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cazual取材チームは、この春、宮崎県小林市に2週間滞在してプチ移住生活を体験した。そのときに小林市で出会った素敵な人や体験したアクティビティ、実際に住んでみてわかった暮らし心地をレポートするシリーズ企画を展開中だ。
小林市をさまざまな角度から掘り下げるシリーズ記事の第7回は、農家さんの自宅にお邪魔し農体験をした農家民泊をレポートする。
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小林市は市の中心を少し離れれば山だって川だって湖だってあり、本当に自然が豊か。もちろん畑も田んぼも、牧場も鶏舎もあり、農業が盛んな街でもある。そんな農家さんの暮らしを体験できる農家民泊プログラムが「北きりしま田舎物語」だ。cazualチームもこのプログラムで農家に民泊し、農体験にチャレンジしてきた。
アウトドアに興味があり、なおかつ地方移住をちょっとでも考えている人は、「いつかは自給自足」なんて夢が頭の片隅にあったりするのでは? もしくは、移住後の職業として新規就農を視野に入れている人もいるかもしれない。そういった方にぜひ体験してもらいたいのが農家民泊だ。
ホンモノの農家の暮らしを体験することで地域の魅力を感じてもらう
取材チームが向かった先は、市の中心から東に位置する野尻地区。商業的なエリアを通りすぎ、農村色が非常に濃い地域だ。迎え入れてくれた農家民泊施設は「おしげさんの宿」。オーナーはその名のとおり、おしげさん。そんなおしげさんこと加藤しげ子さんは、田舎暮らし体験プログラムを運営する「北きりしま田舎物語」推進協議会の会長でもある。
協議会は企業研修や学生の修学旅行などを主な対象にして体験交流型教育旅行を開催していて、プログラムの総称が「北きりしま田舎物語」だ。その活動範囲は小林市、えびの市、高原町の2市1町にまたがっていて、これら霧島連山の北に位置するエリアが「北きりしま」と呼ばれている。体験プログラム「北きりしま田舎物語」では2市1町の魅力を、「農体験」を通して伝えているのだ。
というわけで、今回宿泊した「おしげさんの宿」は単なる民泊施設ではなく、「農体験」が主となっている。おしげさんが営む農業を一緒に体験するために、農家のおしげさん宅に泊まるのだ。
嫌いなものも「ここだとおいしく食べられるよ」と言ってくれた
「北きりしま田舎物語」は、「今日、宿泊できますか?」と農家さんに直接予約を入れられるものではない。企業研修や修学旅行などの大規模なものは旅行会社と提携し、事務局をとおして農家民泊者を受け入れている。宿泊したいと思ったら、事務局に電話して確認を取るのがいちばんだ。
現在は、より気軽に体験できる個人向けプログラムも開発中とのこと。まずは、おしげさんに「北きりしま田舎物語」の全体像をうかがった。
cazual編集部(以下、c) 修学旅行生は何名ぐらいで来るんですか?
おしげさん(以下、お) 上限を設けていて、1回の受け入れで170名です。それ以上の生徒さんがいる場合には、日にちをずらして来てもらっています。修学旅行は高校生も来ますけど、中学生がもっとも多いですね。
c 民泊となると農家さん1軒あたりの受け入れ人数はそんなに多くないですよね。クラス単位は無理かと思いますが、班単位とか、少人数に分かれるんですか?
お そうです。最初は1ヶ所に全員集まっていただいて、入村式というのをやります。その後、それぞれの農家さんに分かれてもらいます。先生や旅行会社の方たちが心配されるのは、活動や食事が一軒一軒違うことなんですけど、子どもたちはむしろ喜んでくれています。
c あくまで農家さんの家に泊まるということが前提ですから、一軒一軒違うのは、考えてみれば当たり前ですよね。
お 農家によっては、ちょっといい食事が出たり、そういうのはありますけど、子どもたちは自分が泊まった農家さんが一番だと思ってるので、帰りには自慢し合ってますよ。お金をいただく以上、農家さんもそれなりのことはしますしね。
受け入れ前、農家さんにはスクールマネージメントの講習会があります。ほかにも年に1回は救命救急の講習、衛生管理の講習なども必ず受けてもらいます。保健所の検査もやっていますから、体制はしっかりしてます。
c 修学旅行で来るのは、宮崎県外の学校が多いんですか?
