京都府への移住の現状と魅力
歴史と文化が息づく京都府は、近年「移住したい都道府県」として注目が高まっています。
コロナ禍を経てテレワークが普及したこともあり、京都府への移住相談件数・移住者数はこの5年間で大幅に増加しました。
京都府の発表によれば、平成26年度から令和元年度までに移住者数は約6倍に伸びています。
地方創生の潮流の中、京都府も移住促進のための条例制定や「京都移住コンシェルジュ」の設置(平成26年度~)などサポート体制を充実させ、移住希望者を現地案内から定着まで伴走支援しています。
こうした取り組みの結果、「暮らす場所としての京都」に改めて関心が集まっているのでしょう。
京都府は、世界的観光地である京都市の華やかさから、日本海や山間地域の豊かな自然まで多様な顔を持っています。
伝統とモダンが融合する環境や、古都ならではの落ち着いた街並み、人情味ある地域コミュニティは大きな魅力です。
都市部でありながら自然も身近に感じられる暮らしやすさや、教育・医療機関の充実、治安の良さも移住希望者に支持されています。
また、府内には海の京都・森の京都・お茶の京都といった特徴があり、自分のライフスタイルに合った地域を見つけやすい点も魅力でしょう。
まずは京都府へのUIJターン(後述)を検討するにあたり、そのメリットとデメリットを正しく理解し、各種の移住支援制度を有効活用することが大切です。
京都府へ移住するメリット
京都府への移住には、多くのメリットがあります。
文化的な暮らし
まず一つは、文化的な暮らしを享受できることです。
京都市内をはじめ府内各地に歴史的建造物や伝統行事が数多く残り、日常生活の中で日本の豊かな文化に触れる機会に恵まれています。
季節ごとの祭りや伝統芸能、美術館・博物館の充実など、「観光客ではなく住民として」それらを楽しめる喜びは格別でしょう。
自然環境の豊かさ
美しい海辺の暮らしを求める人は北部の日本海側エリア(丹後地方)、里山や清流に囲まれたスローライフを求める人は中部山間地域など、希望のライフスタイルに合わせて移住エリアを選択できます。
また、南部の山城地域や京都市周辺では、田園風景と都市圏へのアクセスの良さを両立した「トカイナカ」(都会と田舎の良いとこ取り)な暮らしも夢ではありません。
都会過ぎず田舎過ぎない“ちょうどいい”暮らしを選べる点は、京都府ならではのメリットです。
学術的・産業的な活気
京都府内には大学や研究機関、企業が集積しているため、学術的・産業的な活気もあります。
京都市内には京都大学や同志社大学など多数の大学があり、学生や研究者が集まる文教都市としても注目されています。
高度な技術を持つ企業や新進気鋭のベンチャー企業も存在し、就職先の選択肢も一定程度確保できるでしょう。
また、最近ではリモートワークの広がりにより、必ずしも現地に大企業がなくとも、地方に住みながら都市部の仕事をすることも可能になりました。
つまり、京都に住みつつオンラインで全国の仕事に関わることができる環境が整いつつあるのです。
こうした柔軟な働き方も追い風となり、「暮らしやすさ」と「働きやすさ」の両立が期待できる点も京都府へ移住するメリットと言えるでしょう。
子育て支援が手厚い
子育て世帯にとっても、京都府は非常に魅力的です。
自治体によっては保育料無償化や医療費助成など手厚い子育て支援策があり、教育環境も整備されています。
精華町などは「子育て支援・教育環境が充実した子育てしやすいまちづくり」を掲げ、新興住宅地では若い世代のコミュニティが形成されているケースもあります。
適度に都会の便利さを享受しながら、安心して子育てできる環境があるのも京都府の強みです。
総じて、京都府は多様なライフスタイルに応じた地域選択肢が豊富であり、文化・自然・利便性をバランス良く享受できる点が移住先としての大きなメリットです。
ただし一方で、「実際に暮らすとなるとどうなのか?」という心配の声も存在します。次に、京都府移住のデメリットや注意点について見てみましょう。
