グランストリーム代表/大瀬志郎さんインタビュー その1
大手アウトドア輸入代理店を退職し、都会を離れ滋賀県に移住、シーカヤックガイドとしてグランストリームを営む大瀬志郎さん。
大瀬さんがメインで扱うのは現代版スキンカヤックであるフェザークラフト。
スキンカヤックはその昔、北極圏で誕生した木を使った骨組みと革の外殻で形成された現在のシーカヤックの原型となった乗り物。
スキンカヤックは海に生きる動物のようにしなやかな躯体で、狩猟の道具として何千年ものあいだ活躍してきた。そのスキンカヤックを現代的に解釈し、ジュラルミンの骨組みとナイロンやウレタンの外殻で作り上げたのが、フェザークラフトのダグラス・シンプソンだった。
1970年代後半に誕生したフェザークラフトの特長としてあげられるのが、スキンカヤックの性能を持ちながら、折りたたんでパッキングできること。海、川、湖だけでなく、家を出る瞬間から旅の友として、いつでも一緒にいる存在。
そんなフェザークラフトに大瀬さんは魅了され、人生の半分をフェザークラフトに費やしてきた。
移住先である滋賀県高島市マキノ町に根を下ろし、フェザークラフトを使った活動を続けている。その大瀬さんと古くから付き合いのあるcazual編集部スタッフが、グランストリームの活動を伺った。
cazual編集部(以下、c)グランストリームを創業したのっていつごろ?
大瀬さん(以下、大) マキノに移住したのが、ちょうど10年前。その前の6年間は店舗なしでやってたから、グランストリーム創業は16年前。
c 店舗なしってことは、ウェブショップということ?
大 クルマが移動店舗みたいなもんで、あとはホームページと口コミだけ。
c そもそもアウトドア業界に入るきっかけは?
大 大学4年のときに野田知佑さんの単行本を読んで、「コレや!」って思ったの、単純に。
仕事というより、とにかく外国へ行きたかった。
色々考えてると、いきなり行くんじゃなくて、海外とのコネクションを持ちたいと思って、だったら輸入元で働くのがいいんじゃないかと思った。それで就職活動は、アウトドアの輸入元を探して。
野田さんの本には、旅のカヤックはフェザークラフトがイイと書いてあるし、フェザークラフトはカナダ製だし、フェザークラフトを輸入してるエイアンドエフって会社は、当時グレゴリーの輸入元でもある。だからもう「ココや! エイアンドエフや!」って(笑)。
-エイアンドエフはすでに創業40周年を超えた、大手のアウトドア輸入代理店。数多くのブランドを輸入する代理店業務だけでなく、全国に25店舗の直営ショップを持ち、オリジナル製品も開発・販売している-
c 単行本でアウトドアの世界に興味を持ち、いきなりエイアンドエフを狙ったの(笑)?
大 そのころはエイアンドエフの規模は小さくて、そういうのもよかった。
デカイ企業だと単なる歯車になりそうだけど、規模が小さいところだと色々な仕事を早く覚えられると思って。
c エイアンドエフ1本狙い?
大 ゴールドウインも受けた。
c ゴールドウインは、いまも当時も大企業。早く仕事を覚えるために、規模が小さいところを狙ってたんじゃないの(笑)?
大 「雇ってください」ってエイアンドエフの門を叩いたわけよ。そしたら、「うちは新卒をとらん」って言われた。
就職活動してたのがバブルのはじけた年で、当時新規採用してたアウトドア会社は、モンベルとゴールドウインだけ。
ゴールドウインには1つ上の大学の先輩がいて、それがめっちゃ可愛い子やった。その先輩がリクルーターみたいなことをやってくれて、ゴールドウインを紹介してくれてるうちに、なんかその子を好きになってしまって……。
一度心に決めたエイアンドエフ第一志望を覆して、フェザークラフトより先輩のいるゴールドウイン行きたくなった(笑)。
でも入社試験受けたら筆記で落ちて、しかたないからエイアンドエフに行って、「雇ってくれ、雇ってくれ」ってしつこくお願いしてたら、当時の社長が根負けして雇ってくれた。
c 大学卒業と同時に、エイアンドエフに就職できた?
大 入れた。だから仕事しないでどっかへ放浪してたとか、そういう時期はない。すぐそのまま趣味と実益が一緒になった。
c 就職するまでフェザークラフトがどんなもんだって知ってた?
大 知らんよ。でも野田さんがイイって言ってて。
なんでか知らないけど、会ったこともない野田さんを信用したんよ。
当時は、シーカヤックって言葉も知らんかった。
c シーカヤックって言葉も、メジャーじゃない時代?
大 ないよ。アウトドアに興味があっても、そんなん知らんかったもん。当時は川下りの時代。フェザークラフトも海では使わず、野田さんみたいに川下り。
c エイアンドエフを辞めたのは、何歳のとき?
大 2001年だから、30歳。
c なんで会社を辞めて、移住しようと考えたの?
大 ダグの影響が大きかった。
c 野田さんでフェザークラフトを知り、次はダグラス・シンプソン?
大 そう(笑)。
ダグがオフィスまでフェザークラフトで通勤してるのを見たら、『こういう生活が送りたい!』って思った。
そのほかにも、オーストラリアにバックパッキングに行ったとき、キャンプ場からスーツ着て会社へ通うサラリーマンとかにも遭遇して、『こういうのもアリなんや!』って衝撃を受けた。
日常にフェザークラフトを取り入れたかったから、できるだけ水の近いところに住んで、そこからフェザークラフトで仕事場に通うってことがしたかったから、移住しようって。
ついに望んで入社したアウトドア輸入代理店を退職することにした。
グランストリーム代表/大瀬志郎さんインタビュー その2
「フェザークラフトのある日常を求めて移住することにしたシーカヤックガイド」へ続く
グランストリーム
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