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【移住初心者必見】宮崎県小林市での町の取り組みと協力隊制度の魅力を元協力隊が伝授

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cazualチームは宮崎県小林市で2週間のプチ移住生活を体験し、そこで出会った素敵な人やアクティビティ、暮らし心地をレポートするシリーズ記事を展開している。

小林市をさまざまな角度から掘り下げるシリーズ記事3回目に登場する移住者は甲斐崇悟(しょうご)さん(37歳)だ。

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宮崎県小林市で地域おこし協力隊として活動していた甲斐さんは、「こばやしマルシェ」実行委員長にして同じく地域おこし協力隊の青野雄介さんとともに2018年2月に起業を果たし、小林市の中心部にあるTENAMU(テナム)交流スペースの運営を行なっている。

そんな甲斐さんは、小林市のことを詳しく知らずに移住してきた人物。どんな縁があって小林市にやってきたのだろうか。


偶然目にした市の人材募集を見て料理人として移住

cazual編集部(以下、) 甲斐さんはいつごろ、どんな経緯で小林市に移り住んだんですか?

甲斐さん(以下、) 僕は1年半ちょっと前ぐらいに愛知県の名古屋から移住して(編注:2016年10月に小林市に移住)、地域おこし協力隊になりました。

 名古屋のような大都市から地方に来ると、不便だったり面倒なことはなかったですか?

 ゴミの分別くらい(笑)。もう慣れましたけど。

 たしかにあの細かなゴミの分別は、慣れないと面倒ですよね(笑)。

 僕にとって小林市は、ちょうどいい都市感だったんですよ。堤地区というところに行けば買い物には困らない。だけどクルマで10分も走ったらもう山奥(笑)。

移住を考えている人の中には、すごい田舎で暮らしたいという方がいらっしゃると思うんですけど、僕はそこまでの田舎暮らしの希望は持っておらず、買い物に行くのにクルマで1時間以上かかるとか、本当の限界集落と言われる田舎に来てしまうと生活できないと思うんですよ。小林市はちょうどいい田舎感。生活するのにいっさい困らない。田舎住まいをしたい方のファーストチョイスとしては、すごくいい場所だと思います。

それに、小林市の人は移住者に対してオープンというか、受け入れてくれるんですよ。「移住者なんです」と挨拶すれば、「そうなの〜? どこから?」みたいに向こうからどんどんいろんなこと聞いてくれて、すぐ仲良くなれる。土地柄なんですかね。だからすごく移住者にとってはいい街だと思います。

 なぜ小林市に?

 本当に偶然なんですけど、前職を辞めて仕事を探してるときに、市が「調理師免許をお持ちの方を募集」っておもしろい募集をしてたんですよ。普通に考えて、行政が調理師免許を持った方の募集なんて、求人をかけたりしないじゃないですか。それで興味を持ったのが最初のきっかけです。

 ということは、甲斐さんは調理師免許を持ってたっていうことですか?

 はい。フランス料理だったり、イタリア料理だったり、魚の勉強しようと思って市場の仲卸で働いたこともあります。調理師として20年が経ちます。

 たまたま仕事を辞めたタイミングで小林市の募集を見た?

 そうです。それで、受けてみたら受かった(笑)。

何も知らずに移住したけど小林市と自分がマッチしてよかった(笑)

 小林市について調べたりはしなかったんですか?

 書類選考用の書類を持って来たときが初小林市です。そのときに、街をちょっと見たくらいですね。

 何があるとか、どんなことができるとか、まったく調べないで移住ですか?

 移住担当の方からいただいた市のパンフレットを読んで「へ〜、小林市ってそうなんだぁ」ぐらいの感じですね。正直な話、当時は調理師の仕事ができれば、どこでもよかったっていうのはあります(笑)。ただ、何も考えずに移住してみて、結果的に小林市と自分がマッチしたのでよかったなって思いますよ、今では(笑)。

 地域おこし協力隊の制度は知ってたんですか?

 まったく知らなかったです。僕は小林市に就職したものだと思ってたくらいなんで(笑)。

地域おこし協力隊制度が総務省にあるなんて知らないのに、それに応募してました。それで、入ってから「そういう仕組みだったんですねぇ」っていうくらい。でも、制度が先じゃなくて、その土地に住みたい、そこで働きたいっていう思いから、制度を使ってる人が多いとは思います。

 じゃあ単純に、料理人を募集してるから小林市に来てみたって感じですか?

 僕の場合は、仮に地域おこし協力隊を卒業したとしても、また別のどこかの店で働けばいいやくらいに思ってたんです。

 でも実際には、地域おこし協力隊の3年満期卒業を待たずして、起業したんですよね?

