平成30年7月豪雨も記憶に新しいが、大気が不安定になりやすい8月はゲリラ豪雨の発生がもっとも多いと言われる時期だ。さらに秋にかけてが台風も次々とやってくる。夏から秋はレジャーシーズンということでアウトドアを楽しむ人も増えるが、雨に対して正しい知識を得ることで、豪雨対策もより万全になるはずだ。
そこで、一般財団法人・日本気象協会が運営する天気予報専門メディア『tenki.jp』が『tenki.jpラボ』にて実施した「ゲリラ豪雨に関するアンケート調査」(※)の結果をもとに豪雨にまつわる素朴な疑問をひもといていく。
全国1000人にアンケート! ゲリラ豪雨の認知度はほぼ100%!
「ゲリラ豪雨」という言葉を聞いたことがある人は97.2%と、ほぼ全員が知っているという結果に。実は「ゲリラ豪雨」は正式な気象用語ではない。ここ数年の異常気象のニュースが激増していることもあり、やはりかなりの浸透度だと判明。
「ゲリラ豪雨」は、一般に「局地的大雨」と呼ばれている。これは気象用語で「局地的大雨/急に強く降り、数十分の短時間に狭い範囲に数十mm程度の雨量をもたらす雨」のことだ。
次に、「ゲリラ豪雨」に遭遇したことがあるかと聞いた設問では、何度も遭遇した人は半数以上いて、一度の人も合わせると72.3%という結果になった。この時期は、報道などで目にする機会も多いが、かなりの人がゲリラ豪雨に遭遇していることがわかった。
「ゲリラ豪雨」の強さは、「傘があってもびしょ濡れになってしまうような雨」を半数以上がイメージ
「ゲリラ豪雨」は感覚的にどんな雨かをたずねたところ、53.0%とダントツで多かったのが「傘があってもびしょ濡れになってしまうような突然の雨」というもの。ついで、全体の1/4が答えたのが「恐怖を感じて外に出られないような突然の雨」。約8割の人が傘では防げないほどの強い雨で濡れるのは不可避の現象というようなイメージを持っているようだ。
「ゲリラ豪雨」の特徴は?
「ゲリラ豪雨とは、強い雨だけでなく、雷が鳴ったりひょうが降ったり、場合によっては竜巻まで発生することもある非常に危険な自然現象です」
そう教えてくれたのは日本機予報士会の理事で副会長の平松信昭さんだ。そして、ゲリラ豪雨は積乱雲が原因で発生すると言われている。そう、夏の空によく見られるもくもくと発達した、あの雲だ。
「実は積乱雲にもいろいろな種類があり、特に大きな被害をもたらす積乱雲は、『スーパーセル型積乱雲』や『マルチセル型積乱雲』と呼ばれる特殊な積乱雲です」
通常、単体の積乱雲は30分から1時間くらいで消滅してしまうというが、これらの積乱雲が異なるという。
「『スーパーセル型積乱雲』は上昇気流が起こる場所と下降気流が起こる場所が分離し、単体の積乱雲でも寿命が長くなります。また、『マルチセル型積乱雲』は次々と新たな積乱雲が発生し、複数の積乱雲が列になって、積乱雲の移動方向の後方に新たに積乱雲が生まれるため同じ場所で猛烈な雨が継続し、ゲリラ豪雨になります」
ゲリラ豪雨に遭遇したら? 「濡れる覚悟で行動する」人が1割!
いつどこで遭遇するか予測が難しい「ゲリラ豪雨」だが、外出先で遭遇してしまった場合、どう行動するかを調査。屋根のあるところで待ったり、カフェで時間をつぶしたり、ウィンドウショッピングをしたり、やむまで外に出ないと答えた人は、全体の約7割となった。ゲリラ豪雨に対して、傘があまり意味がないとイメージしている人が半数以上いることもあり、遭遇してしまったら屋内待機を選ぶ人が大半だ。
しかし、1割の人が「濡れる覚悟で予定どおり移動する」と答えている。1時間に満たない短時間でも、突然数十ミリの雨が降ると、視界を確保しづらく、路面状況も悪くなってしまう。ここ数年の豪雨災害からもわかるように、自身の想定を上回ることも見越して、どう行動するか考えるべきだ。
降水量を甘く見がち 75.6%の人が雨の強さを過小評価!
