ちょっと“異端児”なキャンプ用ケトル
トランギアのケトルといえば、アルミ製の丸いボディの上部に、細いハンドルが備わったスタイルが定番です。しかしラインナップのなかに1つだけ、異端児のような存在がいます。それが「オープンファイアケトル」。
ケトルの上部ではなく側部にハンドルが備わっており、その姿はまるで急須(きゅうす)のよう。このハンドルは着脱可能であり、アルミ以上に熱に強いステンレスで作られています。
ハンドルとともに、フタのノブもステンレス製です。つまりオープンファイアケトルはすべてが金属で作られており、焚き火の炎に包まれても大丈夫。まさに焚き火での使用に特化したモデルといえます。
今回はこのオープンファイアケトルをレビュー。
結果として、1つだけ“弱点”はあるものの、最高に使いやすく、面白みにあふれるケトルでした。
トランギア「オープンファイアケトル」はこうやって使う!
オープンファイアケトルの使い方は、普通のケトルと少しちがいます。まずはケトルにハンドルを装着。ハンドルの爪を、本体に設けられたスリットの下から差し込むことで装着できます。
ハンドルを持ち、焚き火台の上に乗せます。ヤケド防止のため、燃えにくい素材の手袋を着用しましょう。
ハンドルをケトル本体から取り外します。これにより、ハンドルが加熱されてしまうのを防げます。
お湯が沸いたら、ふたたびハンドルを装着。そして焚き火台から取りあげます。
そのままカップラーメンにお湯を注いだり、コーヒーを抽出したりと、好きなように使えます。オープンファイアケトルはハンドルを取り外せる点、ハンドルを横に装着できる点の2つが大きな武器です。
定番のケトルはハンドルが取り外せないため、ケトル本体と一緒に加熱されてしまいます。さらに焚き火の熱は上に昇っていくため、焚き火から取りあげる際に熱さを感じます。
それらの不都合を解消しているのが、オープンファイアケトル。焚き火と相性がいい理由がこれです。
トランギア「オープンファイアケトル」の弱点は吊り下げられないこと
焚き火との相性がいいオープンファイアケトルですが、ほかのモデルとくらべて弱点が1つあります。
それは、トライポッドなどから吊り下げて使用できないこと。そのため、焚き火台で使用する際にはゴトクやアミが必要になります。人によっては大きなデメリットになり得るため、この点は留意しておかなくてはなりません。
いっぽうで、そもそも吊り下げて使う気がない人にとっては、メリットのほうが多いと感じられるはずです。
トランギア「オープンファイアケトル」のハンドルは本体にスタッキング可能
ハンドルは本体にスタッキングできるため、収納時のサイズはトランギアのほかのモデルと大差ありません。ナイフやライターなどと一緒にスタッキングすれば、荷物のコンパクト化もできます。
さらにこのハンドルには面白い機能が!
後部の穴から木の棒を刺すことで、ハンドルを延長できます。この機能があるために、焚き火だけでなく、ブッシュクラフトとも相性がいいといえるでしょう。非常によくできた、使い勝手のいいハンドルです。
トランギア「オープンファイアケトル」はステンレスノブの工夫が素晴らしい
フタに備わった、ステンレス製のノブ。かなり独特な形状ですが、これにはちゃんとした理由があります。指でつまむだけでなく、付属のハンドルやナイフのブレードを差し込めるようにするためです。なぜなら金属製のノブは、素手では触れられないほど熱くなります。
手袋を着用すれば問題ありませんが、フタを開けるために手袋を装着するのは結構な手間。その手間を解消してくれる、素晴らしい工夫です。
オープンファイアケトルのフタのノブは、同社の商品「ステンレスノブケトル」と同様のもの。上部に穴があけられているため、その気になれば自分で使いやすいようにカスタムできます。
トランギア「オープンファイアケトル」には、これくらいスタッキングできる!
ケトルは空の状態で持ち運ぶより、小物類をスタッキングしておくほうが効率的です。そのため、どれくらいの道具を収納できるかについても、気になるところ。試しに、筆者が持っているナイフやカトラリーなどをスタッキングしてみました。
やはり丸い形状のため、収納力においては同社の「メスティン」には敵わない様子。ですが必要最低限の道具を入れられました。メスティンに勝っているのは、小さなガスカートリッジが入ること!小型のガスバーナーと一緒にスタッキングできます。
ブッシュクラフトやミニマム装備のキャンプを好む人なら、これでも十分でしょう。スタッキングの例として、参考にしてください。
トランギア「オープンファイアケトル」を使用前には米のとぎ汁でシーズニングを!
オープンファイアケトルに限らず、トランギアのケトルは無垢のアルミニウムで作られています。安価で軽量というメリットがあるいっぽう、ステンレス製やチタン製のケトルとくらべ、黒ずみが発生しやすい特性があります。
黒ずみが発生しても実用上なんら問題はありませんが、できるだけきれいな状態を維持したい場合はシーズニングが有効です。シーズニングの方法は、米のとぎ汁を入れて、弱火で10分加熱するだけ。キャンプへ持っていく前に、自宅で済ませておくのが賢明です。
トランギア「オープンファイアケトル」は焚き火がもっと楽しくなる逸品
おそらく多くの人にとって、キャンプでとくに楽しいのが焚き火。その焚き火をもっと楽しむ方法として「焚き火に関連した道具にこだわる」のもアリです。
たとえば、火吹き棒や火ばさみ。デザインや機能にこだわって選んだものであれば、それを使っているときの楽しさも、いっそう大きくなります。もちろんケトルもそうでしょう。
今回レビューしたオープンファイアケトルは、ケトルのなかでも少し変わった機能を持つアイテム。そこに合理性や面白みを感じて手に取ったのなら、お湯を沸かすという単純な行為でさえ楽しみに変わるはずです。
トランギアの伝統的なスタイルを受け継ぎながらも、ユーザーにとって都合のいい機能を搭載したオープンファイアケトル。いつもの焚き火をもっと楽しくしてくれる、まさに機能美あふれる逸品でした。
トランギア(trangia)オープンファイアケトル0.9L
サイズ:直径13.5cm×高さ9.5cm(ハンドル収納時)
容量:0.9L
重量:188g
素材:アルミニウム(無垢)
価格:3,080円(税込)
写真・文/斎藤純平
【Profile/斎藤純平】
キャンプ、バイクツーリング、スキューバダイビングを趣味とするアウトドアライター。加えてこれから狩猟を始めようかと画策中。何をするのにも基本的にすべて一人で、キャンプもツーリングも思い立ったら即出発。読み手にとって本当に役に立つ情報を発信します。
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