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「千葉県我孫子」から「地域の絆」をテーマに、不動産屋が始めた活性化事業-「人と地域のつながりを深める、暮らしを彩るプロジェクト」

地元の活性化を目指して開催した『我孫子国際文化祭』

2019年秋、千葉県我孫子市の地域活性化を目的として開催された「ネイバーシップ我孫子国際交流文化祭」は、初開催にもかかわらず4000人以上の来場者を集めるなど大成功を収めた。

このイベントの委員長を務めたのは、我孫子市で不動産業を営む晃南土地株式会社の代表・中澤洋一さん。そして、副委員長を務めたのは大坪祐三子さんというディレクターだった。異なる経歴を進んできたふたりが出会い、どうやってこのイベントにたどり着いたのか。そして、今後の我孫子への想いなどをうかがった。

【発起人・中澤さんの思いについてはこちらの記事「地元密着の不動産屋さんが地域活性事業に進出!? 野外イベントを成功に導いたものとは」をご覧ください】

イベントの共同発起人、大坪祐三子さんについて

今回のイベントの共同発起人に名を連ねる大坪さんの略歴を紹介する。イベントには、彼女の国際的経験が大いに生かされている。

<晃南土地株式会社 広報 大坪祐三子さん>
1977年  愛知県生まれ。幼少期〜5歳までは東京で暮らす
1982年~ 商社勤務の父の転勤でアメリカに渡る
1987年  小学4年で日本に帰国。高校までを柏・我孫子で過ごす
1995年  彫金と歴史文化を学ぶためにスペイン・ドイツに留学
2019年4月 晃南土地株式会社に入社

スペイン・ドイツからの帰国後はジュエリーデザインの講師となる。その後、転機があり、アパレルやジュエリー、フレグランスブランドの立ち上げやディレクションを幅広く請け負うように。現在は、晃南土地株式会社で広報を担当。

 

きっかけは問い合わせフォームから届いた5ページもある履歴書

イベント発起人の晃南土地株式会社の代表・中澤さん(左)と副委員長の大坪さん

ーーふたりの出会いの経緯を教えてください。

中澤さん「出会いは……会社の公式サイトのエントリーページです。履歴書を添付したダイレクトメールが送られてきたんですよ。5ページもある453KBの、熱い履歴書でした。その文章が素敵すぎて、僕は率直に『この人に会ってみたい』と思ったんです。『何でこんな人がうちの会社に魅力を感じて、問い合わせをくれたんだろう?』と」

ーー実際にお会いしてみてどうでしたか?

中澤さん「話してみたら、驚くほど思っていることが一緒でした。我孫子に描きたいと思っているイメージが一緒だったんです。僕自身の力では街おこし程度のことしか思いつかずモヤモヤしていましたから、彼女となら何かすごいことができるんじゃないかと感じ、一緒に活動することにしました」

コンセプトは”ネイバーシップ(地元愛)”

ーー今回のイベントのコンセプトは、どうやって決められたのですか?

大坪さん「私たちが発信したいものを”言語”にして声にしていくために、『我孫子の魅力、素敵な我孫子の街』をまずは絵に表してみました。

たくさんの緑と手賀沼の自然あふれる景色の中に、いろいろな人がいて、みんなの日々の営みがある。絵にしてみて、たくさんの方のお話を聞いていくうちに我孫子のいちばんの魅力は、我孫子に暮らす”人”なのだと確信してきました」

中澤さん「そうですね。同じ”我孫子に暮らす人”が集まっても、それぞれの見る我孫子はまた違った視点があると思うんです。

ですから、お互いの我孫子愛を感じて再確認したり、新しい我孫子の良さを発見したりしてほしい、そんなきっかけを街のあちこちに作っていきたいと思い、”ネイバーシップ(地元愛)”をコンセプトにしました」

イベントタイトル「国際交流文化祭」に込めた意味

ーーイベントのタイトルに『国際交流文化祭』と付けたのは、どうしてですか?

大坪さん「下の世代に伝えていけるような何かを作りたいと思ったとき、コンテンツは我孫子にあるものだけに縛られる必要はないのではないか、と思いました。海外で学習や仕事をしていく機会があり、実際に私も痛感していますが、比較対象があって良さがわかることってあると思っています。

たとえば、我孫子と他の場所を比べてみて、初めて我孫子のいいところに気づくこともあると思うんです。そういう意味で、我孫子と世界を文化で結んでみたら、面白いことが起こるんじゃないか、と。

自分たちも気づかなかった我孫子の良さ、魅力を世界中の人と繋がって一緒に再発見できるんじゃないか、我孫子の子どもたちにそうした感性や感覚を小さいころから体験してもらいたい! と思い『国際交流文化祭』というタイトルをつけました」

ーー初めてイベントを開催することとなったわけですが、どんな点に苦労しましたか?

中澤さん「行政のルールなどもまったくわからなかったので、ひとつひとつ手探りで専門家のドアをたたきながら前に進めました。警察や消防関係のことは、地元の詳しい仲間に聞いたりもしましたね」

イベントを終えて感じたこと、これからの取り組み

ーーイベントを終えて、何か変化はありましたか?

中澤さん「イベントの後、実際にSNSなどからたくさんのコメントをいただいています。『今度何かをするときには協力させてほしい』というような、グローバルでクリエイティブな、新しい感覚を持った地元愛の強い同世代の人たちがどんどん出てきています。

『同じ世代の仲間たちと一緒に、子どもたちがワクワクできるような新しいものを作りたい』と始めたイベントでしたが、多くの魅力、仲間、可能性を見つけ、目的や目指すものが明確になり、ようやくスタートラインについた感じです」

ーー来年2020年はどういった活動をしていく予定ですか?

大坪さん「今年のイベントは、私たちの決意表明のような意味合いも大きかったので、やりたいことを全部詰め込みすぎました。ですので、来年以降はひとつひとつを掘り下げて、しっかりと魅せていきたいと思っています。具体的には、キャンプ(手賀沼の水辺と緑あふれる環境)と文化の発信ですね」

中澤さん「スタートラインにはたどりつきましたが、何をしたいっていう最終ゴールはまだ見えていません。ですが、イベントを開催したことで見えてきたこと、繋がった人、生まれたチャンスはたくさんあります。チャンスが見えたときに自分がやりたいと思ったこと、直感で感じたことをして、”私たちにしかできない街づくり”を情熱をかけて活動し続けていきたいと思います。


新しい何かを作ろうとするとき、古くからあるものを否定しているととらえられることがある。実際に、否定しているつもりはなくても、古くからあるものを魅力に感じないこと=否定のように映ってしまうもの。個々の価値を認め合わずに刹那的に新しいものを作っても、全体として魅力ある街にはならず、それはきっと未来に繋がるものにはならないだろう。

だからこそ、「ネイバーシップ 我孫子国際交流文化祭」のように街に共存する人々がお互いの良さを認め合い、価値感の違いも知りつつ、それでもただそこに一緒にあることができる。そんな人々の集まりが続けられたら、価値観の多様化する社会のなかで、とても平和で魅力的な街になると取材を通して感じた。

「ネイバーシップ 我孫子国際交流文化祭」を主催する「Abiko A-life」の公式ページはこちら

撮影/小川迪裕、Abiko A-life 文/安井直子

【Profile/安井直子(ヤスイナオコ)】

整理収納アドバイザー、一般社団法人 日本オートキャンプ協会キャンプコーディネーター、ライター。母と子のためのアウトドアイベント「Campeena(キャンピーナ)」代表。主に家族とキャンプについて執筆している。


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