京都府移住のデメリットと失敗しないための注意点
どんな土地にもデメリットはあります。インターネット上では「京都移住はやめとけ」「移住したら後悔する」といったネガティブな声も散見されます。
ここでは、京都府へ移り住む上で知っておくべき現実的な課題と、「失敗・後悔しないためのポイント」を整理します。
生活コストと観光地ならではの環境
京都市内、とくに中心部は世界的観光都市であるため物価や地価が高めです。
住宅の家賃や購入費用、日常の物価にも観光地価格が反映され、中心地に近いエリアでは生活コストが割高になる傾向があります。
例えば繁華街周辺ではワンルーム賃料も地方平均より高く、築年数が古い物件でも家賃が高騰しているケースも少なくありません。
また、エリアによっては観光シーズンには市内が観光客で混雑し、通勤・通学や買い物に支障をきたすことも。
こうした環境ストレスは、「京都は住むところじゃない」と言われる一因にもなっています。
対策としては、観光エリアから少し離れた地域を選ぶことで物価の安定や静かな生活が得られます。
京都市でも中心部を外れた左京区北部や西京区の郊外などは比較的家賃が抑えられ、落ち着いた暮らしが叶えられるでしょう。
生活費を抑えたい場合はエリア選びを工夫し、観光客の多い地域を避けるだけでもだいぶ違います。
仕事探しの課題
よく「京都には仕事がない」と言われることがあります。
実際、東京や大阪など大都市と比べると求人の量・種類が限られるのは事実です。
2024年1月時点の有効求人倍率を見ると京都府は約1.18倍で全国平均1.27倍をやや下回っています。
特に専門職や高収入のポストは大都市集中の傾向があり、地域によっては希望する職が見つからない可能性もあるため「せっかく移住しても仕事がなくて失敗する」リスクに注意が必要です。
しかし昨今は、リモートワークや副業など場所に縛られない働き方が広がっており、工夫次第で十分に働き口を確保することは可能です。
実際、在職のままテレワークで京都に住む「テレワーク移住」や、地方で起業・フリーランスとして働く選択肢も増えています。
職種によっては地方特有のコネクション重視の採用文化が残る部分もありますが、逆に地域ネットワークを活かせば未公開求人に出会えるチャンスもあります。
「京都でやりたい仕事がない」と嘆く前に、自治体の支援策や新しい働き方を活用して自らキャリアを設計していく姿勢が、移住成功の鍵となるでしょう。
夏暑く冬寒い気候
京都市内盆地部の気候も、意外な落とし穴です。
夏は蒸し暑く、冬は底冷えする厳しい寒さになります。
特に古い木造住宅では断熱性が低く、冬場は屋内でも震える寒さを感じることも。
こうした気候は高齢の方や寒暖差が苦手な方には負担となり得ます。
雪については、北部山間や日本海側は豪雪地帯もありますが、京都市内中心部はほとんど積もりません。
ただし宮津市など北部沿岸部では冬季に雪が積もる日もありますので、移住先の気候特性を事前によく確認しましょう。
気候面のデメリットへの対策として、住宅の断熱改修や暖房設備の充実、雪道対策の装備など準備を怠らないことが大切です。
京都府への移住・UIJターンに役立つサイト・サービス
京都府では、これらUIJターンによる人材の呼び込みに積極的です。
京都ジョブパーク
「京都ジョブパーク」は、京都府が運営する総合就職・転職支援施設。
年齢や職業経験を問わず、仕事を探している人やキャリアに悩んでいる人が、無料で相談・講座・企業紹介などのサポートを受けられる場所です。
専門のキャリアカウンセラーが、就職・転職・再就職に関する悩みを1対1でサポートしてくれるほか、スキルアップ講座やセミナー、履歴書の書き方、面接対策、自己分析、ビジネスマナーなど、就職に役立つ内容を無料で学べます。
また、京都府内の企業と連携し、希望やスキルに合った求人を紹介。企業説明会やマッチングイベントも開催されています。
