移住のミスマッチ
都会暮らしの人ほど憧れる、地方への移住生活。
しかし、いざ憧れの地方生活がスタートしたとしても、仕事の問題、人間関係や環境の変化、イメージして生活とは違ったなど、うまくいかなかったケースも存在します。
そこで高知市では、これまであまり語られてこなかった移住ミスマッチ問題と真剣に向き合うべく、2020年(コロナ禍)以降に移住を経験した、日本全国に住んでいる20〜59歳の男女600名に対し、移住の検討方法や移住後の暮らしについて調査を行いました。
調査概要
・調査手法:インターネット調査(調査会社の保有する調査パネルを利用したネットリサーチ)
・調査エリア:全国
・調査対象:20歳~59歳の男女で、2020年以降に移住(※)をした人
※都道府県をまたぐ引っ越しまたは転居
・サンプル数:600サンプル(スクリーニング後)
・回収割付:男性300:女性300、既婚300:未婚300、イベント参加300:イベント不参加300
※単位:サンプル数 ※イベントとは「移住検討時に情報収集のためのイベント」
・調査期間:2022年7月22日(金)~7月28日(木)
※構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、内訳の合計が100%とならない場合があります。
コロナ禍の移住理由第1位は「働き方・暮らし方を変えたい」
移住を決断した理由を問う調査では、「働き方や暮らし方を変えたいため」と答えた方が32.0%、続いて「リモートワークにより住む場所を選べるようになったため」と答えた方が25.8%という結果になり、約4人に1人が移住の理由に「リモートワークができるから」と回答しました。
コロナ禍によりリモートワークという働き方が増え、仕事に関係なく住む場所を選べるようになったことで、移住の決断に至った人が多いと推察されます。そう考えると、都会への勤務疲れを起こしていた人が多かったようです。
移住関連イベント参加者の半分以上はオンラインでの参加経験あり
移住検討時に情報収集のため参加した経験のあるイベントを問う調査では、移住関連イベントに参加した300名のうち、55.7%はオンライン移住相談会に参加していることが分かりました。
年代別にみると、20代では63.6%がオンライン移住相談会に参加しており、対面移住相談会への参加は29.9%という結果に。
一方、50代ではオンライン・対面ともに50.8%の人が相談会に参加しており、20代よりも30~40代、30~40代よりも50代の方が対面移住相談会への参加率が増える傾向にあることが分かりました。
オンラインよりも対面イベントの方が満足度が高い
移住検討時に相談会やツアーなどの参加について、「後悔しなかった」と回答した人は、対面移住相談会に参加した人の76.5%となり、他の移住関連イベントに比べて大きい割合となりました。
移住相談会・移住ツアーのいずれも、対面イベントがオンラインイベントよりも「後悔した」「少し後悔した」の回答が少なかったことから、対面イベントの方が参加者の満足度が高いことが分かりました。
おそらくリモートではなかなか伝えにくい疑問や不安も、直接担当者と話すことによって、解消できるからなのかもしれませんね。
イベント参加で後悔した理由
<イベントに不満>
・どこも公表する情報が似たり寄ったりで特徴がわかりにくい。子育ての特典をPRするところが多いが、自分には関係ない情報だった。むしろ現地の物価・交通・気候などの情報がもらいたかった。(男性・59歳・未婚:オンライン移住相談会)
・具体的なデメリットを知ることができなかったから。(女性・31歳・未婚:オンライン移住相談会・オンライン移住ツアー)
<もっと○○すればよかった>
・テレビ移住の特集を見て、もう少し検討しても良かったかなと思った。(女性・32歳・既婚:オンライン移住相談会・対面移住相談会)
・もう少し別のところも見てみてもよかったかなぁ。(女性・32歳・既婚:オンライン移住相談会・オンライン移住ツアー)
・質問たくさんすればよかった。(女性・48歳・未婚:オンライン移住相談会)
・やっぱりちゃんと見たら良かった。(男性・48歳・未婚:オンライン移住相談会・オンライン移住ツアー)
・たくさん参加すればよかった。(女性・40歳・既婚:オンライン移住相談会・対面移住相談会)
イベント不参加で後悔した理由
<苦労した>
・なかなかいろんな情報を得るのに苦労したからです。(男性・54歳・未婚)
<想像と違っていた>
・もっといい場所があったかもしれないから。(女性・31歳・既婚)
・移住してから、虫が多いのに困った。(女性・38歳・既婚)
・寒すぎる。(女性・20歳・未婚)
・見れるテレビやお店が少ない。(男性・27歳・未婚)
移住関連イベント参加により移住後の充実度が変わる!?
イベント参加者の約9割は移住後「移住前にイメージした理想通り」の生活と回答。
イベント参加者の6割以上が「充実」した生活を送っていると回答し、いずれもイベント不参加者より充実感を感じている様子です。
移住関連イベント参加により移住後の具体的イメージが高まる!?
