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10年前の古いスノーボードはまだ使える?ヴィクトリア本店で店員さんに聞いてみた

古いスノーボードを使いたい

日本でスノーボードブームが巻き起こったのは1990年代だった。以来、冬のレジャーとして定着したスノーボードだが、最近は親子連れでゲレンデに戻ってくる方が少なくないと聞く。自宅に昔の道具はあるけれど、初心者のまま10年間は出かけていないなんてボーダーのために、最新のスノーボード事情をご紹介しよう。第1回は、ウインタースポーツのギアを多数取り揃えるヴィクトリア本店で最新事情を聞いた。

ヴィクトリア本店
住所 東京都千代田区神田小川町3-4
TEL 03-3295-2955
営業時間 平日・土曜 11:00~20:00、日曜・祝日 10:30~19:30 (2019年2月11日までは冬季営業時間につき、平日・土曜 11:00~20:30、日曜・祝日 10:30~20:00)
http://www.victoria.co.jp/victoria/

10年前のスノーボードは使うと危険

物置に片づけたままの10年前の板やブーツ。お気に入りだっただけに、使いたいのは当然だ。まずは、ヴィクトリア本店の松井 洋さんに、10年前の道具が使えるのかを聞いたところ、「10年前のボード、ブーツ、ビンディングは使えないと思ってください」と一刀両断の回答が。

「一般的にこれらの道具は3~4年で劣化が始まると言われています。古い道具は使用中に割れる可能性があり、危険なので使わないほうがよいでしょう」(松井さん、以下同)

聞けば、ずっと室内で保管されていた板を、突然、極寒の環境に持ち出すことで割れる場合もあるとのこと。どうしても諦められない方は、ヴィクトリア本店でチェックもしてもらえるので、一度、点検してもらうのがよいだろう(下取りも実施中)。他店で購入したものでも構わないそうなので、古い道具をお持ちなら安全のためにも、ぜひ足を運んでほしい。

【板の最新事情】楽しみ方が細分化し、ボードの形状が多彩に

ヴィクトリア本店には最新のギアがずらり。品ぞろえは都内でも最大級を誇るという。そんな店頭で、あれこれと拝見しつつ、肝心の板の最新事情を聞いてみた。

まず、理解しなくてはいけないのは、10年前に比べると圧倒的に板の形状のバリエーションが増えたことだそう。板の湾曲するポイントに加え、前後の長さのバランスなどのバリエーションがとても豊富になっている。

ずらりと並ぶなかから、初心者が自分に最適な道具を選ぶには、スタッフの助言に従うのが賢明

「昔はほぼキャンバーだけでした」

キャンバーとは、側面から見たとき、中央が山のようになだらかに盛り上がり、両端の先端が少し上に持ち上がった形状のボードのこと。もっとも多く出回っている定番の形状だ。

キャンバーボードの場合、2点が雪面に接地する形状である。現在は山が二つあり、3点で接地するダブルキャンバー、全体が平坦なフラットロッカー、先端の両脇以外が接地する3Dキャンパーなどがある。

以下では基本的な形状の板を紹介する。

フラットロッカー


パークでの使用に向いている。トリックに使えて、エッジが引っ掛かりにくいことから、ビギナーにもOK。

Sロッカー(各メーカーによって呼び名が異なります)


ノーズを長くし、重心を後方にずらしたパウダースノーに適した構造。いわゆるパウダーボードと呼ばれる。

ダブルキャンバー


ターンのきっかけが掴みやすく、回転性に優れており流行りのグラトリスタイルにもおすすめ。浮力もあるのでサイドカントリー等のパウダーライドも期待できる

ハイブリッドキャンバー


キャンバーとロッカーのいいところを持ち合わせたオールラウンドなモデル。

今はこんなに増えている! ボードのバリエーションをご紹介

また、シェイプ(板を真上から見たときのアウトラインのことを指す)もさまざまだ。前足から先端までをノーズ、後ろ足から後端までをノーズと言い、全体の長さのバランスは、大きく分けて3タイプ。

ディレクショナル


ノーズとテールが異なる形状、長さ。前が長め、後ろが短めに設定されていて、進行方向への進行性・安定性が優れている。不慣れな方でもOKで、オールラウンドにライドできるシェイプ。

