種類が豊富なベストセラー砥石
栃木県に本社を置き、砥石を専門的に取り扱うシャプトン株式会社。
シャプトンの砥石は研磨剤が多く含まれているため簡単に鋭い刃がつき、使い方も簡単なうえに砥石自体が長持ちするといった特徴があります。
今回レビューをするのはシャプトンの製品のなかでもとくに高い人気を誇るロングセラー、その名も「刃の黒幕」。プロの料理人も認める優秀な砥石です。
そして刃の黒幕シリーズは目の荒さにより色分けされていることも大きな特徴。
荒研ぎ用の120番「ホワイト」から鏡面仕上げ研ぎ用の30000番「ムラサキ」まで、じつに10種類もの砥石が用意されています。
そのなかでも中研ぎ用の2000番「グリーン」は幅広い用途に対応する万能型。キャンプ用のナイフから家庭用の包丁まで、これ1つで最高の切れ味が手に入る優れものです。
汎用性が高く使い勝手に優れる2000番
2000番のグリーンは中研ぎ用としてラインナップされていながらも、実際には中研ぎから仕上げ研ぎまでをカバーしてくれます。
しばらく研がずにすっかり鈍ってしまった包丁に使用にも、毎日欠かさずメンテナンスをしている包丁にも最適です。
刃こぼれさえしていなければ、刃の状態を問わず使用できる汎用性の高さが2000番の良いところ。
切れ味にとことんこだりたい場合には、目が荒めの砥石と細かめの砥石を両方買って使い分けるという選択肢もあります。
しかし究極の切れ味よりも日々のメンテナンスの手軽さを求める方には、2000番のグリーンがシャプトンの砥石のなかではとくにおすすめです。
付属のケースは砥石台として使用可能
刃の黒幕シリーズには砥石と同じ色のケースが付属しています。このケースの使い勝手の良さも大きな魅力。
ケース上部にくぼみが設けられており、そこに砥石をセットすると砥石台として使用できるように設計されています。
さらにケースの裏側には滑り止めのゴムを装備。これがあることでどっしりと安定した状態で包丁を研ぐことができます。
ケースを砥石台として使用できると砥石台を別で購入する必要がないうえに、携帯性に優れているためキャンプや釣りなどに持っていく場合に都合が良いという2つのメリットがあります。
さらにケースの底面に、通気性を確保するための穴があけられていることも見逃せないポイントです。
使用後にそのままケースに収納したとしても砥石が長時間湿ったままになるのを防ぎ、カビの発生や砥石の劣化を防止してくれます。
このケースひとつをとっても、シャプトンの細かな気遣いが感じられるというものです。
あらかじめ水につけておく作業が不要
多くの砥石は、毎回使用する前に10分間ほど水につけておく必要があります。これは砥石に水を吸わせることで包丁を研ぎやすくするためなのですが、刃の黒幕はその作業が必要ありません。
使用するときに軽く濡らすだけでOKです。この手軽さも刃の黒幕の素晴らしいところ。
「サッと取り出してすぐに使える」
日頃から包丁の手入れに使用するのであれば、このお手軽さは決して無視できない利点でしょう。
「刃の黒幕」グリーンの使い方
刃の黒幕の使い方を、ダイソーの包丁を用いて解説します。
研ぐ前のダイソー製包丁は、コピー用紙も切れないほど磨耗していました。この状態から刃の黒幕で研ぐことにより、どれほど切れ味が復活するのかも試してみます。
砥石の使い方①:砥石をサッと水で濡らして台に置く
ケースから砥石を出したら、軽く水で濡らします。ここはすでに刃の黒幕の便利なところとしてお伝えした通りです。
濡らした砥石をケースの上に置いたら、もうこれで準備は完了。
※シャプトンでは、購入してから初めて使用する時のみ5分ほど水にひたしておくことを推奨しています。
砥石の使い方②:包丁を適切な角度で砥石に押し当てる
包丁やナイフをきれいに研ぐには、刃の角度を一定に保ったまま研ぐことがとても重要です。包丁がグラグラと動かないように、柄と刃を指でしっかり押さえましょう。
まずは包丁の向きを合わせます。包丁の刃を自分側に向け、砥石の向きに対して45〜60度ほどの角度で当てましょう。
