大定番のオピネルをより便利で機能的にしたい!
アウトドア用のナイフとしては、おそらくもっとも高い人気を誇るオピネルのナイフ。
手のひらによくなじむ天然木のハンドル、細かい作業がしやすい形状のブレード、そして折りたたみナイフとしては究極的にシンプルな構造がもたらす信頼性の高さがオピネルの魅力です。
すでに道具として完成されているオピネルのナイフですが、折りたたんだ状態ではブレードの背が露出しているのが気になっていました。
折りたたみナイフがそうなっているのは当たり前のことなのですが、一緒に収納しているほかの道具を傷つけてしまうのは見過ごせません。
その問題を解決し、より機能的で便利になるようなレザーケースを製作することを決めました。
レザーケースの作り方を簡単にご紹介
オピネルのケースができるまでの工程を10個に分けて、レザークラフト未経験の方でも楽しめるよう簡単にご紹介します。
1.完成した状態の絵を描く
まず最初に、どのようなケースを作るのかを紙に描いておきます。頭の中だけでイメージして進めてしまうと迷子になってしまうので、必須の作業です。
このように、取り入れたい機能や全体の形がわかればOK。絵が下手でも問題ありません。
2.工作用紙で型紙を作る
最初にオピネルを2枚の革ではさんでみて、どのくらいのサイズで型紙を作ればいいのかを、ざっくりと把握します。
このときに把握したサイズと、先ほど描いた絵をもとに、工作用紙に型紙の輪郭となる線を引いていきます。
線を引き終わったらカッターで工作用紙を切り抜きます。上部のポコっと出ている部分は、カラビナを取り付けるためのループです。
そしてこのループこそが今回製作するレザーケースに取り入れたい機能。オピネルを保護しながら、リュックやズボンに吊り下げられるようにします。
かなり簡単なものを作るので、型紙はこれだけです。
しかし型紙作りは、仕上がりを左右する非常に大事な工程。いくらシンプルな型紙であっても、丁寧に作る必要があります。
3.型紙の通りに革をカット
続いて革を切り取る工程です。まず革に型紙を置き、型紙の輪郭を尖ったものでなぞります。
これにより革に細い傷がつくので、この線の通りにカットしていきます。
ストレートの部分は定規を使い、カーブの部分はゆっくり慎重に。
ある程度慣れてしまえば、革をカットするのは簡単です。
レザークラフト用の革包丁を使用するのが一番ですが、ピザを切るカッターに似ている「ロータリーカッター」も便利でおすすめです。
同じ形のものが2つありますが、これはのちほど背中合わせにして接着します。
4.トコノールでトコ面を整える
「トコ面」とは、革の裏側の毛羽立った部分のことです。逆に表側の綺麗な面を、「銀面」といいます。
そして「トコノール」とは、このトコ面を綺麗に整えるための薬剤。これを塗っておくことで、トコ面が傷むのを防ぐことができます。
右にあるのがトコノールを塗り終わった状態の革です。ボサボサだったトコ面が、ツルツルになっています。
トコ面は外から見えない部分ですが、見えない部分にまで手間をかけると、長持ちする良い道具ができあがります。
5.ニーフットオイルを全体に塗り込む
ニーフットオイルとは牛から採取される油のことで、革をしなやかにし、綺麗にエージングさせるという効果があります。
カットした革すべてに、ムラにならないようにすり込みます。
ニーフットオイルを塗ると、このように革の色がかなり濃くなります。そのため、塗る前の革の色がいいというのであれば、塗らなくても問題ありません。
6.革を接着剤で貼り合わせる
革を革用の接着剤で貼り合わせる工程です。
まずは接着剤の乗りをよくするために、接着剤を塗布する場所をヤスリでこすって荒らします。
続いて、カラビナ用のループをふさいでしまわないように注意して、接着剤を塗布。
この接着剤は塗ってから5分待つ必要があるのでいったん手を休め、5分経過したら慎重に貼り合わせます。
貼り合わせたら革を傷つけないようにタオルを乗せて、ハンマーで叩いて圧着。そこから硬化するまで30分間放置します。
7.ステッチングルーバーで溝を掘る
「ステッチングルーバー」とは、革のフチから一定の間隔をあけた場所に溝を彫る道具。この溝のラインに沿って、のちほど糸で縫うことになります。
