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にぎわいを取り戻そうと「こばやしマルシェ」を立ち上げ/宮崎県小林市_青野さん VOL.2

【VOL.1】の記事はこちら

宮崎県小林市で地域おこし協力隊として活動する青野雄介さん(37歳)に、どんな移住ライフを送っているのかを取材した。VOL.2となる今回は、実行委員長を務める『こばやしマルシェ』について詳しく教えてもらった。もともと農業をしたかった青野さんがどうして地域マルシェを立ち上げることになったのだろうか。


地域おこし協力隊として「こばやしマルシェ」を実現

cazual編集部(以下、C) 現在では「こばやしマルシェ」を立ち上げて、農業というよりは地域商社的な、ローカルビジネスの可能性を探っていらっしゃいますよね。

青野さん(以下、) 農業は農業で、自分のできる範囲でやっていきたいと思っています。前から、困っている人や組織を自分がサポートしてよい状態に持っていくことに喜びは感じていたんです。勤めていた商社はまさにそういう仕事でしたから。

ただ、地域に入っていく当初はどんな地域かもよく知らないし、何に困っているのかも分からないんですよ。最初は、自分一人の力でなにかしら収入を得るイメージしかできなくて、そのなかで農業というキーワードが出てきました。でも実際に地域に入って、地元の方々をサポートしたり一緒に考えたりする仕事をやっていくとすごく楽しかった。そういう、本来自分がやりたかったことができそうだなと徐々に見えてきて、今はそのなかに農業が含まれているって感じです。

C 1年目は3:7の時間という話でしたが、具体的にどういう活動をされていましたか?

青 1年目は正直、そこまで具体的なミッションがなく、何をしたらいいのかわからない状態だったので、先輩について回っていました。あとは、面白そうなことがあればとりあえず首を突っ込ませてもらう。たとえば移住推進に向けての話を聞かせてもらったり、一緒に相談会をさせてもらったり。的は絞れていない状態でしたけど、とにかくいろいろなところに顔を出しました。そのなかで『こばやしマルシェ』の話も出てきて、最近は、ようやく活動が絞られてきたところです。

C いろいろな人と小林市の課題を話すうちにマルシェに行きついたわけですか?

青 『こばやしマルシェ』自体は前から計画されていたことなんです。僕が立ち上げたというより、構想はあったので実行委員長として中心に立って進めた形でした。でも、たしかにいろんな人からのヒアリングや実体験は活きています。

「これをやったら面白い」と思うことはたくさんあるけれど、地方だと人がいなくてできないことがあるんですよね。そもそも経験がなくてやり方がわからないというのもあります。そういう最後の惜しいところで進み切らない話も多いです、実際。協力隊の一番いいところは自由に動けることで、自由だからこそできることを手伝うと、その最後のステップを乗り越えられることも多いかなと思います。

C 『こばやしマルシェ』は2017年2月に始まりましたよね。いつから計画の責任者に?

青 2016年6月か7月くらいです。県と市からスタートのために補助金が出ていたので、年度内の2017年3月末までに始める約束でした。

C 計画の骨子はどのくらい決まっていたんですか?

青 今後、駅前に新しくイベント広場ができる予定なので、そこで朝市をやろうという計画があったんです。それまでに運営組織とイベントを立ち上げておいて、最終的には朝市に移行するということしか決まってなかったです。あとは“中心市街地活性化”をプロジェクトの目的に据えるってことくらい。

C 何を扱うかとか、規模感も決まってない状態ですか。今までの商社時代も含めて初めての経験ですよね?

青 やったことなかったです。ただ、「やること」が目的になっちゃうのが一番よくないと思ったので、とりあえず「何のためにやるのか」を固めることにしました。中心市街地活性化計画のなかに入っていたので、目的は駅前周辺の小林市の中心エリアを活性化することじゃないですか。それを大目的にあげたうえで、じゃあマルシェをどう生かせるのか具体的に考えていきました。「活性化」といっても、単に人が来ればいいという話でもないですし。

チャレンジしたい人がつながれる場にしたかった

C 具体的なコンセプトとしてはどういうものになったんですか?