ツイン


ノーズとテールが同じ形状で均等な長さ。重心も中央に設定されている。高速でカービングするよりも飛んだり回ったりしたいスノーボーダーに向いている。

ディレクショナルツイン


前後の形状は同じでノーズが少し長い。重心がやや後ろに設定されている。安定感がありながら、取り回しやすいのでトリックをしたい方に◎。

ジャンプやトリックよりカービング

「いまは飛んだり跳ねたりする楽しみに加えて、フリーライドでカービングをしたいニーズが増えてきました。山の斜面でバンクドスラロームなど、カービングがトレンドになっているんです。また、少子高齢化の影響で、年配になっても楽しめるアルペンボードが微増していますね。カービングを楽しむ人にとってはアルペンが究極の形でもあります」

若いころはパークでジャンプをしていたスノーボーダーたちも年齢を重ねて久しぶりに戻ってくると、体力的なことも理由のひとつだが、原点とも言えるフリーライディングで滑る行為そのものを楽しむ傾向が見えるという。

もし、10年ぶりにスノーボードを再開してみたいと思っている人向けのボードを尋ねたところ、「ハイブリッド、ディレクショナル、Sロッカーがオススメ」と松井さん。

いずれも浮力が得やすく、滑りやすさを高めてくれる構造なので、久しぶりにゲレンデに戻る人にオススメなのも納得できる。特にパウダースノーで滑ることを想定しているならチェックしてみてほしい。

ヴィクトリア本店の店頭の様子。各ボードには「ツイン、キャンバー」など形状について説明が書いてあるので、参考にしたい

パウダーボードの人気が高まっている

アメリカやオーストラリアでの人気が波及して、バックカントリーなど、フワフワの新雪を滑るパウダーボードの注目度が以前よりも高いそうだ。

「10年前は、いまほどパウダーボードが充実していませんでした。深い新雪を進むので、幅が広いディレクショナル形状で、ノーズが浮くように(板の前方が)長め、さらにノーズがワイドでテールが細くなっている『テーパードシェイプ』なのが特徴です。パウダー用にビンディング、ブーツも変わりました」

ただし、バックカントリーには、スコップ、ゾンデ棒、スノーシュー、ビーコンなど安全のための装備が必需品であることを覚えておきたい。

JONESはパウダーボードで知られるブランド

バックカントリー用の必需品も、ヴィクトリア本店には用意されている

COLUMN

ハンマーボートも知っておきたい

先端が張り出した形状のハンマーボードは、2006年のトリノ五輪の頃から目立ってきたボード。

「雪に接するエッジが長いのでグリップ力が高いのが特徴。より強烈なカーブを求める人に向いています。ハンマーはアルペンよりも、価格設定が低めなので始めやすいですよ」

ハンマーボードは先端の左右への張り出しが広く、両端の丸みが小さいのが特徴。先端の左右の張り出しが大きいことで側部の接地部分が大きくなる。

【ビンディングの最新事情】イージーエントリーシステムって?

ブーツを板に固定するビンディングは、ボード同様に楽しみ方に合わせて、バリエーションが細分化している。たとえば、以前からあったものではあるが、着脱の安易なイージーエントリーシステムが増えてきた。

昔のビンディングは背面に足を添えて甲と足首をベルトで固定するものだった。イージーエントリーシステムは背面が後方に倒れる構造になっていて、着脱は足をベルトに差し入れて背面をロックするだけと至って簡単だ。これなら雪に埋まってしまった場合にも脱出しやすいという。そして、全般に10年前に比べ、ビンディング自体が軽くなっていることがあげられる。軽くなったことで、ショートターンがラクになる効果がある。

イージーエントリーシステム。使用時は右足の状態で、脱着時は背面が後ろに大きく開く設計だ(左脚の状態)。装着時は背もたれのヒンジを持ち上げると、ワンタッチでロックできる

また、構造以外ではパウダー用として、「FLUX」ではベースが硬く、背面が柔軟で足首の可動域を広げ自由度を高めたモデルを展開中。

「FLUX」のパウダーボードに最適なビンディング。柔軟な背面(ハイバック)が特徴だ

【ブーツの最新事情】より増えた脱着簡単なBoa®️

ダイヤルでワイヤーを締めてフィット具合を調整できるBoa®️システム。ブーツでもBoa®️搭載モデルをご存知の方は多いと思う。簡単にブーツを足にフィットさせられるシステムだ。10年前にもすでに普及していたが、いまはさらに増えている。

最近は、フロントと側面に2つのダイヤルを搭載しているダブルBoa®️モデルが増えてきているという。ダイヤルの数が多くなったことで、より細やかにフィット具合を調整できるのでオススメ。

