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野外フェス×Uターン移住!福井県大野市で開催する大人気イベントをチェック!

福井県大野市で地域に根ざして活動するデザイナー

水の街として知られている福井県大野市で、デザイナー・映像作家として活躍する「ホオズキ舎」長谷川和俊さん(33歳)。大野市で生まれ育ったあと、同じ県内の福井市、カナダ、アメリカで生活を経験し、現在はUターンで大野市に戻ってきて暮らしている。

今回の移住物語は、大野市をデザインの力で盛り上げようと奮闘している若者が主人公だ。

アメリカで受けた大きな刺激

長谷川さんは高校卒業後、父親が経営する会社に就職したものの、もっと外の世界を見たいと3年後に退職して大野市を出た。福井市であらためて就職して2年間働いたあと、カナダへ。帰国後は福井市のウェブ制作会社に入り、ウェブの勉強に励んだ。

その後、退職してアメリカへ渡り、ステイ先のフォトグラファーやデザイナーから大いに刺激を受ける。デザインや写真で楽しく自由に暮らす様子を見て、こんな暮らしもアリなんだとうれしくなったという。

大野市のポテンシャルに魅せられてUターン移住

「大野にはいいところがたくさんある。僕が大野にいる理由でいちばん大きいのは、素材が面白いから。デザイナー目線で大野市を見てみると、デザインされていないものがたくさんあります。デザインって言っても広い意味なのですが、ちょっとスポットライト当てれば、光るものがたくさんあるので、やりがいがあるし、伸びしろがめちゃくちゃあると思うんです。『次、何やろう』と日々考えているのが楽しいです」

帰国後、自身の拠点をどこにするか考えたところ、「大野以外は考えられなかった」という。

写真提供:長谷川さん

大野で野外フェスを企画!

そんな長谷川さんはアメリカから帰ってきた2010年、2011年に大野市で野外フェスを企画。大野が好きで、自分が楽しくできることということで野外フェスに行き着いた。

「もともとフェスカルチャーが好きで、アウトドアも好きで、そういうイベントによく行っていました。そのときに、フェスも大野に落とし込めるなと思ったんです。僕らが行くようなフェスは若い人たちしかいないですけど、大野でやるならおじいちゃん、おばあちゃんも来られるし、子どもも遊べるものにしようと考えました」

会場は、大野市の六呂師高原。もともとスキー場があった場所だがしばらく前に閉鎖してしまっていた場所だ(2017年に新たなスキー場がオープン)。

「すごく景色がよい場所で、なにかここでできないかなと。“子どものころにスキー行った場所だよな”という程度で、ここの魅力に地元の人も気づいていないようなところでした。でも、春や夏はすごく気持ちいい。そういう場所を、いろんな人とシェアしたいなと思ったんです」

そうはいっても、大きなイベントの企画や運営経験はゼロ。文字どおり手探りのなかでのスタートだった。

「福井市のアウトドアショップと、地元でふだん遊んでいる仲間と15人くらいで企画しました。当時は若かったので、仕事もみんなほったらかし(苦笑)。僕なんかもそのときは定職についていなかったので、ほぼ毎日、イベントのことをやっていました」

冬の六呂師高原

大野市に補助金の申請をしてフェス開催に奔走

野外フェスとなれば、大きなイベントだ。自治体サイドとの連携も欠かせない。大野市とのつながりはあったのだろうか。

「市とのパイプなんてまったくなくて、補助金をもらおうと駆けずり回って、資料作って、市役所に頭下げに行って、という日々でした。市役所の人の反応は、最初よくはなかったですね。当時の僕はヒゲもすごく長くて、髪もロン毛だったんですよ。当然、市の方は『なんだかすごい若者が来たな』って顔で(笑)。でも、イベントについてきちんと思いがありますし、ちゃんとした資料も作っていたので、『あれ? 意外とちゃんとしてるな』と思ってくれたんだと思います。そうしたら『ちゃんと話聞いたろ』って変わっていきました」

このようにして、野外フェス開催に向けてだんだんとつながりが増えていった。「最初に動き出したのが2010年2月ごろだと思います」。開催がその年の6月なので、準備期間は4か月だった。

野外フェス『心灯』は2年目に1万人を超す動員を記録

写真提供:長谷川さん

「フェスの名前は『心灯(こころび)』です。内容は、音楽もありますし、食などのワークショップの体験系もあります。フィールド全体を使って、いろんな遊びを体験してもらいました。大野ならではという意味では、飲食は地元の食を頼りました。例えば〇〇地区のおばあちゃんに出してもらったりとか、そこを大事にしていました。実際、若い人も、おじいちゃんおばあちゃんも子どもも、会場にはいろいろな世代のお客さんがいました」

