創業明治28年!京都の老舗酢屋・飯尾醸造
京都駅から車で2時間。京都府北部の宮津市に、飯尾醸造(いいおじょうぞう)の酢蔵があります。目の前は海が広がる素敵なロケーション。日本三景の一つ、天橋立もすぐ近く。創業明治28年の飯尾醸造は、その美しい環境のもと無農薬の米作りから始まり、昔ながらのやり方で酢を作る全国でも稀有な酢屋です。
放置棚田で無農薬米を作る 移住者が集まり地域活性にも一役
飯尾醸造の棚田は、蔵から車で40分の標高400mの上世屋高原にあります。
「限界集落の放置棚田で、無農薬米を作り始めたのは約50年前のこと。昼夜の寒暖差が大きく、生活用水や農薬汚染を排除したきれいな水と空気がある標高のこの棚田米は、粒が大きく、甘みがあるのが特徴」と飯尾醸造五代目当主の飯尾彰浩さん。
作られているお米は、8割がコシヒカリ、残りの2割が麹作りに使われる五百万石です。毎年5月の田植え〜10月の稲刈りまで手作業で、飯尾醸造のスタッフ、蔵人はもちろん、通販でのお客さまや取引先などがボランティアで参加して、総出で作業を行います。
最近では、農家の高齢化や過疎化が深刻な問題ですが、飯尾醸造の米作りに共鳴した若い夫婦などが、この棚田に移り住み作業に従事。地域活性にも一役買っています。
飯尾醸造は『富士酢』ののれんがトレードマーク
何とも言えない酢の甘酸っぱい香りが漂う路地裏を入ると、そこに飯尾醸造はあります。社員は10名ほどの小さな会社。ここで杜氏が泊りがけで麹を造り醸す幻の酒を原料に、発酵、熟成を経て、酢蔵で約100日かけてお酢を作ります。日本酒仕込みと全く同じ工程を経て作られたお酒は、あくまで酢を作る過程のものとしながらも「日本酒としてもかなりイケてるお味」なのだと飯尾さん。
100日以上発酵させ、丁寧に時間をかけて酢を熟成させる
醸造蔵の中は薄暗くヒンヤリとして、高さ4メートルほどのタンクがいくつもあります。大きなタンクの表面は温かく、中からはプクプクと発酵の音が聞こえ、ふわ〜っと熱気も伝わってきます。
タンクを覗きこむと、白い膜(酢酸菌膜)がはられていました。効率を優先させるために約1日で発酵を終わらせるのが、通常の酢。ここでは、昔ながらの静置発酵と呼ばれる方法で100〜120日かけてじっくり発酵させます。1本の酢を作るのに、実に2年半ほど時間を費やすのです。だからこそ「旨味のもとになるアミノ酸が多く、まろやかな味わいの酢に仕上がります」
紅芋酢はアントシアニンが豊富! 職人たちも毎日欠かさない
もう一つのタンクで作られていたのは、紅芋酢。「紅芋に含まれるポリフェノールの一種、アントシアニンは、血液をサラサラにする機能があるようです。また、抗酸化力も高く、老化や生活習慣病にも。当社は、毎朝、紅芋酢を飲んでから仕事を始めます」(飯尾醸造五代目当主・飯尾彰浩さん)
ツンとした感じがなく、まろやかな味わいは女性に人気。美容と健康のために、毎日飲むのがオススメとか。
併設ショップでの試飲もできる
飯尾醸造の蔵に併設するショップでは、取り扱うお酢のすべてを試飲することができます。定番の純米富士酢をはじめ、紅芋酢、いちじく酢、りんご酢など果実酢のラインナップも充実。「遠くからわざわざお越し下さったので」と、ここでの購入は市場価格より10%引きになるのもうれしい。仕込みの時期にもよりますが、蔵見学も可能(要問い合わせ)。天橋立ての観光がてら、ぜひ立ち寄ってみて。
飯尾醸造 詳細
住所:京都府宮津市小田宿野373
電話;0772-25-0015
text:ナイキミキ
【PROFILE/ナイキミキ】
ナイキミキ=ジャングル・ジャパン主宰。
京都を拠点に、媒体の企画編集〜取材、執筆、コーディネィトを行う。近頃は、地方を軸足にコンテンツマーケティング、イベントの企画、運営、ブランディングなども行う。専門分野はファッション、伝統工芸、地場産業、旅。
サイト http://jangle-japan.strikingly.com