Boa®️を搭載したブーツ。写真は、昔からBoa®️に力を入れていた「バートン」のもの

「かつてはワイヤーが切れるトラブルもありましたが、現在は格段に故障が減っています」

一方で、昔ながらのレース(ひも)で引き締めるものも健在。こちらはクイックレースといって、引き締めの容易なものが主流。松井さんによるとレースタイプには、部分的に閉め具合を調節できる利点があるという。

現在は、ボードとビンディング同様に、パウダーへの需要が高まっていることから、パウダー専用ブーツ登場している。適度な弾力と軽さ、ソールのエッジがラウンドした形状など、より柔軟な装着感を実現させる工夫がされている。

「サロモン」のクイックレースタイプのモデル。写真のように、ヒモを上部に引き上げると簡単に引き締めができる

子どもと一緒にスノーボードへ行く際に注意したいこと

 と、ここまでは、久しぶりにスノーボードに復帰しようとした初心者に向けた情報をお送りした。この先は、ゲレンデから遠ざかっている間に、子どもが生まれたので、ぜひ親子で雪山へ出かけたいという読者に向けた情報をお届けしたい。

最近のキッズ、ジュニアのスノーボード事情についていえば、大人と同じく、ボードの形状が多様化したことがあげられる。ヴィクトリア本店では、子どもでも基本的な滑走の楽しさのほか、レベルアップを図れる上級モデルも用意されている。

ジュニアのボード。写真のモデルは、ノーズとテールの接雪抵抗が少なく、操作性が高いロッカーボード。素早い上達が期待できる

成長が早い子どもの場合、ジャストサイズではなく少し大きめのブーツを買う親御さんが多いそうだ。こちらは「バートン」のキッズ用。写真はベルクロ留めのタイプだが、子ども用でもBoa®搭載モデルが人気。また、上級用のクイックレースも増えてきている。

子どもの安全対策位は「つまさきまもるくん」がおすすめ

ゲレンデデビューをする子連れスノーボーダーが、とにかく心配なのは子どものケガ。安全のための装備をひととおりご紹介しよう。

成長を見越して大きめのブーツを買う場合、ブーツが足の実寸よりも1.5cm~2cmほど大きいこともある。その場合は、すき間を埋められる「つまさき まもるくん」がオススメ。ジュニア用品を担当するマネージャーの遠藤利雄さんによるとブーツの買い替えは2シーズンが目安とのこと。

インソールの試着用サンプル。実際に試すとホールド感の違いに驚く人も多い

「ボードの機能性を生かすには足元のぐらつきを抑える必要があります。そのため、インソールはよく売れます」(遠藤さん)。成長期の子どもの足首保護のためにも大事なアイテムだ。保護インソールが安定性をもたらすことで、疲れにくくなる利点もある。

遠藤さんが「上達に役立つ便利グッズ」と説明するのがハーネス(コーチベルト)。後ろから滑り方や曲がる方向などの指示が伝えやすく、子どもが止まれなくなったときにも、これをつけておけば安心だ。

ひざや腰、ヒップなどを転倒時の衝撃から守る、各種のプロテクターは最近人気が高い。パークに入る子どもには特に重要。

「この2年、急に需要が増えて、2年続けて売れ行きが倍増しています」(遠藤さん)と言うのが、ヘルメット。現在、子連れのお客様は買う人がほとんどだそう。昔との違いは、バイザー付きが普及したこと。これならゴーグルが不要でなくす心配がないうえに、ゴーグル以上に視界が広いのがポイント。


今回の最新事情でご紹介したとおり、10年前に比べると、スノーボードの楽しみ方の幅は大きく広がっている。初心者のまま、長らく遠ざかっていたというあなた。また雪山に出かければ、新鮮な気持ちでスノーボードのさらなる楽しさに気づくことができるのではないだろうか。今企画では、このあとも、スノーボードの最新事情をお伝えしていくので、あわせてぜひお読みいただきたい。
短期集中連載【10年ぶりにスノーボード】第2回記事はこちら>>【10年ぶりのスノーボードで古いウェアって使えるの?】

短期集中連載【10年ぶりのスノーボード】第3回記事はこちら>>【10年ぶりのスノーボードでいまどきのスキー場ってどうなってるの?】

文・写真/T.Kawata

※この記事は2019年の記事を再編集して再掲したものです。


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