UIJターン希望者など、個々の状況に応じた専門の支援コーナーを設置し、来所が難しい方には、WEBカウンセリングやオンライン講座も用意されています。
今日と明日
京都府公式移住・定住情報サイト「今日と明日」は、京都府が運営する、移住や定住を考える方向けの総合サポートサイトです。
各市町村の紹介、地域別の暮らしやすさ、移住者の体験談など、多角的な情報が掲載されており、移住先を探すうえで参考になります。
オンライン相談・メール・電話での問い合わせにも対応しているので、どこに住んでいても移住相談が可能です。
移住セミナーや現地ツアー、イベントなども定期的に開催されており、移住先地域を実際に体験・見学できる機会があります。
京都府への移住を検討する際には、かならずチェックしておきたいサイトです。
住むなら京都
Instagram のアカウント「京都府庁移住・定住情報発信(@kyotoiju)」では、京都府が運営する移住・定住の取り組みに関する情報を写真や動画で発信しています。
京都府内の市町村の魅力(自然、暮らし、文化、暮らしの場としての住まいの様子等)を見られるほか、実際に移住・定住した人々の体験ストーリーや、移住に至った背景・暮らしの変化をインタビュー形式やフォト投稿で紹介。
さらに、空き家バンクや移住相談、地域イベント、モデル移住体験プログラムなど、移住・定住を検討している人に向けた支援情報や最新情報を告知しています。
投稿を通じてフォロワーとの交流も図っており、コメント欄やストーリーズを活用して質問・相談を受け付けるケースもあります。
アカウントをフォローしておくことで、京都府内の移住・定住に関する旬の話題や実際の暮らしの様子を日常的にチェックできるでしょう。
京都府の移住支援金・補助金制度【令和7年度】
京都府および府内各市町村では、移住・定住を促進するため経済的な支援策(支援金・補助金)を多数用意しています。
ここでは、令和7年度(2025年度)に実施が確認できる主な支援制度について、「概要・支援内容・申請期限・要件」のポイントを整理します。
実際に利用する際は詳細条件が自治体ごとに異なる場合がありますので、最新情報を各公式サイトで確認してください。
京都府移住支援金(地方創生移住支援事業)
東京23区内在住者、または東京圏在住で東京23区に通勤している方が、京都府内の指定地域へ移住し就職または起業した場合に、国・府・市町村共同で移住支援金が支給されます。
支給額は世帯100万円、単身60万円で、さらに18歳未満の子どもが帯同する場合は1人あたり最大100万円を加算。
たとえば子育て世帯が移住する場合、子ども2人なら最大300万円(100万+100万×2)受け取れる計算です。
申請期限は転入後1年以内で、期間内に移住先市町村へ申請手続きを行います。
おもな要件
(1) 移住直前に5年以上東京23区内に在住(または通勤)していたこと
(2) 京都府が指定する移住先対象市町村(後述)へ転入したこと
(3) 京都ジョブパークの「移住支援金対象求人」に応募・就業すること
対象となる移住先
京丹後市、宮津市、舞鶴市、綾部市、京丹波町、南丹市、亀岡市、宇治田原町、井手町、和束町、木津川市(※京都市や宇治市など人口集中地区は対象外)。
支援金の財源には限りがあるため、予算状況によっては年度途中で受付終了する場合もあります。
応募条件の細部(例:転出元での在住期間計算方法、対象求人の要件など)は各市町村で微妙に異なるため、早めに移住先市町村に相談して確認しましょう。
京都府空き家改修費補助(移住促進特別区域支援制度)
京都府では、移住促進特別区域に指定された地域で京都府空き家情報バンクの「登録空き家」を購入または賃借し、居住目的で改修する場合に住宅改修費用の補助金が支給されます。
府と市町村が1/2ずつ負担する仕組みで、補助額は最大180万円まで(改修費用の1/2相当、府市町村合計)です。
改修工事着手前に申請が必要で、補助金交付決定後に工事を行う形となります。
