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【福井県大野市】水から生まれる可能性!国際支援で誇りを取り戻すまちを目指す!

”名水のまち”福井県大野市

大野市は福井県東部にある大きな市だ。福井県内の市町のなかでは最大の広さを誇り、なんと県面積の5分の1を占めるほど。市街地には城下町の面影が残り、越前の小京都とも呼ばれている。

また、四方を山に囲まれた盆地であり、特別豪雪地帯に指定されるほど雪深い地域でもある。この地学的状況が大野を”名水のまち”たらしめているのだ。雪解け水が地中深くに染み込み、それが扇状地である市街で湧き出ているのだ。市街には湧水地がたくさんあり、”清水”(しょうず)として市民に親しまれている。

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市内に30箇所近く、清水がある

歴史、自然に恵まれた大野市だが、全国各地の地方自治体の例にもれず、人口減少に頭を悩ませている。現在の人口は34,000人ほど。20年前に比べて、6,000人近く減少しているのだ。

この現状に対し、市は興味深いアクションを起こしている。

”水”は大野市のアイデンティティー

大野市は、古くから豊かな湧水が湧き出る地域ということで、”水”を軸として地域創生のブランディングを進めている。2015年5月から「水への恩返し Carrying Water Project(キャリング ウォーター プロジェクト)」として活動を開始。その一環として、日本ユニセフ協会とパートナーシップを組み、東ティモール支援を実施している。

東ティモールは21世紀最初の独立国であり、長く内戦が続いていた影響で、安全な水源の確保に苦しんでいるのだ。そこで、水を大切な街の財産と考えている大野市が支援に乗り出すことを決めた。市は3年で総額30万ドルを提供し、水道設備の設置など、現地でのさまざま水にまつわる支援をしていくという。

東ティモールの水支援事業に限定した支援は、地方自治体では日本初となる「地域と使途を明確にした支援」となっている。

水に恵まれた市として国際貢献することで、市民に誇りを取り戻す

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名水百選にも選ばれた泉町の”御清水”。飲用水、野菜を洗う、洗濯をするなど、下流に行くに従って清水内で用途ごとに使い分けられている。

「キャリング・ウォーター・プロジェクト」によって、さまざまな水にまつわる支援をすることで、大野市民が「おらがまちの水は素晴らしい資源だ」と再認識してもらうことを期待している。このようにして、市民が水に対して誇りを持つことは、ひいては地元・大野市への誇りにもつながる。地元の人が地元に誇りを持てれば、長い視点で見れば人口減少に歯止めもかかるだろう。

市民も注目する東ティモール支援

2016年10月に今洋佑副市長、大野市役所の帰山寿章さん、吉田克弥さんが東ティモールを視察。現地の様子を報告する市民向けシンポジウム「第2回 大野の水と未来を語る集い 東ティモール視察報告会」が1月28日に開催された。会場は、空きビルをコミュニティスペースとしてリノベーションしたツイタチビルだ。

市民の方が50名ほど参加するなど、関心の高さがうかがえた。

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当日は、視察にも同行した日本ユニセフ協会の吉田好江さん、ユニセフの東ティモール事務所代表を務めていた関西学院大学の久木田純教授も参加。それぞれユニセフと大野市の取り組みの意義や、東ティモールがどういう国なのかといった解説もしてくれた。

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日本ユニセフの吉田さん。ユニセフの活動理念、大野市とのプロジェクトの経緯などを話してくれた。

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元ユニセフ東ティモール事務所代表の久木田教授。歴史的背景、人柄など東ティモールのリアルな姿をユーモアを交えながら解説。

3年間で6基の給水システムを設置する

大野市の支援は具体的には、水源の確保が難しい山間地域に3年間で6基の重力式給水システム(GFS)を設置することだ。視察は、実際に設置を予定しているエリアに行ってきたという。

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山あいにある水汲み場。 写真提供:大野市

水道が整備されていないため、山道を2時間歩いて水を汲みに行く。

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厳しい山道を往復4時間かけて水を汲みに行く。 写真提供:大野市

水汲みは、女性と子どもの仕事とされている。

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実際にタンクが設置されている様子を視察 写真提供:大野市

重力式給水システム(GFS)は、高い位置にある水源から遠く離れた低い場所へ、重力を利用して水を送るシステムだ。これにより、山あいの水源から、村まで水を引いてくるという。

きれいな水がいつでも手に入る そんな豊かさに気づくきっかけに

市民の6割が家庭で地下水をくみ上げて、飲用水や生活用水として使っているという大野市。水はあまりに身近だ。だからこそ、その豊かさにはなかなか気づけない。

東ティモールへの支援で、あらためて大野市の水資源の豊かさに気づく、市民も増えるだろう。事実、市民向けシンポジウムで東ティモールの現状を見た市民たちからは「水を使うのはこんなに大変なことなんだ」という声が聞かれた。

海外支援というと、地方創生とは対極の位置にあるように見えるが、ひるがえって自分たちの街の自然の豊かさに気づくきっかけになっている。

「キャリング・ウォーター・プロジェクト」は国際支援を通じて、大野市のたぐいまれな水環境のよさを再発見し、街の誇りを次世代につなぐことを最終の目標として掲げているという。

地方創生の課題のひとつとして、地元の方が街への誇りや自信を失っているケースが多い。大野市は、水を通して、街の誇りと自信を取り戻そうと、少しずつ歩みを進めている。

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※福井県大野市の情報、「Carrying Water Project」の活動については、下記をご参照ください。
大野市公式ホームページ
水への恩返し Carrying Water Project

text:george

【PROFILE/george】

茨城県東海村出身の32歳。インテリア雑誌、週刊誌、書籍、ムックの編集を経て、現在Webディレクター。4年前の朝霧ジャムに行って以来、アウトドアにハマる。テントはMSRのエリクサー3、タープはZEROGRAM。車を持っていないので、キャンプに行くときは知人の車に相乗りが常。なので、基本の装備は「軽くコンパクトに、友人の負担にならないこと」が信条


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