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長崎・五島列島でのクリエイティブなライフスタイル:アウトドアガイド、タコス販売、日本酒造りの冬の日々

五島列島への移住までの経緯をまとめたvol.1はこちらから

2015年5月に福岡から長崎県五島市の福江島に移住してきた隈本耕一郎さん。2回目となる今回は、主に仕事のことについて話を聞きました。


移住後の仕事探し 求人にでていた給料にびっくり

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移住してきた経緯、住宅を見つけたところまでは前回の記事にまとめたが、新たに仕事を見つけないと暮らせない。さて仕事面はどういう苦労があったのだろうか。いまでこそアウトドアのガイドとタコスの移動販売をしているが、移住してきたときは、仕事のことは全然考えていなかったと言う。

「こっちにきてハローワークに行ったんですよ。すると、結局大体給料が12万〜13万円。『えー!?』ってなったけれど裏を返せば、それで生活できるってことだなと思いました」

地方に行くと収入が低くなってしまうと、移住をためらう人は多いが、隈本さんが気づいたように、その収入で暮らしが成り立つから、その額になっているという側面もある。福岡や東京のような大都市で働くときの収入と単純に比較しても意味はないだろう。“裏を返せば、それで生活できる”という隈本さんのひと言は、すごく印象的だ。

観光協会の職に応募するも……

そんな隈本さんは、ハローワークで五島市の観光協会の募集を発見。さっそく応募した。

「観光協会の募集が出ていて、条件は年齢不問、経験不問、13万5000円。『なんていいんだ!』って思って、その履歴書につける写真のために茶髪とヒゲを剃って応募したんです。なのに書類で落とされた。理由を聞くと『年齢』って言われて。『いやいや、年齢不問って書いとったやん!』と。僕も引き下がらず、『とりあえず会うだけ会って断りませんか』と。会わずに書類だけで落とされるのは納得いかなかったんで、けっこうねばってみました(笑)」

しかし、担当者からはけんもほろろに「会うのもちょっと……」と言われてしまったとか。

「厳しいけど、島でモメるのもゆくゆくまずいことになるから、そこは素直に引き下がったんです。心の中は悔しかったですよ。だから、観光協会がこれからアウトドアを柱として観光促進をやっていくなかで、『くまさん、こういうのやってくれませんか?』って頼まれたら、そのときに『歳(とし)なんで、すみません』って断りたい!って思ってます(笑)」

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サラリーマンからアウトドアガイドに転身 その経緯とは?

当初こそそんなハプニング(!?)もあったものの、現在のアウトドアガイドの仕事はひょんなキッカケから始まったという。移住前、妻の実家への帰省の折にカヌーを一緒にしていた友人から引き継いだのだ。

「福江島に来たのだから、どうせなら海で遊びつつ、それがお金になるようなことってないかなと考えていた。副業でカヌーのガイドをやっている友達がいるんですが、本職は老人ホームの施設長をしていて、そっちが忙しくなったということで、『あんたせんね?』と。それで、僕が引き継いで2016年からやり始めました」

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隈本さんは福江島に来てからアウドトアのガイドを始めた。カヌー以外にSUPなどの案内もしている。

「島の西のほうの地区で玉之浦というところにポイントがあって、島外から来た人にはそちらを案内することが多いです。島でカヌーガイドを生業としている人はいないです。専売特許みたいなもの。僕がいちばんやりたいのは、観光で来た人に遊んでもらうのももちろんだけど、地元の人でも知らないようなところを探検しているんで、できればもっと地元のカヌー人口が増えて、わいわいガヤガヤ盛り上がればいいなと思っています」

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福江島のアウトドア熱は発展途上

福江島ではアウトドアの熱はまだ高まっていないのが現状だ。サーフィンをする人もそれほど多くないとか。

「サーフィンはこっちに引っ越す前に板を買ったんですけど、福江では一度しかやっていません。難しかったのもあるし、一人でどこでもできるサップとかカヌーとは違って、波乗りはうまい人と一緒じゃないと怖くて。“こんなきれいなところを独り占めしていいの!?”っていうビーチがあっても、僕ひとりだとやっぱり怖いんですよね。波にのまれたらどうしよう、って。うまい人どころか、やっている人自体が少ないです」

五島にサーファーはいると聞くが、まだ見たことはないという。なんとももったいない。

福江島のアウトドアのアクティビティはまだまだ発展途上。観光客もせっかく海に囲まれた島に行くとなれば、アクティビティを楽しみにするはず。教会巡りや海水浴もいいが、SUP、カヌー、サーフィン、シュノーケルなど、アクティビティが充実すれば、もっと多くの人が訪れるだろう。

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偶然の出会いからタコスカーを入手

カヌーガイド以外では、どんなことをしているのだろうか。

「カヌーのガイドはどうしても不定期なので、タコスの移動販売もしています。シティーモールっていうショッピングモールの駐車場を借りて営業しています。移動販売といっても、あまり移動はしていません(笑)。シティモールを定位置にして、あと島内のお祭りやイベントがあるときに出張していきます」

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福岡時代の飲食業の関係で始めたのかと思いきや、これまた不思議な縁でやることになった。

「ハローワークで仕事探しをしているときに、たまたまタコスカーで福岡からタコス売りに来ている人がいて、仲よくなりました。それで冗談で『このタコスカー売ってくださいよ』って言ったら、そのときは断られた。でもその人が実に素直な人で、お金に困ってる話をとくとくとするわけです。これはいけるかもしれんって思って、『明日までに、その金額を封筒に入れて持ってくるんで、売る気ないんだったら、1か月したら僕に返せばいいじゃない』と交渉したんです。したら、売ってくれることになったんです」