なお、不動産取得税の軽減(対象物件購入時に税額1/2減免)や、改修資金の借入利子補助(借入残高の0.5%相当額補助)といった支援策も用意されています。
おもな要件
(1) 移住者要件: 京都府外(市外)から対象地域へ住所を移転した方で、定住意思(おおむね10年以上)を有すること
(2) 住宅要件: 京都府空き家バンクに登録された空き家物件を取得または賃借して移住すること
※親族から譲り受けた住宅など、登録物件以外は対象になりません
(3) 手続要件: 移住後に定住する住まいとして改修する場合に、工事着工前に所定の申請を行い交付決定を受けること
(4) 改修後は一定期間(市町村により5~10年程度)その住宅に居住すること
対象となる移住先
京都府が指定した「移住促進特別区域」に該当する地域(主に中山間・農山漁村部の集落)が対象です。
具体的には、京丹後市・宮津市・舞鶴市・綾部市・南丹市・亀岡市・京丹波町・伊根町・与謝野町など府北部・中部の一部地域が指定されています(市町村内でも特定の地区を指定)。
移住促進特別区域外であっても空き家バンク登録物件の活用による独自支援を設けている市町村もありますので、詳しくは各市町村窓口で確認してください。
UIJターン起業支援金(地域起業支援事業)
京都府内の移住促進特別区域に移住し、その地域で起業する方に対して、事業所等の整備に要する費用の一部を補助する制度。
地域の空き店舗や古民家など既存施設を改修・増築して店舗や事務所を開設する場合に対象となり、補助額は最大300万円(補助率1/2、一部自己負担あり)と大きな支援となっています。
地域課題の解決につながるビジネスや、地域の産業振興に資する起業が想定されており、移住者の地方での新規創業を積極的に後押しする制度です。
なお、この起業支援金を受けた方が前述の移住支援金の対象となる場合(東京圏からのUIJターン起業者など)、移住支援金100万円(単身60万円)を併せて受給することも可能です。
おもな要件
(1) 地域要件: 京都府移住促進特別区域の指定地域内に移住して居住していること
(2) 移住要件: 移住後間もない方(例:南丹市では転入後3年以内の方が対象)
(3) 事業要件: 起業する事業が地域活性化に資する内容であること
※具体的には地域の人手不足解消や資源活用につながる中小企業事業、伝統産業の継承、農林水産業の振興、観光促進など各市町村が指定する分野である必要があります。
対象となる移住先
京都府移住促進特別区域のうち、特に農山漁村地域に区分されるエリアがおもな対象です。
例えば亀岡市では、市外からの移住者が亀岡市東部の山間地域(移住促進特別区域)で古民家等を改装して起業する場合に最大300万円の補助が受けられます。
起業支援金の公募や相談窓口は京都府および各市町村で案内されていますので、起業計画がある方は事前に地域の担当窓口へ相談してください。
京丹後市若者U・Iターン住宅取得等応援補助金
京都府京丹後市が独自に実施する移住支援制度で、若者世代のUIターンによる定住を促進するための住宅取得支援策です。
市外から京丹後市へ新たに移住し住宅を確保する際に、購入費や賃貸の初期費用など住宅確保に係る経費の一部を助成します。
補助額は上限30万円で、住宅の購入・建築だけでなく賃貸物件の契約費用等も対象となる点が特徴です。
移住直後の経済的負担を軽減し、若い世代が地元で暮らしやすい環境づくりを後押しする制度となっています。
おもな要件
(1) 年齢要件: 移住者本人が39歳以下であること
(2) 転入要件: 京丹後市外からの転入で、転入後1年以内の新規移住者であること
または近い将来市外から京丹後市に転入する計画がある方(事前申請も可能)
(3) その他要件: 補助金申請時点で市税等の滞納がないこと、世帯全員が暴力団員でないこと
対象となる移住先
京丹後市全域。
居住する地区に制限はありませんが、同市が運営する「定住空家情報バンク」を活用して住宅を取得する場合などは別途の空き家改修補助制度も利用可能です。