野外フェスは大成功を収めた。『心灯』は2010年6月と2011年6月の2回開催されている。どちらもワンデイでの開催だったが1年目は5,000人、2年目は12,000人もの集客があった。

写真提供:長谷川さん

野外フェスというと若者のものというイメージが強いが、六呂師高原という素敵な場所を、大野市ならではのコンテンツを、地元の人とシェアしたいという思いから始まったフェスは老若男女が集まり、地元で大きな反響を巻き起こした。

「来場者の数は見込みより多かったですね。1,000人来れば成功だと思っていたので、驚きました。フェスの告知は、フライヤーとインターネットと雑誌の投げ込みをしたくらい。ネットも当時はFacebookなんてほぼないんで、Twitterとmixi。見込みの5倍の人数が来たので、予期せぬドラマがいっぱいありました(笑)。食事も足らなくなっちゃうし、駐車場もない。全然、イベントが回らなかった苦い思い出もあります」

写真提供:長谷川さん

街の方たちの反応もすごかった。

「出店者は『また来年も絶対やろう!』って言ってくれました。あと、『来年やるならぜひ呼んでくれ』って人とか」

大野市の人口が35,000人ほどであることを考えると、『心灯』の動員数はかなりの規模なことがわかる。2回だけでクローズしてしまうのはもったいないように思う。

フェスで燃え尽き、デザイナーとしての活動を本格化

「やりきっちゃったんですよね。フェスをやりたい気持ちはめっちゃあるんですけど、それ以上にやっぱり仲間でやれたっていうのが大きくて、そのときに組織した仲間とじゃないときっと違う色が出てしまう。誘導看板から、場内の飾りまで全部手作りでやりましたから」

ある意味で燃え尽きてしまった長谷川さん。『心灯』を経験した下の世代が新たなイベントを立ち上げようと、次なるムーブメントは生まれなかったのだろうか。

「そうはならなかったんです。それがさみしかったですね」

若者主体とはまた別な形で、その後、六呂師高原が主体となってアルプス音楽を楽しむ『アルプス音楽祭』というイベントが発足し秋に行われている。『心灯』とは違ったコンセプトで、六呂師高原に人を呼び込みたいということで、長谷川さん達よりも上の世代が中心となっている。

「この『心灯』のチームはまだ生きていて、ライブ企画はちょこちょこやっています。廃校になった木造校舎でライブやったり、いろいろと活動しています」

自身で改装した事務所

大野市民のよりどころは何か

大野市には、越前おおの冬物語、小京都祭りといった大きめの祭りがあるものの、歴史に基づいた伝統的な祭りではない。今の祭りは、どちらかというと商店街が主導する地域経済を盛り上げるために作られたイベントだとか。

市の職員の方も、「地域に根ざした伝統的な祭りがあれば、都会に住んでいてもお祭りのときだけは大野に帰って来ようとする人も出てくるのではないか」と話していた。確かに、大阪の岸和田だんじり祭りしかり、福岡の博多祇園山笠しかり、開催時期に帰省して祭りを楽しむ人は多いと聞く。

街を出て行った人たちを結びつける何か、街を思い出すきっかけとなる何か、地元の誇りとなる何か、そういう存在を作ろうと大野市は苦心している。その一つが水であり、以前にcazualでも紹介した「水への恩返し Carrying Water Project(キャリング ウォーター プロジェクト)」(関連記事:【福井県大野市】”名水のまち”ならではの国際支援 水を軸に誇りを取り戻す地域創生プロジェクト)だ。

大野市は「キャリング ウォーター プロジェクト」では日本ユニセフ協会とパートナーシップを組み、東ティモール支援を実施。水道施設の設置などを進めている 写真提供:大野市

もうひとつは長谷川さんも関わっている『大野へかえろう』というプロジェクトだ。。こちらのプロジェクトについてはあらためて紹介する。

vol.2へ続く


【福井県大野市に関する記事はこちら】
【福井県大野市】”名水のまち”ならではの国際支援 水を軸に誇りを取り戻す地域創生プロジェクト
【福井県大野市】一生に一度は行きたい絶景!”天空の城”越前大野城
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text:george

【PROFILE/george】

茨城県東海村出身の32歳。インテリア雑誌、週刊誌、書籍、ムックの編集を経て、現在Webディレクター。4年前の朝霧ジャムに行って以来、アウトドアにハマる。テントはMSRのエリクサー3、タープはZEROGRAM。車を持っていないので、キャンプに行くときは知人の車に相乗りが常。なので、基本の装備は「軽くコンパクトに、友人の負担にならないこと」が信条


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