かぎ状に曲がっているパーツの先端に刃がついており、これで革をえぐる仕組みです。
太い棒を革のフチに沿わせ、刃を革に当ててまっすぐ引きます。失敗できないので、なかなか神経を使う作業です。
なんとかずれることなく終わりました。縫う場所にはすべて溝が彫られています。
8.縫うための穴をあける
レザークラフトでは革を縫合する前に、針を通すための穴をあけておく必要があります。
まず穴をあける前に、縫い始めのポイントから縫い終わりのポイントまで、革に「菱目打ち」を軽く押し当てて点線のような目印をつけていきます。
目印をつけ終わったら、その目印の通りに菱目打ちを革に当てて、ハンマーで叩きます。
この時に菱目打ちが斜めになっていると裏側の穴の位置がずれるので、常に垂直を維持しなければなりません。これもまた、かなり気を使う作業です。
ちょっと曲がってしまった場所もありますが、実際の使用に問題はないはずなので今回はこれで良しとします。
9.革を縫合する
穴をあけ終わったら、次は革を縫合する工程です。
レザークラフト用の糸を、縫う長さの4倍の長さにカットし、その両端に針を通します。レザークラフトは針を2本使用して、革の両側から交差するように縫っていくのが特徴です。
左手に持った針を通したら、次は右手に持っている針を通します。縫い目がきれいにそろうように、糸のテンションを常に一定に保ちながら縫い進めていきます。
最後は2本の針が両方とも裏側に出ている状態にし、糸を根本近くでカット。
出ている糸をライターであぶって処理したら、縫合は完了です。
カラビナ用のループの部分も当初は糸で縫う予定でしたが、結局、リベットで留めることに決めました。
「ハトメ抜き」という丸い穴をあけるための道具を革に押し当て、ハンマーで叩きます。
その穴にリベットを仮留めし、「打ち棒」という専用の道具を当て、再度ハンマーで叩きます。
リベットを使用すると縫う手間もなく、簡単かつ確実に革を固定できます。
見た目にアクセントがついたので、リベット留めにしたのは正解だったと思います。
10.最後にコバを綺麗にする
コバとは、革のフチのことです。このコバにトコノールを塗り、磨いていきます。
コバを磨く時には、このような「コバ磨き」があると便利です。
念入りに磨くほど光沢がでて美しく仕上がるので、コバにこだわる人はこの作業にかなりの時間をかけます。
逆に、より自然な風合いを残したいという方は、この作業を行う必要はありません。
それなりに光沢が出てきたので、今回はこのくらいでやめておきます。
コバ磨きを本気でやり込むと、時間がいくらあっても足りません。
だからこそ、ハマると非常に面白くてやりがいのある作業とも言えます。
完成したものがこちら!
最後の工程であるコバ磨きを終え、完成したレザーケース。シンプルな作りなので、作業自体はとても簡単でした。
オピネルもちゃんと入り、逆さにしても落ちてきません。ブレードの背もカバーされているので、ほかの道具に当たって傷をつけることもないでしょう。
ケースとしての機能は十分に果たしてくれるはずです。
自作ケースで機能性がアップしたオピネル
完成したケースを実際に使用してみると、使い勝手はまあまあといったところ。
機能を最小限にとどめてコンパクトに仕上げたので、メスティンの中に入れてもかさばる感じはありません。
もしオピネルのケースの自作に興味を持った方がいましたら、ぜひこの記事を参考にして作ってみてください。
細かい部分は端折ったところもありますが、大まかな流れとしてはこの通りで大丈夫です。
オピネルのナイフは愛用している人が本当に多いので、そのままだと没個性と言えなくもありません。
オリジナルのケースを作れば他人が使用しているものと差別化ができるうえ、よりいっそう愛着が湧くこと間違いなしです。
オビネル ナイフ 詳細
文/斎藤純平
【Profile/斎藤純平】
キャンプ、バイクツーリング、スキューバダイビングを趣味とするアウトドアライター。加えてこれから狩猟を始めようかと画策中。何をするのにも基本的にすべて一人で、キャンプもツーリングも思い立ったら即出発。読み手にとって本当に役に立つ情報を発信します。