 地域おこし協力隊の活動をしているなかでいろんなご縁があって、同僚の地域おこし協力隊だった青野と「株式会社 BRIDGE the gap(ブリッジ ザ ギャップ)」という地域商社を立ち上げることになったんです。この社名の由来は、差を埋めるとか、ギャップを埋めるという意味なんです。

じゃあ「何の差?」というと、僕がこっちに来ていちばん思ったのは物価が安いこと。都会とまったく違うんですよね。クレソンなんて、都会だと小林市の3倍くらいの値段で売ってますよ。小林の農家さん全般に言えるんですけど、ちょっと安く売りすぎているというか。流通の問題もあるとは思いますけど、いい素材を作ってるのにもったいなぁと感じていました。

だから食材を単体で売るのでなく、僕みたいな料理人が加工品にして、それを都会にプロモーションするのが現実味があるのかなと。やっぱりものには適正な価格があると思うんです。そんなギャップを埋めるのが、僕のやるべき仕事だと今は考えてます。

TENAMU交流スペースは新たなつながりやチャレンジが生まれる場所

TENAMU交流スペースは市民のリクエストを吸い上げ、イベントが開催される。いつの日か、カレンダーが予定でいっぱいに埋まるかも。

準備期間わずか3か月でオープンしたTENAMU(テナム)交流スペース。「てなむ」とは、小林市の方言である西諸弁で「一緒に」という意味を持つ。ここで一緒に交流することで、なにか新しいことが始まれば、そんな思いから動き始めたプロジェクト。

甲斐さんと青野さんが交流したことによって、小林市に新しいムーブメントが始動した。

c 運営しているTENAMU(テナム)交流スペースはどういうコンセプトの施設なんですか?

 小林市民の方がここでつながりをつくり、そこで何かが生まれ、新しく何かがはじまって、生活に少しでも潤いが出たり、楽しくなったりしたらいいなというのがそもそものコンセプト。

みんなが自由に使えるスペースなんですけど、僕ら運営側がちょっとしたイベントを開いていくことで、今まで出会えなかった方とのつながりができて、そこで新しい発見だったり、喜びだったりを作っていこうというところから、この場所がスタートしています。

 このTENAMU交流スペースはいつオープンしたんですか?

 2017年12月10日です。

 準備期間は?

 その年の9月からです。もともとは青野のほうにTENAMU交流スペースの話が来たのですが、そのとき青野が「やっぱり食が大事だ」と考えて、「一緒にどうですか?」と声をかけてもらったんです。

 なるほど。それで青野さんと一緒に「株式会社 BRIDGE the gap」を立ち上げることになったんですね。ここでは、さっきおっしゃってた「食」に関して、どんな新しいつながりや新しい発見ができるようになってますか?

 交流スペースには業務用のキッチンがついたカフェがあります。たとえば、小林市民の方が飲食店を開きたいと思ったとき、開業体験のためのチャレンジカフェとして借りられる「フード・ラボ」という仕組みをとっています。

 それはおもしろい!

飲食店の開業はハードルが高い。自分の腕にニーズがあるのかチャレンジできるのが「フード・ラボ」の役割。

 なぜそういう仕組みを考えたかというと、飲食店の開業はものすごくお金がいっぱいかかるんですよ。厨房器具だったり、店内の改装費だったり。

いい料理を持ってて、それを売りたいとなっても飲食店の開業には、何百万円、場合によっては何千万円もかかってしまう。自分が提供する料理が人にウケるかウケないか、開業してみるまでわからない。飲食店をやってみたいけどそんな大きなリスクを背負ってまで挑戦できないよって方がたぶんほとんどなんです。

でも「フード・ラボ」では業務用キッチンを、1時間500円で貸し出してる。そうすると、自分が持ってる料理の腕やアイデアを試せるわけです。お客さんの反応を見て、「やっていけそうだ」という感触を持ってから開業を目指せばリスクが減る。今、僕と青野が考えているのは、小林の中心市街地を食のチャレンジに特化した街にしたいということ。

いま計画してるのが、製造許可を持ったテストキッチンみたいなところ。その製品の販売経路はコワーキングスペース「TENOSSE(テノッセ)」。そしてTENAMU交流スペースの「フード・ラボ」は、飲食店開業を目指している人がチャレンジできる飲食店。加工品販売やレストランなど食のどの場面でもチャレンジがしやすい環境が整うんです。

「フード・ラボ」ではカフェスペースも併設している。誰かがチャレンジしていなくても、甲斐さん発案の飲食が楽しめる。

カフェスペースでは、軽食のほか、アルコール類も提供している。このフレンチトーストはぜいたくなトッピングでおいしかった!

人と人とのつながりを生み出す3つの仕組み

 「交流スペース」と「フード・ラボ」のほかに、何があるんですか?