移住前に移住後のイメージを問う調査では、「ワークライフバランスが保てそう」と回答した人が33.0%と一番多く、約3人に1人が回答。
また「あまりイメージが思い浮かばなかった」と回答した人は、全体の19.0%という結果に。
移住関連イベントの参加有無別でみると、「あまりイメージが思い浮かばなかった」と回答した人は、イベント不参加者では30.7%、イベント参加者においては7.3%となり、23.4ポイントの大きな差が開きました。
移住関連イベント参加者の約9割は移住後の暮らしが「移住前にイメージした理想通り」
移住後の暮らしについて、全体の86.8% が移住前にイメージした「理想通り」「まぁ理想通り」と回答。
移住関連イベント参加者では90.3%が「理想通り」「まぁ理想通り」と回答し、非常に高い割合で理想通りの生活を送っていることが分かりました。
また、「理想通りでない」と回答した割合を比較すると、イベント不参加者の割合(16.7%)はイベント参加者の割合(9.7%)の1.7倍となりました。
やはり事前に移住イベントに参加して、情報収集しておくことが大切かもしれませんね。
移住後の充実度は移住関連イベント参加で15.4ポイントアップ
移住前後の暮らしの充実度を問う調査では「移住後の方が充実している」と回答した人は、全体で55.0%。そのうち、移住関連イベント参加者は62.7%と高く、イベント不参加者は47.3%と低い結果となり、イベント参加により15.4ポイントも差が出ることが分かりました。
能動的に移住した人の割合の差が影響しているとも考えられますが、イベントに参加したほうが移住後の暮らしが充実する可能性が示唆される結果となったのは要注目すべき点かもしれません。
移住前vs移住後 暮らしの充実度の評価理由
「移住後」の方が充実している理由
<家族との時間>
・家族と過ごして、一緒に笑う時間が増えた気がする(女性・45歳・既婚:埼玉県)
・家族と過ごす時間が増えたため。特に週末(男性・45歳・既婚:北海道)
<コスト>
・家賃、光熱費諸々かからなくなったからです(女性・57歳・既婚:秋田県)
・帰省の費用がかからないため(女性・44歳・既婚:北海道)
<自然>
・自然豊かなところと、人口密度が低いところが子育てに向いていてストレスも少ない
(女性・31歳・既婚:福岡県)
・自然豊かで質の良い温泉も近場にたくさんあり、充実した暮らしが今のところはできている
(女性・47歳・既婚:秋田県)
<のんびり>
・のんびり時間を大切に過ごすことができる(女性・57歳・未婚:京都府)
・ゆっくりとのんびりと暮らしている。自然環境もよいので、癒されている(女性・59歳・既婚:大分県)
「移住前」の方が充実していた理由
<不便>
・自然は豊かだが、生活が不便で大変(女性・57歳・既婚:熊本県)
・買い物や病院の不便さ(女性・48歳・未婚:岡山県)
・以前より田舎なので、お店が充実していないという不満感がある。買い物や休暇の過ごし方が不便になった
(女性・28歳・未婚:広島県)
<仕事>
・地方の方が保守的で働きにくい(女性・53歳・未婚:新潟県)
・全体的に給与が低い(男性・51歳・未婚:山形県)
移住後の夫婦喧嘩の増減はイベント参加で差があり
既婚の方300名への移住前と移住後での夫婦喧嘩の回数を問う調査では、移住関連イベント参加者の27.5%が「夫婦喧嘩が減った」と回答したことに対し、イベント不参加者は18.0%と9.5ポイント低い結果となりました。
一方で夫婦喧嘩が「移住前より増えた」と回答した割合は、イベント参加者では15.6%、イベント不参加者では10.5%となり、5.1ポイントの差がでました。夫婦喧嘩の増減の理由として、いずれも「夫婦で一緒に過ごす時間が長い」ことが挙げられます。
未婚の移住関連イベント参加者の約3人に1人が移住先で恋愛
未婚の方300名に移住先で恋愛対象者と出会い、お付き合いした経験を問う調査では、移住関連イベント参加者の約3人に1人が「はい」と回答(33.1%)。イベント不参加者(16.8%)の2倍近い割合に。
特に比較的若い参加者が多い、オンラインのイベント参加者が「はい」と答えた割合が多く、移住前からイベントに参加し積極的に移住に向けて活動する人の方が、移住先で恋愛する傾向があると推察されます。移住して恋をしたい人は、イベント参加が吉と言えそうです。
移住相談会に関するお問い合わせ
高知市 地域活性推進課 移住・定住促進室
TEL:088-823-8813
文/中山 圭
【Profile / 中山 圭】
東京都立川市出身。広告代理店、出版社2社での広告営業を経て2019年に独立。趣味はルアー釣り、カメラ、音楽(ベース)。学生時代に始めたバス釣りで、2年もの間釣れなかったことから、ルアー釣りにのめり込むことに。ここ数年はバラした70cm以上のGTを追い求めて、南の島遠征を繰り返している。将来の夢は風景写真で入賞を果たすこと。モットーは、“釣果と景色は足で稼ぐべし”。