NAP代表、ディレクター兼デザイナー/河合 誠さんインタビュー その2
拠点が2つあると、それぞれ「あっちが遅い」とか「あっちが失敗した」となる。
いいことがあっても、「あっちのヤツが頑張った」とはならない。
岡山と倉敷に会社が2つに別れていた拠点を、いつか1つにしなければならないと考えていた河合 誠さん。
そして行動に移した。
cazual編集部(以下、c) 拠点が1つになったことで、生産性が上がりましたか?
河合さん(以下、河) そうですね。
いろいろ景気が悪い中で、当時はまだ底じゃなかった。
それでも工場を作るときは色んな人に、反対されたんです。「この不景気に、いまさら縫製工場作って」なんて。
でも、ミシン屋さんとかが勝手に機械とかを勝手に持ってくるんですよ。「お金はあるときにちょうだいね」みたいな感じで。糸屋さんとか資材屋さんとか、色々な業者は新規の取引先がないもんだから、同じように色々と持ってくる。
仕事をまわす面では大変だったんですけど、不景気だからこそ仕入れが逆に協力してくれる人が多くて。
c 縫製工場を作ったときの職人さんは、経験者ですか?
河 ううん、未経験。
たから作り自体も、縫製工場の常識っていうのを知らないで、独自にやっていった。
かつ、縫製工場としての受け仕事じゃなく自社ブランドなんで、そのへんは関係なかったんです。
効率が良かろうが、悪かろうが。作りがどうだろうが、それが自分らのブランドの味。お客さんが気に入ってくれれば、それがスタンダードとして通っていく。
あとこっちに移ってきたもう1つの理由が、当時THE SUPERIOR LABOR(シュペリオールレイバー)と海外ブランドの取引が少しずつ増えてきて、「作ってるとこが見たい」とか言ってくれるようになったことですね。
そういった海外ブランドが、例えばイギリスのブランドであってもロンドンが本拠地じゃなくて、どこか郊外にあったりする。そうなると、「なんか感じいいんだろうな」って想像ができる。
例えば、フィレンツェのブランドとかに聞くと、実家がお城だなんて言う。
「フィレンツェの城に住んでるって!(笑)」。
取引先がそんな感じの中で、じゃあウチは何ができるかなって考えたときに、地方都市の街中にいてもなんのメリットもないって答えになった。
やっぱり田舎のメリットっていうのは、田舎にいること。
岡山の街中ってなんでもあるんですけど、すべてが足りないんですよ。
c 「なんでもあるけど、すべてが足りない」って、すごいキャッチコピーですね?
河 セレクトショップもあるんですけどフランチャイズ店だから、何かが足りない。結局は、セレクトショップオリジナル商品の在庫を放り込まれてる地方店って感じ。オリジナル商品のはけ口みたいなみたいなことになってる。
東京にある大手セレクトショップの店がまえと、地方はまったく違う。
同じショップ名ではあるけれど、イマイチだっていうのが地方都市の店。
一応なんでも全部あるんですよ。でも欲しいものもなければ、刺激も与えられない。
c 河合さんは、どちらの出身ですか?
河 岡山駅の裏っていう結構な街中。
でもどこまで背伸びしても、岡山県民。
東京の真似したって、東京都民にはなれない。
だからって、東京に住みたいって思ったことは一度もないですね。
c この縫製工場は廃校だったらしいですが、最初から廃校を探してたんですか?
河 海外とか、東京から来る取引先が増えてきたから、最初は空港の近くを探してたんですよ。
でも市街化調整区域っていうのがあって、岡山市のまわりをドーナッツ状に新しい建物や開発できない区域がある。空港付近がちょうど市街化調整区域に引っ掛かってて。
空港周辺を色々探しても自由にできるとこが見つからない。
それでちょっと気分転換に建物の方を先にあたってみようと思って、自分のやりたいことで見積もりを出してもらった。
そしたら8000万円とか超えてたかな。結構な金額になってしまって(笑)。
これは知り合いとかに頼むと、面倒なことになるなあと思って、まったく知らない建築会社に飛び込みで電話して、事情を説明したんです。
「お金を借りられる、借りられないは別の話として、予算はこのぐらいで、こんなことがやりたい」って。
そしたら、そこの設計士がエライ乗ってきて「じゃあ、土地を僕が探します」って、良さそうな所を5件ぐらいピックアップしてくれたんです。
クルマで県内を色々と1日走って案内してくれて、最後に「オススメじゃないんですけど」って連れてってくれたのがここ。
木をかなり伐採したのでいまは明るくなってるんですが、当時の雰囲気はちょっと暗くて、怖い感じ。夕方に見せてもらったんですけど、それでもすぐに気に入って。
「オススメじゃない」と最後に紹介された物件。
薄暗く怖い感じの廃校。それを直感的に気に入った河合さん。
しかし実際は、借りられるとか買えるという物件ではなかった。
1991年に廃校となった物件を生産拠点として手に入れたTHE SUPERIOR LABOR に続く
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