降水量が1時間に50〜80ミリと聞いて、どのくらいの強さをイメージするかの調査結果も興味深い。その回答は「バケツをひっくり返したように降り、道路が川のようになる」が43.7%でもっとも多く、次いで「どしゃ降りで、傘をさしていても濡れる」が26.5%だった。
実は、降水量50~80ミリは気象用語として「非常に激しい雨」に分類され、この雨を体感すると「滝のようにゴーゴーと降り続き、傘はまったく役に立たなくなる」と言われている。降水量から想像するイメージと、実際の雨の強さが合っていた人は17.3%と2割にも満たず、なんと7割以上の人が雨の強さを過小評価していることがわかった。
「強い雨」「猛烈な雨」 天気予報でよく聞く雨の強さを動画でチェック
天気予報で耳にする雨の強さや降り方は、ある基準があり、気象庁が定義している。その定義を参考に「tenki.jp ラボ」が雨の強さを解説する動画を制作。まずは「ゲリラ豪雨」とも言われる局地的大雨の強さを見てほしい。数十ミリの雨量ということなので「非常に激しい雨(1時間あたり50ミリ以上80ミリ未満の雨」を例に出す。
非常に激しい雨
<雨の強さ(1時間あたりの降水量)> 50ミリ以上80ミリ未満
<降雨の状況> 滝のようにゴーゴーと降り続き、傘は役に立たない。水しぶきであたり一面が白っぽくなり、視界が悪くなる
雨が激しく地面に打ちつけられていて、滝の近くにでもいるようなゴーゴーとした荒々しい音もしている。ゲリラ豪雨は短時間でこのような雨が降り、瞬間的により激しくなることもある。そのうえ、雨だけでなく、落雷や突風の恐れもあるので、無理に行動するのは危険が伴うのでやめたほうがよい。
やや強い雨
<雨の強さ(1時間あたりの降水量)> 10 ミリ以上20 ミリ未満
<降雨の状況> ザーザーと降り、足元が濡れる。地面一面に水たまりができる。
強い雨
<雨の強さ(1時間あたりの降水量)> 0ミリ以上30ミリ未満
<降雨の状況> どしゃ降りで、傘をさしていても濡れる。地面一面に水たまりができる。
激しい雨
<雨の強さ(1時間あたりの降水量)> 30ミリ以上50ミリ未満
<降雨の状況> バケツをひっくり返したように降り、道路が川のよう。
猛烈な雨
<雨の強さ(1時間あたりの降水量)> 80ミリ以上
<降雨の状況> 息苦しくなるような圧迫感で外に出られない。水しぶきであたり一面が白っぽくなり、視界が悪くなる
ゲリラ豪雨から身を守るためには?
「ゲリラ豪雨の発生に備えるには、”大気の不安定性”がキーワードです。”大気の状態が不安定”とは、上空に冷たい空気があり、地上には暖かい空気がある状態をいいます」
大気が不安定だと積乱雲が発生しやすく、ゲリラ豪雨の可能性も高まるのだ。なので、天気予報で”大気が不安定”というワードが出てきたら要注意だ。しかし、可能性はわかっていても、正確にいつどこで発生するかの予測するのは難しい。ゲリラ豪雨に遭遇してしまったらどうすればいいのだろうか。
「屋外にいる場合は、地下室など水が溜まりやすい場所を避けて、建物の中に避難するのが一番です。また、車を運転している場合は徐行運転するなど、無理のない安全運転を心がけましょう。アンダーパスなどに雨水が溜まっている場合がありますので、アンダーパスは通行せず迂回するなどの安全を優先した行動を取ってほしいです。
また、河川の近くでは、その場所で降っていなくても、上流でゲリラ豪雨が発生している場合、瞬く間に河川の水位が上がる可能性があります。近くに暗い灰色やどす黒い雲がある場合は、近くでゲリラ豪雨が発生している可能性がありますので、河川から離れるようにしましょう」(平松さん)
アンケートでは「1割の人が濡れる覚悟で行動する」と答えたが、「ゲリラ豪雨」は、少し待つことで雨脚が弱まることがあるので、雨宿りして雨雲が通り過ぎるのを待つのが賢明だろう。雨雲の動きを教えてくれるウェブサイトもあるので、それらをチェックするのもおすすめ。とにかく絶対に無理や油断は禁物だ。
最新の天気や雨雲の状況を確認できる「tenki.jp」ウェブサービス
「tenki.jp ラボ」https://tenki.jp/suppl/entries/8/
「雨雲の動き」https://tenki.jp/radar/rainmesh.html
「豪雨レーダー」https://tenki.jp/map/
※ゲリラ豪雨に関するアンケート調査 調査概要
【調査対象】全国の20代~50代 合計1000名
【調査方法】インターネット調査(調査会社の登録モニター活用)
【調査期間】2018年6月18日(月)~6月20日(水)