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ヨガインストラクターが新天地・大野市で出会った”自分探し”ストーリー

”水の町”にやってきたヨガインストラクター

“水の町”として名高い福井県大野市。県内の市町で最大の面積を誇り、福井県東部に位置している。四方を山に囲まれた盆地で、特別豪雪地帯にも指定されている雪深い地域だ。

そんな大野市に移住してきた斉藤アイさん(35歳)。岡山県で生まれ育ち、高校を卒業し上京。ミュージカル女優として活動するかたわらヨガと出会い、ヨガインスタラクターの道へ。一時期、沖縄での生活を経験したあと、ふたたび東京で生活。2012年に結婚を機に福井県大野市に移住した。

「東京から沖縄に行ったり、福井に移住したり、変化が好き。たぶん変化しているほうが自分が安定するんだと思います。だから移住にしてもそれほど不安はありませんでした」

移住の経緯は? 尼さんになりたくて大野市を訪れた?

「大野市に友達が住んでいたので、初めはその子のところに遊びに来たんです。正直、福井って北陸のどこにあるのかもわかっていなかったくらい」

当時、東京でヨガインスタラクターとして多忙な日々を送っていたアイさん。休みが月に2日ほど。

「ありがたいことにヨガの仕事がものすごく入ってくるようになり、月に2日くらいしか休日がありませんでした。それで、その2日間をどういうふうに過ごそうかなって思ったときに、漠然と田舎に行きたい!って思うようになったんです。ヨガつながりで知り合った友達が福井にいるし、その子とは将来の話とか、深い話をする仲でもあったので、ちょっと行ってみようかなと」

移住なんてこれっぽっちも頭になかった。ただの気分転換のための旅行だった。沖縄時代に知り合った友達が大野市の方と結婚して暮らしていた。2011年9月、友達を訪ねて初めて大野市へ。

「当時はちょっと思い詰めている部分があったんです。東京とか人付き合いとか、少し疲れていて、現実逃避じゃないですけど、都会を離れたいと思う部分も出てきたんです。それで、当時は移住なんて本気で考えていなくて、とにかくヨガがしたかったんです。

一生ヨガを続けられる道は何かなって考えたときに、禅の道はヨガと通じるところあるなと思い至りました。それで、尼さんになったら毎日ヨガできると思い込んでしまったんです。冷静に思い返すと、尼さんでヨガやっている人っていないですけどね(笑)」

お寺の住職さんに出家したいと相談

訪ねた友人がたまたま宝慶寺という大野市のお寺でボランティアをしていて、アイさんも行ってみることに。そこで出家したいと思っていると住職さんに相談した。

「宝慶寺は、標高500mくらいのところにあり、杉に囲まれていたお寺。その杉の林の中を歩いていくと山門が見えるんですけど、それが荘厳な感じがして感激しました。俗世とはまったく切り離された空間でした。私の中でそういうところにひかれている気持ちがあったので、ピタッと気持ちが一致したんだと思います。それで尼さんになりたいと住職さんにお話ししたんだと思います」

宝慶寺から友達の家に戻ると、その日の夜、住職さんから電話がかかってきた。

「『尼さんになるのもいいけど、結婚するのがいちばんの幸せだ』と言われて、そういう考えもあるなと。そうしたら、紹介したい人がいて、ちょっと頭が固いんだけどいいんじゃないかなっておっしゃるんです。それがいまの旦那さんでした」

たまたま友達がいた福井に遊びに来たら、話は本人が思いもよらない方向に進み出す。とはいえ、アイさんは遊びに来ただけで、大野での暮らしは想定していなかった。実際、東京に戻ったあとも、東京を離れる気はなかったという。

初めての訪問で大野市のファンに 将来の旦那さんとの出会い

「今でも覚えているんですけど、最初に来たとき、東京とは景色が全然違って、田んぼの向こうに山があり、そこに夕日が沈んでいくのを見て、大野はいいところだなってすごく感じました。東京ではそういう景色を見ることはないし、それに空気もおいしい。福井のファンになって帰っていきました」

東京に戻ったあとも、住職さんから「いつ会いますか」と連絡が何回も来た。大野のファンになっていたこともあり、その年の年末、あらためて大野市を訪れた。2度目の訪問は一種、お見合いのような感じで、友達の家で食事会となった。

「ご住職さんと、今のだんなさんと食事でした。そのときは、友達と一緒に精進料理を作りました」

さて、印象はどうだったのだろうか。

「頭の固い、気難しそうな人だなと思ったのが正直なところ(笑)。でも対面する2か月前、初めて宝慶寺を訪れたときに、ちょうど昼のお勤めをやっていました。2人のお坊さんがいて、年配の方がお経を読んで、もう1人がボーンと鐘を鳴らす。そのボーンと鐘を鳴らすお坊さんを見たときに、『私、結婚するならこういう俗世間っぽくない人がいいな』と思ったんです。それが今の旦那さんだったっていう。きっと、そういうことだったんでしょうね」

最初の出会いの後は、東京と福井を行ったり来たりして、4、5回会ったころに結婚の話が出た。

変化が好きだから移住に不安はなかった

東京を引き払い、福井県大野市に移住することに対して不安はなかったのだろうか。

「あんまり深くは考えていませんでした。不安だったのは東京より寒いということくらいかな。私、冷え症なんですよ(笑)。東京から沖縄に行ったり、沖縄から福井に来たり、私は変化が好きなんだと思います。変化しているほうが性に合っているというか、自分が安定すると思うので、それほど抵抗はありませんでした」

振り返って考えてみると、田舎暮らしに憧れる気持ちも持っていた。ヨガインストラクターになる前はブラウンライスカフェという東京・表参道の玄米菜食の店で働いていたアイさん。

「玄米菜食のお店って郊外から質のいいお野菜を仕入れているんです。生産者とのつながりも大事にしている。生産者の方は都会に住んでいる人とは違った、すごくいい顔をしていて、幸せそうな方が多くいました。そういうのが田舎で暮らす夢のきっかけになっている気がします」

東京時代、ベランダで野菜を栽培していて、気がついたら20種類くらい育てていたこともあった。

「いつか田舎暮らしをして、いつか自分で育てたものを自分で食べたいという気持ちは少なからずあったんですよね」

「尼さんになりたい」というひょんなきっかけから大野市と縁を持ったアイさん。なんとお坊さんのお嫁さんになるという結果に。初めて訪れた日から1年後には結婚式だった。福井県大野市での移住ライフがいよいよスタートした。


vol.2に続く】

お坊さんと結婚し、大野市へ移住してきた斉藤アイさん。次回は、移住後の暮らしぶりについてまとめます。お楽しみに。

 

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