この角度は自分の研ぎやすい角度にしても問題ありません。
次は刃を砥石に当てる角度を合わせます。よく聞く包丁の研ぎ方として「片面15度が理想的で、目安としては刃のみね側に10円玉を2、3枚挟んだ角度」という言葉もありますが、どのくらいの角度で研ぐかは使い方によることを覚えておきましょう。
切れ味を可能な限り鋭くしたいのならより小さい角度(鋭角)で、切れ味よりも頑丈さを重視したいのであれば大きな角度(鈍角)で研ぐのがセオリー。
完全に料理用として使用している包丁は鋭角に、ブッシュクラフトなどでガンガン使うナイフであれば鈍角に研いだ方が都合が良いのです。
何よりも刃の角度を一定に保つことが最重要。ただしこれは慣れる必要もあるので、上手くできるようになるまでは100均の包丁で練習するのも良いでしょう。
砥石の使い方③:刃の角度を変えず前後にスライドする
包丁の向きと角度を合わせたら、前後に動かして研ぎます。このときに刃の角度を一定に保つことを忘れてはいけません。
力加減は強く押し付けすぎず、かつ弱すぎないようにといった感じです。研ぎ具合にムラが出ないように、刃全体をまんべんなく研いでいきましょう。
ちなみに、包丁を研いでいると砥石の表面に黒い水が溜まっていきます。これは「研ぎ汁」といい、砥石から出た微粒子が含まれている液体です。
「この研ぎ汁が研磨剤として働くため流してはいけない」とよく言われますが、刃の黒幕の場合は研磨剤が多く含まれているので研ぎ汁は流してしまって構わないとシャプトンが公表しています。
研ぎ汁で手を汚したくない場合は、常に水をかけながら研ぐのも有効です。
砥石の使い方④:刃の裏側を同様の手順で研ぐ
片側を研ぎ終わったら刃を裏返し、先ほどと同じ角度に合わせ研ぎます。
今回は両刃の包丁を研ぐので、表側と裏側で同程度の研ぎ具合に仕上げなければなりません。
両側とも同じ角度と力加減で研ぐことを意識しましょう。
砥石の使い方⑤:刃の「かえり」を落として完了
包丁がしっかり研げていると、研いだ面の裏側に小さなめくれが発生しています。これが「かえり」です。
かえりが出ているかは、刃に軽く指を当て、刃の向きと垂直になぞるとわかります。このときにザラッとした感触があれば、かえりが出ているということです。
かえりがある状態のままでは切れ味が良くないので、ふたたび包丁を裏返し、全体を2〜3ストロークほど研いで削り取ります。
そして表側・裏側の両方にかえりが出ていないかを指で確認し、問題なければ研ぎは終了です。
研ぐ前はコピー用紙すらまともに切れなかったダイソーの包丁。切れ味が復活しているかを確認します。
サーッという音とともに、コピー用紙がきれいに切れました。研ぐ前との差は歴然です。
100均で買った包丁でも、良い砥石で研げば剃刀のような切れ味が実現できます。これだけの切れ味があると、毎日の料理がより快適になることでしょう。
キャンプ用ナイフから家庭用の包丁までおすすめの砥石
家庭用の包丁もキャンプ用のナイフも、刃の素材にはさまざまなものがあります。
しかし包丁の切れ味は研ぎ次第。まともな砥石を使用して適切な方法で研がなければ、どんなに高級な刃物も宝の持ち腐れとなってしまいます。
その「まともな砥石」のひとつとしておすすめしている刃の黒幕は、刃の扱いに慣れていない初心者の方から、たくさんの刃物に触れてきたベテランの方までが満足できるであろう逸品。
「新品の頃の切れ味を取り戻したい」
そのような願望にも応えてくれます。
シャプトン 刃の黒幕 グリーン 詳細
用途:中砥(2000番)
サイズ:長さ21×幅7x厚さ1.5cm
重量:約500g
写真・文/斎藤純平
【Profile/斎藤純平】
キャンプ、バイクツーリング、スキューバダイビングを趣味とするアウトドアライター。加えてこれから狩猟を始めようかと画策中。何をするのにも基本的にすべて一人で、キャンプもツーリングも思い立ったら即出発。読み手にとって本当に役に立つ情報を発信します。