類似の若年UIターン住宅支援策は京都府内の他市町村(南丹市、綾部市など)でも展開されていますので、移住希望先の自治体に制度の有無を確認するとよいでしょう。
与謝野町子育て世帯移住定住促進事業(住宅取得支援)
京都府与謝野町では、子育て世帯の移住・定住を促進するため、町内で住宅を新築または新築建売住宅・中古住宅を購入した移住者に対し、費用の一部を補助する制度を実施しています。
移住先で安心して子育てできる住まいを確保してもらうことが目的で、補助金の基本額は100万円(住宅取得費用の実費を上限)です。
さらに 18歳未満の子どもを帯同する場合は子どもの人数に応じ加算額が支給され、その他にも町内業者による建築や町の分譲宅地利用、指定区域(過疎地域)への移住といった条件に応じて加算があります。
たとえば、与謝野町外から3人の子どもを連れて移住し町内業者で新築住宅を建てた場合、基本補助100万円に加え子ども加算や施工業者加算などが適用され、合計200万円超の支援を受けることも可能です(上限220万円)。
予算の範囲内での受付となるため、希望者は事前に町役場へ相談し申請状況を確認することが推奨されています。
おもな要件
(1) 世帯要件: 18歳以下の子どもがいる「子育て世帯」であること(妊娠中を含む場合あり)。補助金交付時に子どもが全員18歳未満である必要があります。
(2) 住宅要件: 与謝野町に定住する目的で、自ら居住する新築住宅を建設、または分譲住宅・中古住宅を購入すること
(※親族が所有する住宅を購入する場合は対象外)。購入後または完成後、速やかに住民票を移し定住する意思が求められます。
(3) 転入要件: 他地域から与謝野町へ移住してきた世帯であること。市区町村の定義によりますが、与謝野町外からの転入者であればUIターンを含め対象となります。補助金申請時点で既に転入済みの場合、転入後○年以内といった期間要件が設定されていることがあります(最新要項をご確認ください)。
対象となる移住先
与謝野町全域(与謝野郡与謝野町内)。
ただし加算措置として、町内でも特に移住促進特別区域に指定されたエリア(岩滝・加悦地区など過疎指定地域)へ移住する場合は追加補助が受けられます。
制度の細部は年度ごとに変更される可能性があるため、利用を検討される方は必ず最新の町公式情報を参照してください。
※なお、これら支援制度は年度ごとに内容が見直される場合があります。令和7年度に実施されている制度のみを上記紹介しましたが、翌年度以降も継続されるとは限りませんので、移住計画の際は必ず公式発表を確認してください。
京都府の移住体験プログラム
京都府内では現在、京丹後市、与謝野町、福知山市、綾部市、亀岡市、南丹市、京丹波町、京都市、宇治田原町の9市町村が移住体験用のお試し住宅を提供しています。
たとえば京都市では北部山間地域(右京区京北など)に田舎暮らし体験住宅が用意されており、一定期間格安で山里での生活を体験可能です。
綾部市や与謝野町でも空き家を改装したお試し住宅を短期貸出しており、地元の暮らしや人との交流を実感する機会を設けています。
南丹市では、1年以上居住するとその体験住宅をそのまま購入できる仕組みもあるなど、自治体ごとに工夫が凝らされています。
「百聞は一見に如かず」と言うように、気になる地域には実際に足を運び、可能であれば数日〜数週間でも生活してみるのがおすすめです。
短期移住体験を通じて、気候や買い物環境、人付き合いの雰囲気などを肌で感じることで、移住後のミスマッチを減らすことができるでしょう。
京都府の移住相談イベント
京都府や各市町村は、移住相談イベントやフェアを定期的に開催しています。
毎年秋には東京ビッグサイト等で開かれる日本最大級の「ふるさと回帰フェア」に京都府ブースが出展し、各地域の担当者と直接話せる機会を設けています。
また、各市町村によるオンラインセミナーや、東京都内で相談イベントを不定期で実施。