 木育キッズスペース「もくもく」があり、3つのゾーンで構成されています。「交流スペース」では「まちライブラリー」という市民が本を持ち寄り、それを施設利用者が借りることができる機能も備えています。

2017年12月のオープン以来、寄贈だけでたくさんの本が集まった。本を通して、見えない交流が始まる。

「まちライブラリー」の本はすべて市民の方の寄贈。だから1冊も買っていません。今、4,000冊くらいの蔵書があり、本があるということで市民の方に足を運んでもらえます。そうすると、ここに来た方たちに新しいつながりができています。

木育キッズスペース「もくもく」では、子育て中の親同士はもちろん、子どもたちの交流も育まれる。

「もくもく」では子どもを連れて来たお母さんたちのなかでつながりができますし、「フード・ラボ」では生産者同士のつながりができる。その異なる3タイプの方々がTENAMU交流スペースでつながるんです。

 ここはなんだか、素敵なつながりと新しいムーブメントが起きそうな場所ですね。

 Wi-Fiも飛んでいてコンセントもあるので、仕事もここでできます。たとえば飲食じゃない、ワークショップなどもできます。ワークショップなどで占有する場合は、低料金で占有できるんですよ。いろいろ試して市民の反応を見ることもできます。仕事をしてもらっても、なにかのPRをしてもらってもかまいません。使い方は自由です。

あと、交流スペースの入り口付近にホワイトボードがあって、ここで何をしたい、何を開催してもらいたいってリクエストが書けるんですよ。それを僕らスタッフと利用者が協力しながら叶えていく取り組みもしています。

高校生からのリクエストが多いフリーマーケットはすでに開催された。大人からは婚活イベントのリクエストも。

たとえば高校生からフリマをやりたいというリクエストがあったから、フリマを開催したりとか。ボートゲームナイトなんかもそうですね。これは婚活イベントみたいなものなんですけど、そういったリクエストもあります。

今まで小林市ではやっていなかったようなイベントを開催することができるので、今後どういうふうに転がっていくのか楽しみだと、運営側として思ってます。

どう転ぶかわからないのが地方だと思う

TENAMU(テナム)交流スペースに続き、コワーキングスペース「TENOSSE(テノッセ)」の運営も担う地域商社の「株式会社 BRIDGE the gap」。施設の連携だけでなく、新たに生み出すプロジェクトによって、大きくまちが動き出そうとしている。

甲斐さんは順風満帆とまでは言わないが、確実に帆に風を受けて前に進んでいる。それでも、“定住”に関して慎重な意見を持つ。

 起業もできたことだし、甲斐さんはこのまま小林市で定住となりそうですか?

 市役所の移住希望者向け座談会でも言ったことなんですけど、定住につながる要因としては、“結婚相手”と“友達”と“仕事”だと思っています。TENAMU交流スペースがそういう機会を作り出せる場になるといいと考えています。

 ということは、ご結婚はまだなんですね?

 まだです。ただ、いつどこで、どんな出会いがあって、どう転ぶかわからないのが地方だと思ってます。それは僕が小林市の募集を偶然見つけたのと同じで、たぶん運とか、縁。

市の真ん中にあるTENAMUビル。西諸弁の「一緒に」という思いが込められた場所から、新たなつながりが生まれる。

昼ごろまでは小さな子どもたちが母親と一緒に遊び、午後は買い物に出たおばあちゃんやおじいちゃんたちが休憩し、夕方からは学生たちが勉強しにくるTENAMU交流スペース。

ここでは人が途切れることなく、そして新たな交流も気づかないところできっと生まれている。

「いつどこで、どんな出会いがあって、どう転ぶかわからないのが地方」と名言を残した甲斐さん。料理人として小林市を訪れ、現在はTENAMU交流スペースをマネージメントしている。

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■プロフィール

甲斐 崇悟(かい しょうご)さん

1981年、愛知県生まれ。調理師免許を持った人を募集していた地域おこし協力隊に応募して2016年10月から小林市に移住。2017年3月に起業し、「株式会社 BRIDGE the gap(ブリッジ ザ ギャップ)」を創設。TENAMU交流スペースとコワーキングスペース「TENOSSE」を管理運営している。

施設インフォメーション

■TENAMU(テナム)交流スペース

ワークショップなどを開催する場合は、ひとテーブル1時間108円の利用料金でスモールオフィスの完成。

住所/宮崎県小林市細野1897番地 TENAMUビル2階
TEL/0984-22-1075
開業時間/10:00〜21:00
休館日/火曜日、年末年始

 

photo:ULALA

text:アマキン

【PROFILE/アマキン】

本業はクリエイター。アウトドアアクティビティ、DIY、クッキングを得意とすると豪語しながら、すべてはプロフェッショナルには遠く及ばない「素人にしては、まあ上手だな」程度のレベル。

構成:所 隼登

(本記事は宮崎県小林市と協働製作したスポンサードコンテンツです)


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