青 計画の中には「にぎわいの場を作る」「新しいチャレンジの場を作る」「コミュニティの場を作る」といった、具体的なものも上がっていたので、そのために『こばやしマルシェ』をどう使えるか、という話になりました。たとえば、“チャレンジの場”であれば、『こばやしマルシェ』に出店して試して、最終的に店舗を構える流れができないか。人が集まる場だから、何かチャレンジを考えている人たちがつながってコミュニティを作る企画ができないか。そういうことを考えていきました。

C 初開催は2017年2月。そのときの出店者は小林市内の農家や飲食店の方ですか?

青 出店者の条件に地区制限は設けなかったのですが、結果的に8割近くが小林の方でした。

C 『こばやしマルシェ』実行委員会はどういった方がメンバーなんですか?

青 スタート時点では僕を含めて地域おこし協力隊が3人、市役所の方が2人、観光協会さんから2人、商工会議所さんから1人、2つある商工会さんから1人ずつ、小林まちづくり株式会社さんから1人、あとは地域の女性農業団体のこばやしママンの方です。最近は、JAさんにも入っていただきました。総勢12、13人ですね。

C 『こばやしマルシェ』プロジェクトを進めるうえで、移住者だからこそ良かった面、やりにくかった面は何ですか?

青 移住者だからこそ、ゼロからフラットに考えられました。まったく何もわからない状態のときに来た仕事だったので、しがらみとか習慣とか、知らないから考えようがありませんでした。

逆に、移住者で苦労したのは、小林の方の感覚がわからないことですかね。たとえば、そもそも野菜に魅力を感じるのかだとか。僕は大阪にいたから感じるわけですけど、小林の方は農業をしている人が多いから、マルシェで野菜を出すのはうけるのかなって。そういう感覚はわからないので、委員会が大所帯でよかったと思います。

たとえば、市の商工観光課の方や、観光協会、商工会議所、商工会の方は、今までイベントをたくさんやってきているので、たくさん相談しました。そういったプロに意見を聞けたのはすごく助かった。

C 青野さんが全体図を考えて、地域の方にアリかナシかを聞いて、すり合わせていく感じだったんですね。

青 ある程度まで事務局で考えたプランを実行委員会に持っていく形でした。「こうしたらどうか」と言われながら修正するのを何度も繰り返ました。

C 商工会など、地元でずっと活動されている方々から新参者に対しての空気感は? 移住者の方はその不安をみなさん口にしますが。

青 最初は、めっちゃ不安でした。すっごい緊張していました。でも、「何考えてんだ!」みたいなものは全然なくて、本当に親身になってアドバイスをいただけた。市役所の方も一緒に動いてうまくコーディネートしてくれたのもあって、そこらへんはスムーズでした。

C 出店者の数は?

青 1回目は45、46で、2回目はほぼ50。出店者の方に喜んでもらえてすごくうれしかったです。初回でけっこう完売が出たんですよ。小林市ではそういうイベントが年数回しかなかったので、出店者の方も売れるかどうか疑心暗鬼なところもあったみたいです。でも、みなさん買ってくれてすごく喜んでもらえました。

C 出店料もかかるわけですし、初めてのイベントで出店者サイドもかなり緊張感を持っていたんじゃないですか?

青 農家さんの中には「こんなのやったことない」という方もたくさんいたんですけど、かなり売れたみたいで僕らもホッとしました。あとは消費者の方と直で話しながら販売できたことを喜んでもらえました。

C 地元の人でも新しい出会いがあったんですね。

青 特に一次産業だと消費者と実際に顔を合わせる機会ってそんなにないんですよね。業者さんとかお店でも、田舎とはいえ意外とお客さんを知らなかったりする。そういう新しい出会いで喜んでもらえたんだと思います。

「こばやしマルシェ」では、生産者と消費者だけでなく、生産者同士のつながりもできた (画像提供:小林市)

2回目の開催で早くも1000人を突破

C 来場者の数はどうでした?

青 会場に来た車の数で数えるしか方法がなかったので、正確には把握できなかったんですけどね(笑)。一応、公式としては、1回目が800人、2回目が1200人。感覚としては初回に1000人は超えていた印象もあったのですが、最初は控えめの数字にしました (笑)。

C 2回目の募集のときはどうでした?

 1回目に出店した方に募集のファックスを送り、それでだいぶ集まりました。あとは口コミで新規の方が入ってきて増えた形です。来場者は市民の方が多かったですね。アンケートを見ると9割がたは小林市の方です。

C 出店サイドの年齢層は?