このようなイベントは、パンフレットやウェブ情報だけでは分からない各地の生の情報(地域の雰囲気、移住者のリアルな暮らしぶり等)を得られる貴重な機会です。
京都市が運営する「住むなら京都」や、「今日と明日」などでイベント情報が告知されるので要チェックです。
京都府で移住者に人気の地域・市町村
最後に、京都府内で移住先として特に人気のある地域をいくつかピックアップしてご紹介します。
京都府は広域にわたり地域性が異なりますが、ここでは都市近郊エリアから田舎暮らしエリアまでバランス良く選んでみました。
それぞれの地域の特徴や魅力、支援情報の一端をまとめますので、移住先選びの参考にしてください。
京都府で移住者に人気市区町村:宇治市
宇治市は京都市の南隣に位置し、京都市中心部へ電車で20分程度とアクセス良好な人気エリアです。
世界遺産・平等院や宇治橋に代表される風情と、宇治茶の産地として知られる落ち着いた街並みが魅力で、市外ですが住みやすい“京都”らしさを感じる街といえます。
人口約18万人の中規模都市である宇治市は、商業施設や医療機関も揃い、子育て世帯からシニアまで暮らしやすい環境です。
特に30代前後の若い夫婦には「京都市にも大阪方面にも通勤しやすく、生活利便性が高い」として移住候補に挙がります。
宇治市の移住支援策
宇治市独自の移住支援策としては、「宇治市三世代近居・同居支援補助金」があります。
これは宇治市内で祖父母世帯と近居または同居を始める子育て世帯に対し、空き家を活用する場合はその改修費を補助する制度で、上限30〜40万円程度の助成が受けられます。
地方移住で不安な子育て支援も、宇治市は待機児童対策や児童医療費助成など比較的充実しています。
加えて、市内には宇治川や山々の自然も身近でアウトドアも楽しめるため、「便利さと自然の程よいバランス」を求める方におすすめです。
京都市に比べると住宅価格・家賃もやや割安で、駐車場付き物件も見つけやすいでしょう。
京都府で移住者に人気市区町村:京都市左京区
左京区は京都市の北東部に位置し、街中の文教エリアから山間の田舎エリアまで多様な表情を持つエリアです。
特に京阪電車や叡山電車が通る南部(出町柳・北白川・高野周辺)は、京都大学や京都芸術大学を擁する学生街であり、国内外から学生や研究者が集まる国際色豊かな雰囲気があります。
カフェや古書店、アートスペースなど独自のカルチャーが根付いたエリアでもあり、クリエイティブな仕事の人やサブカル好きにも人気です。
住宅街としては吉田・高野エリアなどは比較的家賃も手頃で、学生以外の若い社会人の一人暮らしも多い地域。
北部の山間地域(鞍馬・花背・大原など)に行くと、一転して自然豊かな田舎になります。
左京区の移住支援策
左京区役所では北部山間移住希望者向けの「田舎暮らし体験住宅」も用意しており、まずは短期滞在で生活感を掴むこともできます。
左京区に移住した場合、都市部と山間部どちらに住むかで生活スタイルが大きく変わります。
都市部なら自転車や徒歩中心で暮らせますが、山間部なら車が必須になるでしょう。
京都駅方面への通勤には地下鉄烏丸線沿線が便利なので、左京区内でも烏丸線北山駅に近い松ヶ崎・下鴨エリアなどは根強い人気があります。
総じて左京区は「京都らしさ」と「新しい文化」が融合した住みやすいエリアであり、一人暮らしからファミリーまで幅広い移住層におすすめできます。
京都府で移住者に人気市区町村:京都市
伏見区は京都市の南部に位置し、京都市内でも人口が多い(約28万人)活気あるエリアです。
かつて城下町や港町として発展した歴史があり、現在でも酒処・観光地として有名な伏見桃山エリアを中心に独特の風情があります。
伏見と聞いてまず思い浮かぶのは全国から参拝者が絶えない伏見稲荷大社ですが、実際伏見区は広く、稲荷山周辺から宇治川沿いの淀地域まで多彩な街並みを含みます。
移住者にとって伏見区の魅力は、まず交通利便性の高さでしょう。