お 大阪、兵庫、奈良と関西が多いですね。関西のほかには福岡。平成25年(2013年)から修学旅行を受け入れていますが、先の予約まで数えると、7年連続で農家民泊を取り入れている中学校もあります。
熊本地震があった2016年は、大阪の13校のうち12校はキャンセル。地震があったのは4月で、それから5月と6月はキャンセルが多かったんですけど、でも、その7年連続で予約を入れてくださってる学校だけは、時期をずらして9月に来てくれました。もう感激しましたね。やっぱりハートとハートの交流というか、先生方も評価してくださってるから続いているのだと思います。ありがたいですし、やりがいを感じます。
c 農家民泊の体験プログラムは、どんなことをしてもらうんですか?
お そのときにできるプログラムを必ずやってもらいます。農家さんによって内容は異なってきますが、苗を植えたり、雑草を刈ったり、野菜の収穫があるときには収穫して、それをみんなで料理して食べたり、山歩きをしたり。でも修学旅行だと、みんなと一緒にいる夜が楽しくて全然寝ないですから、ゆったりしたプログラムが多いです。
c 修学旅行だと、子どもたちは寝てるわけにはいかないですよね(笑)。
お 農家民泊だと先生の目が届かないだろうからって、「おばちゃん、コンビニ行っていい?」とか、夜に出かけたいと言うんですよ。そんなとき、「行けるもんなら、行ってごらん」って答えます。ここらには電灯もないから外は真っ暗で何も見えないし、歩いて行けるところにコンビニもない(笑)。外を見たらすぐに諦めますね。
c 食事のことをお聞きしますが、好き嫌いがある子もいると思います。そういうときはどうされていますか?
お アレルギー以外の好き嫌いについては、いままで食べられなかったものが食べられたといったことを言いますね。「おばちゃん、ここだとおいしく食べられるよ」って。そういう言葉を聞くとうれしいですね。
農家民泊の1泊2日のプランを例にあげると、13時30分の入村式に始まり、農家ごとのプログラムを体験。夕食作りを手伝い、そして団らんを楽しみながら食べる。入浴の後に就寝。翌日は朝6時30分起床で、朝の農作業体験。朝食作りを手伝い、そして食事。そのあと農家ごとのプログラムを体験。昼食作りを手伝って食事。14時に退村式があり14時30分に出発となる。
2017年は2,000を超える人を受け入れた体験プログラム「北きりしま田舎物語」。44軒ある登録農家民泊のうち、16軒が小林市内にある。農家民泊では、基本的に苗植えや収穫などの農業体験が主。ただ、ひと口に農家と言っても、鉢花やハーブの栽培農家、合鴨を使った無農薬でお米を育てる農家、牛を育てる畜産農家とジャンルは多彩だ。
バームクーヘン作りに苗植え、野生のクレソン収穫ともりだくさん
今回お邪魔した「おしげさんの宿」ではどんな農体験があるのだろうか。
農体験は、まず炭火起こしから始まった。アウトドア好きならわかっていただけると思うが、炭火起こしって、けっこう大変。そんなとき作業をラクにしくれるのが、バーナーや着火剤といった道具だが、「おしげさんの宿」には、そういった道具が見当たらない。渡されたのはマッチ箱だけ。
「こりゃあ1箱使い切っちゃうかな」
そんな不安にかられたものの、なんとマッチ1本で炭に着火ができちゃった。長いことアウトドア企画をやっているが、こんな体験は初めて! 小林市の気候がよかったのか? それとも知らないうちに腕が上がっていたのか?……いいえ、きっと炭が上質だったんだと思います。
