢を見ながら決めたほうがいいです。

C 移住してからさまざまなポテンシャルを持った人と出会うことで選択肢が増えますよね。かといって、目的や問題意識をまったく持たずに来るのもよくない。

 そうですね。協力隊という制度を使うからには「田舎暮らししてみたいな」くらいのノリで来るとあまりうまくいかないと思います。国からお金をもらって、地方の人も期待してくれていますから。

それに、やりたいことのキーワードのようなものは持っておいたほうがいいです。それがないとまわりの人も情報を与えたくても与えようがないですから。

【了】

取材させてもらった人

青野 雄介(あおの ゆうすけ)さん

1980年、千葉県生まれ。2016年5月、地域おこし協力隊として宮崎県小林市に移住。専門商社勤務時代に転勤で来た九州に惚れこみ、移住先を決めた。環境問題や地域の課題解決に興味を持ち、地域おこし協力隊になった。

「こばやしマルシェ」情報

毎月第2日曜日開催

開催場所や時間は小林市HPをチェックしてください

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東京育ちの会社員が移住して地方おこし協力隊になってみた/宮崎県小林市移住ライフvol.2
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取材・文/george

【PROFILE/george】

茨城県東海村出身の33歳。インテリア雑誌、週刊誌、書籍、ムックの編集を経て、現在Webディレクター。5年前の朝霧ジャムに行って以来、アウトドアにハマる。現在は、アウトドを主軸にしながらも地方移住などローカルトピックにも積極的に関わっている。


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