京阪電車・近鉄電車・JR線が走り、大阪方面へも京都中心部へもアクセスが良好。
特に京阪沿線の中書島・丹波橋駅周辺や、近鉄沿線の竹田・桃山御陵前駅周辺は乗換駅でもあり、大阪・奈良方面への通勤にも便利です。
また伏見区内だけでも買い物環境が充実しており、大型商業施設から昔ながらの商店街まで揃っています。
「アクセスの良さや地元密着型の店が多く住み心地が良い」との評価もあり、転職移住者や子育て世帯にも適したエリアと言えます。
伏見区の移住支援
伏見区役所は区独自の移住情報サイト「住むまち伏見」を開設し、若い世代に伏見の魅力や生活情報を積極発信しています。
行政としても移住・定住を歓迎する姿勢がうかがえ、例えば新婚世帯向け家賃補助制度(京都市の制度)や、地域ぐるみで子育て支援を行う取り組みなどが周知されています。
総合すると伏見区は、「都市部の便利さ+下町の温かさ」を兼ね備えた生活しやすいエリアです。
京都らしい風情も感じつつ日常生活の利便性も重視したいという方には、伏見区への移住は有力な選択肢となるでしょう。
京都府で移住者に人気市区町村:精華町
精華町(せいかちょう)は京都府南部、奈良県境に位置する人口約36,000人の町です。
関西文化学術研究都市(いわゆる「学研都市」)の中心地として計画的に整備された新興エリアで、先進的な企業や研究施設が数多く立地しています。
町内には国立国会図書館関西館や先端技術の研究所があり、街そのものが近未来的な雰囲気。
一方で周囲には美しい田園や里山も広がり、都会的要素と自然が調和した環境となっています。
精華町は大阪・京都へのアクセスが良く、町内のJR祝園駅・近鉄新祝園駅から京都市中心部や大阪市へ約1時間圏内で通勤・通学が可能です。
そのため、ベッドタウンとして発展し、京都府内でも人口増加傾向にあります。
また、計画都市ゆえ道路や公園、医療・教育インフラが整備され、子育てしやすい街づくりにも力を入れています。
治安も良く、公園や図書館など公共施設が充実しているほか、保育園・幼稚園の数も十分にあり待機児童対策も進んでいるので、ファミリー移住にもおすすめ。
さらに、精華町は京都府のなかでも移住者が多く、閉鎖的なイメージの薄いエリアなので、古いしきたりよりも新住民同士のコミュニティが主体となっており溶け込みやすいでしょう。
生活面では、大型商業施設「精華町役場・けいはんなプラザ」周辺にスーパーや飲食店が集まり買い物も便利です。
精華町の移住支援金
精華町は移住支援金(先述の京都府移住支援金)の対象地域には含まれていませんが、代わりに子育て世帯への住宅支援策や起業支援があります。
例えばUIJターンで創業する人には最大80万円の町独自補助(京都府の起業支援金100万円と合わせ最大180万円)を出す制度があり、学研都市ならではの人材誘致を図っています。
京都府で移住者に人気市区町村:南丹市
南丹市(なんたんし)は京都府中部に位置し、京都市の北西に隣接する自然豊かな市です。
面積は広大で、美山町・日吉町・園部町・八木町の4地域が合併してできました。
それぞれ特色があり、「日本一の田舎」を目指す美山地区、ほどよい田舎の日吉地区、都市近郊の利便性を持つ園部・八木地区など様々な顔を持つと紹介されています。
南丹市の魅力はまず、里山の原風景ともいえる美山地区でしょう。
茅葺屋根集落が残る美山かやぶきの里は全国的にも有名で、この地に憧れて移住する方もいます。
冬は積雪もありますが、その分四季折々の自然の恵みや伝統的な暮らしを体験できます。
一方、園部町や八木町はJR嵯峨野線で京都市と繋がっており、京都駅から電車で約30〜40分と通勤圏内です。
園部駅周辺には大学(京都医療科学大)もあり、市街地は比較的人口が多く便利です。
南丹市の移住支援
移住支援の面では、南丹市は京都府の施策と連携して積極的に取り組んでいます。
南丹市も京都府移住支援金の対象自治体であり、東京圏からUIターン就職する方には世帯100万円・単身60万円の支援金交付を行っています。