炭に火が起きたら、アウトドアイベントのワークショップで定番野外料理として登場するバームクーヘン作り。ここでは近くに生えている竹を芯材に使って、野趣あふれるバームクーヘン作りにチャレンジ。消毒を兼ね、竹をじっくりと火であぶる。すると竹からジワジワ油がにじみ出てきて汚れが浮き上がり、それをふき取るとツヤツヤに。
小麦粉をサイダーで溶いた生地をツヤツヤの竹にからめ、竹を回しながらあぶり、またからめてあぶりと数回繰り返すとバームクーヘンの完成だ。こう文字に起こすと作業はシンプル極まりなく、至極簡単そうだが、炭火調理なので時間はけっこうかかる。でも、少しずつ太くなっていく様子や、炭火の炎を見ているのは楽しいもの。
バームクーヘン作りの後は、畑作業、夕食のおかずとなるクレソン採りと続く。
クレソンの収穫体験は、修学旅行で来た都会っ子の生徒たちにやらせれば、大喜び間違いなしのプログラムだろう。
野生のクレソンが水辺一面に生えていて、それがハサミで簡単に収穫できる。初めての経験に目を輝かせるはず。大人でもワクワクするのだから、子どもはなおさらだろう。クレソン採りは「自分が食べきれる分だけ」と心を制することができるかが勝負になりそう。
牧場に行き、畜産農家の様子も体験
翌日は残念ながら朝から大雨だったので農作業は中止。晴耕雨読を実感するのも農家民泊の醍醐味だと感じた。それでも雨に急対応してくれ、おしげさんのご主人である英二さんこと英ちゃんが以前、経営していた牧場へ見学に連れて行ってくれるなど、退村時間ギリギリまでプログラムは続いた。
ちなみに英ちゃんは、小林市で牧場を経営していたにも関わらず、ここの出身者ではなく移住者。東京生まれの東京育ち。おしげさんとも東京で巡り会ったという。将来、地方で暮らしたいと考えていた英ちゃんは、おしげさんと出会ったとき「地方出身者か?」とまずたずねたそうだ。そして東京でふたりで働き、一生懸命お金を貯め、おしげさんの故郷であるこの野尻地区に来て、牧畜を始めた。
英ちゃんは、もちろんまったくの未経験者。だからこそ素直に農協や研究者の言葉を聞き入れ、代々続く畜産農家とは違ったやり方ができたと言う。
本人からは「成功した」なんて言葉は出なかったが、牛を1頭ずつ増やしていき、最後には常に80頭もいる牧場になった話を聞き、また夫婦ふたりの今ある笑顔を見れば大成したことが想像できる。もちろん、そのかげには言葉に尽くせないほどの努力があったと思う。
英ちゃん、おしげさん、ふたりとも口をそろえて「よく働いたね」「よく働いたよねぇ」と言い、そして続けて、「運が良かったね」「運が良かったよねぇ」と話す。
農家さんだから持っている素敵な物語。そんな話を聞きに、農家民泊に来るのもいいかもしれない。移住後の自給自足の暮らしや新規就農を検討しているなら、農家さんが過ごす日々をリアルに感じられるこの体験は絶対に参考になるはず。
地域の魅力を、農体験を通して伝えるだけではない体験プログラム「北きりしま田舎物語」。普通の宿泊では感じ得ない、人との近い距離感がまたその魅力と感じた。
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施設インフォメーション
■北きりしま物語推進協議会事務局
住所/宮崎県小林市堤108番地1 八幡原市民総合センター
TEL/0984-22-3020
ホームページ https://www.kitakirishima.com
photo:ULALA
text:アマキン
【PROFILE/アマキン】
本業はクリエイター。アウトドアアクティビティ、DIY、クッキングを得意とすると豪語しながら、すべてはプロフェッショナルには遠く及ばない「素人にしては、まあ上手だな」程度のレベル。
構成:所 隼登
(本記事は宮崎県小林市と協働製作したスポンサードコンテンツです)