なんとも豪快なエピソードだ。もともと移動販売には興味があったが、「これ!」というものは決めていなかった隈本さん。

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コンセプトは“五島にもっとスパイスを”

「福江島にはマクドナルドもないし、モスバーガーも2年前につぶれました。島の野菜や魚など、ヘルシーな食事もいいんですけど、たまにはジャンクフード食べたくなるでしょ? だから、ぼくの中のコンセプトとして“五島にもっとスパイスを!”というのがあって、それでなにか食の面でもなにかやりたいなとは思っていました」

そんななかで出会ったタコスカー。隈本さんにとってはまさに渡りに船、ドンピシャのタイミングだった。ちなみに、タコスカー取得後の後日談もあるとか。

「メキシコに行ったことはあったけど、タコスは作ったことがなかった。それで、レシピを教えてほしいとお願いしたけど、『レシピは財産だから教えられない』と。そりゃそうですよね」

しかし、それで引き下がる隈本さんではない。

「そのタコス、けっこう売れてたんですよ。それで、『五島の人が初めて食べたあなたのタコスがおいしいって言ってくれているのに、僕に変わって味が変わったら、五島の人どう思うんだろう?』って言ったら、『確かにそうだな』と。その人、根っからのいい人なんですよね。最終的にレシピも教えてもらえました」

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カヌーガイドを引き継いだのと、タコスカーを入手したのが2015年の夏のこと。その年の5月に福江島に来て、夏には新たな仕事が動き出したのだ。移住してきたときは、仕事のことは全然考えていなかったというが、「気づいたらやりたいなと、なんとなく思っていたことが、トントンとできることになった」と隈本さんは当時を振り返る。

アウトドアガイドとタコス販売以外の時間は、ビニールハウス張りや収穫など、奥さんの実家の農家を手伝っている。地域の農家の高齢化が進んでいるため、実家以外の手伝いにも行くこともある。

冬には福岡の久留米で日本酒造り

さらに、冬になると意外な仕事もしている。

「僕、冬は酒造りをしに酒蔵に行くんですよ。2016年で3度目。福岡の久留米にある酒蔵で、五島に来る前に仕事を辞めてプラっとしている時期にたまたま縁があって行くようになりました。日本酒を作るのには人手がいるので誘われたんです」

久留米は造り酒屋が15もある日本を代表する酒どころ。お酒好きの隈本さんには興味深い仕事だった。

「久留米には酒蔵がたくさんあって地産地消にこだわってやっている。酒造りって本当に大変で、冬場しか人手はいらないし、通年で人を雇うほど日本酒はもうかっているわけでもありません。そんなところに酒好きの僕が行ったら、僕もハマったし、酒蔵のほうもおじいさんしか働きに来ないようなところだったから喜んでくれた」

それで縁ができ、以来、毎年手伝いに行っているのだ。1回行くと3か月くらいの期間は酒蔵で出稼ぎ状態。12月から翌年の3月、4月まで久留米で働いている。

移住して収入の変化はどのくらい?

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収入面の変化について教えてもらった。サラリーマンをしていた福岡時代に比べ、アウトドアガイドとタコスの移動販売では、どのくらいの差があるのだろうか。

「半分以下ですね。ガイドとかいろいろやって、よくて20万円くらい。夏が最盛期ですけど、1年のなかでも変動します」

収入は半減したということだが、生活面での変化についても聞いてみた。

「(収支は)トントンですかね。昨日も奥さんと夕飯を食べながら、どれを買ったかって話になって、食卓を見渡すとほとんど買ってない。おすそ分けが本当に多いですから。奥さんの実家でインゲン豆を育てているんですけど、出荷できない規格外のものも出てきます。そうすると、それがのどぐろとかきびなごに変わるなんてのはよくある話なんです。物々交換ですよね。魚を採る人たちは野菜が足りないから良かった、と思うわけで。そういうコミュニティを自分が探検しながら知っていくのはおもしろいです。だから食費は相当、下がりましたよ」


vol.3へ続く】

移住して激変した日々の暮らし、そしてどういうふうに地域になじんでいったのかについてはまた次回(vol.3)。お楽しみに。

五島市の移住情報はこちら

五島市公式サイト
http://www.city.goto.nagasaki.jp/ui-turn/

長崎県の移住情報はこちら

ながさき移住ナビ
http://nagasaki-iju.jp/

長崎県の移住にまつわる記事はこちら

キャンピングカーで移住先探しができるってよ in 長崎県 軽キャン大解剖!

平戸市でカフェを開いた力武秀樹さんの移住物語 全4回
>>https://cazual.shufu.co.jp/archives/tag/hirado_life02

平戸島でゲストハウスの準備している吉田さん夫婦の移住物語 全4回
>>https://cazual.shufu.co.jp/archives/tag/hirado_life01

text:george

【PROFILE/george】

茨城県東海村出身の32歳。インテリア雑誌、週刊誌、書籍、ムックの編集を経て、現在Webディレクター。4年前の朝霧ジャムに行って以来、アウトドアにハマる。テントはMSRのエリクサー3、タープはZEROGRAM。車を持っていないので、キャンプに行くときは知人の車に相乗りが常。なので、基本の装備は「軽くコンパクトに、友人の負担にならないこと」が信条


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