 バラバラですけど、農家さんは年齢が高めの方も多かったです。50〜60代くらいかな。

C お客さんも?

 来場者も年配の方や家族連れ、お子さん連れの方でした。ワークショップやキッズスペースを充実させたので、子連れの方にたくさん来ていただけたと思います。僕も子どもいるからわかるんですけど、そんなに手の込んだことじゃなくても子ども達は目を輝かせてくれます。子育て中の方に楽しんでもらう場としても、『こばやしマルシェ』はいいと思います。

C ワークショップではどんなことを?

 こちらで意識していたのは「コミュニティを作る」ことだったので、“学び”や“教育”がコンセプトでした。「〇育」みたいなのができればいいなと思っていました。事務局側では、木のボールプールや積み木など、木のおもちゃを置いたキッズスペースを1ヶ所つくりました。

あとは、小林市近隣の団体さんに木のおもちゃを作るワークショップや、銘木屋さんに木の時計を作るワークショップをやってもらいました。西諸地域は元々林業が盛んだったんですよ。

1回目は「花育」を掲げて、切り花を使ったフラワーアレンジメントを無料でしました。すごく立派なものができて、大人気でした。いずれ「食育」をやってみたい。これから繋がっていけたらいいなって感じです。

木のボールプールで遊ぶ子どもたち (画像提供:小林市)

「花育」をテーマにフワラーアレンジのワークショップも実施した (画像提供:小林市)

こばやしマルシェでポテンシャル同士がつながる場所づくりができた

C 中心市街地活性化計画から始まった『こばやしマルシェ』ですが、活性化という面で成果はありましたか?

 はっきりわからないところもありますが、マルシェの開催日は商店街の飲食店にお客さんが増えているという話を聞いたりはしました。いずれ駅前の新しい広場に会場が移ったら、がっつり商店街の方とも組んで、いろいろとやっていきたいと思っています。

まちづくりの面で考えたときに、小林市の方に多く出店してもらって、その出店者さん達が活気づくことがすごく大事だと思います。生産者の方々が一同に集まる機会はないので、出店者さん同士が繋がることができればいいですね。とはいえ、「ご自由にどうぞ」では交流が進むかというと難しいと思うので、事務局が何かしら仕掛けを考えていきたいです。そうすれば、新しい商品も生まれるかなと思います。

C 市民向けだけじゃなくて、出店者サイドもつなげて新しいきっかけ作りをするってことですね。

 東京のマルシェにも視察に行きましたけど、やっぱり向こうは洗練されているし面白いんですよ。でも、「これは小林市のほうが勝てるな」という部分も見つかりました。東京のマルシェに出店されている方は東京ではない方ばかり。出店者同士がその後つながることはあまりないんじゃないかなと感じました。

その点、『こばやしマルシェ』は出店している方のほとんどが市内の方々。マルシェを機に相乗効果が生まれれば、とても面白いことが起きると思います。

C 1年目の成果としては、そういうポテンシャル同士が繋がる場所づくりができたことですかね。

 そうですね。本当にいろいろな可能性を感じています。

たとえば須木地区に「クマナ」という伝統野菜があります。なかなか知名度が上がらなくて生産農家がほとんどいなくなってきている。そういう地域の課題を、マルシェの場を使うことで打開できる可能性があると思います。人が集まる場は、まちづくりという面ではいろいろな可能性を持っていますよね。

移動図書館など、カルチャー系の出店もある (画像提供:小林市)

VOL.3に続く】

取材させてもらった人

青野 雄介(あおの ゆうすけ)さん

1980年、千葉県生まれ。2016年5月、地域おこし協力隊として宮崎県小林市に移住。専門商社勤務時代に転勤で来た九州に惚れこみ、移住先を決めた。環境問題や地域の課題解決に興味を持ち、地域おこし協力隊になった。

「こばやしマルシェ」情報

毎月第2日曜日開催

開催場所や時間は小林市HPをチェックしてください

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取材・文/george

【PROFILE/george】

茨城県東海村出身の33歳。インテリア雑誌、週刊誌、書籍、ムックの編集を経て、現在Webディレクター。5年前の朝霧ジャムに行って以来、アウトドアにハマる。現在は、アウトドを主軸にしながらも地方移住などローカルトピックにも積極的に関わっている。


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