また、移住者起業支援事業として、移住促進特別区域内で既存施設を活用して起業する場合に経費2/3(上限300万円)補助も用意されています。
これは京都府の制度を南丹市が窓口になって実施しているもので、例えば空き店舗を改装して飲食店を始める際などに利用可能です。
さらに、子育て支援も手厚く、南丹市では子宝祝金として出生時に第1子5万円、第2子10万円、第3子以降20万円を支給する制度もあります。
医療費助成も中学校卒業まで無料など、若い世代の定住促進に力を入れています。
移住後のサポートでは、地域おこし協力隊の受け入れや、先輩移住者と交流できるイベントも開催されています。
南丹市は「市民のまちづくり活動が盛んな地域」とも評され、移住者も積極的に地域活動に関わることで充実した暮らしが送れるでしょう。
自然の中でのびのび子育てしたい家族や、農山村で地域に根ざした暮らしをしたい方にとって南丹市は魅力的な移住先と言えます。
京都府で移住者に人気市区町村:宮津市
宮津市は京都府北部、丹後地域の中央に位置する人口約17,000人の市です。
日本三景の一つ天橋立を擁する風光明媚な海辺の町であり、「海の京都」エリアを代表する観光地でもあります。
宮津湾や伊根湾に面し、新鮮な海の幸や美しい海水浴場など海暮らしの魅力が詰まった地域です。
移住者にとって宮津市の一番の魅力は、何と言っても日常の中に絶景があること。
「天橋立が日常にある暮らし」を実現できる点で、都会では味わえない贅沢なロケーションです。
釣りやマリンスポーツが趣味の方にも理想的でしょう。
また、宮津市は商業施設や病院など生活インフラも丹後地域のなかでは比較的整った拠点都市で、田舎過ぎず程よい田園都市といったところ。
暮らしの面では、宮津市は冬の寒さ(雪)と車移動中心の生活に注意が必要です。
積雪量は隣の舞鶴市などより少なめとはいえ、まれに大雪となる年もありますが、夏は海風が心地よく避暑地として過ごせます。
買い物は市街地にスーパーやドラッグストアがあり日常品は揃いますし、子育て世帯には保育料の軽減や医療費助成もあります。
都会の喧騒から離れ、海辺でスローライフを送りたいという方にとって、宮津市は理想的なエリアでしょう。
また、地域住民は外から来た人にも比較的オープンで、移住者同士のネットワーク作りも盛んです。
実際、宮津市への移住者数は年々増えており、市も「移住者等の活躍の推進に関する計画」を策定し積極的に受入れを推進しています。
宮津市の移住支援
宮津市の移住支援策としては、京都府の特別区域制度に基づく空き家改修補助が利用できます。
宮津市全域が移住促進特別区域に指定されており、市内の空き家バンク登録住宅に移住する場合、改修費用について最大180万円の補助が受けられます。
加えて、東京圏からUIターン就職する方への移住支援金(100万円/60万円)も宮津市で申請可能です。
このほか、移住者向けの家賃補助や、地域によっては集落支援の独自給付金を用意するなどきめ細かな支援を行っています。
宮津市役所内には「みやづ移住コンシェルジュ」が配置されており、地域全体で定住に向けたサポートを受けられる体制が整っています。
例えば空き家探しでは、空き家バンクの紹介だけでなく物件の改修プランや地域住民との橋渡しまで相談に乗ってもらえます。
以上、京都府における移住支援情報と地域特性について、総合的に解説しました。
京都ではんなり移住暮らし
京都府は行政のサポートも厚く、UIJターン希望者にとって魅力的な選択肢の多いエリアです。
「もうひとつの京都」として注目される北部7市町が共同で移住ポータルサイト「京都府北部7市町 移住定住ポータル たんたんターン」を運営するなど、府内各地域が一丸となって移住者を歓迎しています。
単身移住からファミリーまで、ぜひ本記事の情報を参考に、自分らしい京都暮らしを実現してください。
歴史ある京の都も豊かな田舎の京都も、きっとあなたを温かく迎えてくれることでしょう。