この夏一番の贅沢な過ごし方。奥多摩カヤックツアーにでかけよう!
興奮の戦いが続く、リオオリンピック。日本の羽根田卓也選手の銅メダル獲得で俄然、注目を集めている競技のひとつがカヌーだ。巧みにパドルを操りながら、激流の中、スピーディに水上を滑り降りていく。メダリストのように船を操ることがとてもできそうもないが、暑い夏、水しぶきを浴びながら楽しく挑戦してみたい。そう思った人は少なくないはずだ。
そこでオススメなのが東京都心部からでも日帰りで気軽に楽しむことができる、奥多摩でのパドル体験。早速、筆者もオリンピックに影響されつつ、奥多摩での体験ツアーにチャレンジしてみた。
場所は、ハイカーで賑わうJR青梅線の御嶽駅から4駅ほど。白丸駅の目の前に広がる、白丸湖だ。ガイドを頼んだのはカヌースクール「グラビティ」の後藤めぐみさんだ。夏季限定だという早朝スクールは、6時30分に駅集合。ひんやりと冷気がたちこめる湖へは、駅から歩いてほんの2分ほどだ。
湖の目の前にある船置き場で軽く体操の後、パドルの漕ぎ方を習得。手にしたのは、オリンピックで見たのとは異なり、2つのブレード(水をかく平たい部分)を持つパドル。ここで体験するのは、1本のパドルで左右のブレードを交互に水に入れ、推進力を得るカヤックだ(オリンピックのように片側、1つのブレードを持つパドルで船を漕ぐのはカナディアンカヌー)。陸上で、パドルの動かし方を教わるが、まあ誰でもすぐにできそうである。後藤さんはこんな説明をしてくれた。
「はじめは、どうしても手だけで漕ごうとするんだけど、それだと左右でしっかり、水をつかむことができません。だから体幹を意識して、腰の回転でパドルを漕ぐのがコツ。身体の軸を動かさず、腰の回転によってパドルを動かすんです」
そんな講義が20分ほどで終了。早速、湖面にエントリーした。
最も恐れるべきは船の回転によってバランスを失うシチュエーション。身体がカヤックに固定されているため、船がクルっと半回転してしまうと、上半身が完全に水中へと沈没することになる。
「船の回転は危険ですが、まあ、はじめてのカヤックで上半身が水に浸かってしまう人は3%くらいかな(笑)。この白丸湖であれば、まず大丈夫でしょう」
そうなのだ。湖に出てみると、このゲレンデがいかに最高か、すぐに体感できた。この湖は白丸ダムにせき止められた水によってできた人工湖。激流とは無縁の、まるで鏡のような水面なのである。時間はまだ朝の7時。夏の時期特有の川霧が水面近くを広く覆うなか、ゆっくりと湖面を滑っていく。
10分、20分、30分と自由に湖を滑っていくうち、霧が晴れ、少し前とは全く異なるクリアな視界が目の前に広がる。申し訳ないほど気持ち良い涼しげな湖面の風が、初心者パドラーを優しく包んでくれた。併走してくれた後藤さんが目的地に選んでくれたのは、山百合が咲く対岸のポイント。いきなりの湖上デビューだったが、100mほど前方の対岸までゆっくりではあるが、たどり着くことができた。
「春はヤマザクラと藤の花、夏には山百合、秋には湖を囲うような紅葉を見るのが楽しみ。カモとかサギ、トンビが湖にやってくるのもいいですよね。季節毎に驚くほど風景が変化するので、毎日、漕いでいても全然、飽きないんです」
そんな感じで気持ちよいクルージングは終焉を迎えた。と言いたいところだが、実は、漕げば漕ぐほどパドルコントロールの難しさを感じるようになっていた。どうしても手漕ぎになってしまい、船がクルクルと湖面と水平に回転しまうのだ。そこで、さきほど伝授された体幹をあらためて意識してみると、徐々にだが左右のブレードがしっかりと水に入るようになり、少しは船の回転を抑えられるようになってきた。それでもスイスイ、思い通りの方角へ行けたとはとても言えない。このカヤックというスポーツ、意外に奥が深そうである。
「私自身、何年もカヤックを漕いでいますが、まだ上達し続けているんです。体幹やその他の筋肉を柔らかく強くしたり、姿勢や下半身の使い方、呼吸だってパドリングに影響します。誰でもすぐに楽しめるのも魅力ですが、上達の道が果てしない部分もカヤックの魅力。入りやすく、飽きにくいというちょっと不思議なスポーツかもしれませんね」
こうして真夏の早朝体験カヤックは約2時間で終了。フリーランスの筆者はこの後、電車に乗って東京中心部へ向かい、昼前からは別の仕事。なんとも贅沢なモーニングタイムによって爽快な一日となったわけである。もちろん、休日を利用して一日、たっぷりスクーリングを楽しむことも可能。うだるような真夏の一日、カヤックを楽しみながら涼をとるのも実にオツだ。
【問い合わせ】
「カヌースクール グラビティ」
http://gravity-jp.com
東京都青梅市柚木町3-787-9
Tel:0428-76-0981
photo:曽田夕紀子[ミゲル]
text:宇都宮浩[ミゲル]
PROFILE/株式会社ミゲル
企画立案から編集、ライティング、撮影までを行う、夫婦2人による編集プロダクション。御茶ノ水と奥多摩に拠点を持ち、TOKYOハイブリッドライフを体感しながら、本づくりを実践中。テーマは、トリップ、デザイン、アート、アウトドアからスポーツ、地域活性、メディカル、IRまで幅広く、深く。
http://miguel-web.info