2011年3月11日に起きた東日本大震災。東北地方は大きな打撃を受けたが、着実に復興への道を歩んでいる。そこで、自然や人、その街が持っている地域資源を使い、未来へ向かって希望を生み出している、ある施設を紹介したいと思う。
(※本記事は2017年に公開した記事の再掲載です。掲載されているデータなどは取材当時のものです。ご了承ください)
森と海がつむぎだす、小さな集落の明日
森、海、明日——それは東日本大震災を経験した宮城県石巻市にある小さな集落“雄勝”が持っている大事な大事な希望だ。
「MORIUMIUS(以下、モリウミアス)」という施設が石巻市雄勝町にある。複合体験施設とうたっているが、どういう施設かをひと言で説明するのはなかなか難しい。
キーワードを挙げると、少しずつ輪郭が見えてくるかもしれない。
子ども、雄勝の森、雄勝の海、雄勝の暮らし、出会い、気づき、学び、地域の未来……。
豊かな森と海に恵まれ、濃密な自然が残っている宮城県石巻市雄勝町。2011年の東日本大震災では、町の8割が壊滅的な被害を受けた地域だ。そんな地域復興の拠点として、2015年夏、廃校となっていた小学校が装いも新たに生まれ変わった。
それが、子どもたちの好奇心と探究心を満たす複合体験施設「モリウミアス」だ。
自然と共にある雄勝の暮らしを体験できる施設
雄勝の暮らしは自然と共にある。海の幸、山の幸をいただき、季節の移ろいとともに日々の暮らしも変化していく。「モリウミアス」は、そんな雄勝の暮らしと自然を子どもたちに体験してもらう施設だ。
アクティビティや多種多様な学習プログラム、地元の方との交流を通じて、暮らしと自然が共存する雄勝を子どもたちに体験してもらい、生きる知恵や学ぶ意欲、自然の豊かさを感じ取ってもらおうとしている。
子どもたちが雄勝を訪れてモリウミアスに滞在し、自然から多くのことを学ぶのと同時に、雄勝の町もそういった子どもたちとの交流を重ねることで成長していく。“未来の象徴”とも言える子どもたちとの交流は、元気をなくしている地方の小さな集落の明日を生み出していく。
専門家は地元の人 子どもたちを積極的に交流させる
モリウミアスには、1泊2日/2泊3日の短期滞在プラン、7泊8日の滞在プラン、長期滞在プランがある。
施設に滞在しながら、自然と共存する暮らしをテーマとしたさまざまな学習プログラムやワークショップを体験できる。さっそく、その学習プログラムの一例を紹介しよう。
間伐材を使った箸づくり。漁師船に乗ってホタテやカキ、ホヤの水揚げ。施設の裏山での森の整備。水源を探す沢登り。薪を割って風呂を沸かす。かまどでの自炊。魚介類をさばく体験。田植えや水やり、畑仕事、野菜の収穫体験。みそづくり。しいたけの菌打ちなどなど。
多岐にわたるプログラムがあるが、先生役は漁師さんや農家の方など、地元の人が担うことが多い。専門家は地元の人なのだ。特別な人ではなく、雄勝で自然を相手に暮らしている一般の人というわけ。
子どもたちは、雄勝で日々、行われている“日常”を体験するのだ。
サスティナブルに生きる力を養いたい
モリウミアスは「サステナビリティ」(持続可能性)にもとづいた体験を大切にしている。
さまざまな学習プログラムや滞在中の集団生活を通して、食物を採って調理する。余った食物は家畜のエサになり土に還る。水をリサイクルして植物を育てる。そんな自然の循環を体験させることで、サスティナブルに生きる力を養おうとしているのだ。
家畜を飼ったり、農作物を育てたり、薪を割って風呂を沸かしたり、施設の掃除をしたり。自然の恵みを活用し、自分たちの体を動かし、環境に配慮して暮らすことを学ぶ。
自然に寄り添った雄勝の暮らしは、ある意味で、最先端の暮らしとも言える。
【後編へ続く】
「MORIUMIUS」INFO
所在地:〒986-1313 宮城県石巻市雄勝町桑浜字桑浜60
アクセス
車の場合:東北自動車道(下り)仙台港北I.C→三陸自動車道 河北I.C 東京から約6時間
電車・バスの場合:東北新幹線(東京-仙台)→高速バス(仙台駅-石巻) 東京から約3.5時間
予約は「MORIUMIUS」のHPから
text:george
【PROFILE/george】
茨城県東海村出身の32歳。インテリア雑誌、週刊誌、書籍、ムックの編集を経て、現在Webディレクター。4年前の朝霧ジャムに行って以来、アウトドアにハマる。テントはMSRのエリクサー3、タープはZEROGRAM。車を持っていないので、キャンプに行くときは知人の車に相乗りが常。なので、基本の装備は「軽くコンパクトに、友人の負担にならないこと」が信条
【追記】
本記事は2017年2月に公開された記事です。