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瀬長島ウミカジテラスの主要仕掛け人が明かすオススメの訪問ポイント

まちづくり仕掛け人 街制作室株式会社・渋谷正明さんにインタビュー

移住・定住のキーワードとなる「暮らしやすさ」。県外、市外などから移住者を募るためには、人が集まるまちづくりが求められます。今回は、まちづくりのコンセプトプロデュースに携わる街制作室株式会社の渋谷正明さんに、暮らしやすいまちづくりの極意を伺いました(全2回の前編。後編を読む)。

渋谷さんは1973年札幌生まれ。建築事務所や再開発・都市計画コンサルタントを経て2007年に街制作室に入社。「人を幸せにする施設づくり」を目指し、開発から企画・設計までプロジェクト全体に携わっています。

そんな渋谷さんが手がけた魅力的な施設は数知れず。どの施設も足を運んでみたくなるような、おしゃれなものばかりです。

「公益的な考え方よりは目の前にある課題に向き合うことが大切」、「実際にこの場所で何ができるかということを大切にしている」と、地域に寄り添う施設づくりへのこだわりを語る渋谷さん。

手がけられた成功事例のひとつ、沖縄「瀬長島ウミカジテラス」の誕生秘話について詳しくお話いただきました。

若い人たちのパブリックな島だった瀬長島

瀬長島は、沖縄県豊見城市にあります。もともとは米軍に接収されていた島で、1977年に返還された後、手つかずのまま荒れ放題の状態でした。

ある日、渋谷さんが所属する街制作室が手がけた「かごっまふるさと屋台村」という施設を見たとあるオーナーから、「無人島に屋台村を作りたい」とオファーが入ったといいます。

「現地に視察に行ってみると、繁華街でもなく、町の中心地から車で20~25分かかる立地条件。屋台村には向かないと判断しました」

しかし、渋谷さんの目に入ったのは、目の前に広がる美しい海の風景に斜面地。施設づくりには不利な条件だらけでしたが、渋谷さんは素晴らしい立地だと感じたそうです。

「この島には、夕方になると海からの涼しい風が吹くのです。地元の方はそれを『ウミカジ』と呼んでいました。そんなウミカジを感じながら美しい風景を眺められるテラスが作れたらいいなと、コンセプトはかなり早い段階で作り上げられました」

やるべきこととやりたいことがピンと来ていた、という渋谷さん。

さらに、もともと地元の若者が遊び場として利用する「みんなの島」という側面もあった瀬長島。風景も含めてみんなの場所であり「それぞれの楽しみ方ができる場所を作ろう」という理念の下、プロジェクトが立ち上がっていったといいます。

沖縄の無人島が美しいテラスに!?「瀬長島ウミカジテラス」とは?

瀬長島に吹く「ウミカジ」を感じながらテラスで絶景を楽しむ場所を、と施設名は「瀬長島ウミカジテラス」と名付けられました。コンセプトがそのまま名前になるというほど、明確な方向性によって始まったプロジェクト。

「荒れ果てた無人島に行政と市民が連携し、統一したコンセプトの下で整備をした事により、瀬長島全体で280万人の来場者(2019年)を記録しました。美ら海水族館に次ぐ集客スポットとなりました」

渋谷さんたちは、この場所を一般的な商業施設のような「閉鎖的な空間にすべきではない」と考え、商業スペースの店舗を点在させるデザインを考案したといいます。

「商業施設としてそれなりに売り上げは上げられるという目算があったうえで、パブリックな空間の中にポツポツと施設を建て『すべて開放しましょう』という狙いでした」

車社会である地域の暮らしを鑑み、屋台村のような夜のお店ではなく昼メインのお店を対象としました。さらに、地方都市の住民が感じがちな「行く場所がない」という要望にも応えるべく、若い女性がおしゃれをして出かけられるようなおしゃれスポットとしての演出も。

「少しだけ自慢できる場所を、と考えました。地方に暮らす方はやはり便利なものを求めます。この地域にしかできないおしゃれでかっこいいものという要素もこの施設に組み込みました」

商業スペースの「小さな店舗」へのこだわり

おしゃれをして出かけたくなる場所、という外見的なこだわりだけでなく地域の人たちの将来的な生活にも寄り添う場所をと渋谷さんは考えました。

それが「小さな店舗」へのこだわりです。

「小さな店舗だと初期費用などの面でも出店がしやすいんです。出店へのハードルが下がるので、都心部の大企業だけでなく地域の人たちが挑戦しやすくなります」

地域の人たちの起業の場になることをも考慮していた、というのです。施設にお金を落とすだけでなく、直接的に地域の人たちもお店にかかわることができるという特徴を持たせました。

「おしゃれをしてウミカジテラスに遊びに来ていた女の子が、将来的にはここで働きたいと思ってもらえたらいい。来てお金を使うだけではなく、働きたいと思える場所こそが暮らしやすさにつながるのではと思います」

人々の暮らしの上に成り立つまちづくり

自分のお店を持つという夢をかなえられる場としても魅力的な「瀬長島ウミカジテラス」。

渋谷さんは、こうした地域住民の思いやウミカジテラスへの評価の積み重ねが、最終的に県外・市外からの移住者の目に魅力的に映るようになってくるのではないかと話します。

「生活と働くことは近い存在であるべきです。地方の場合、都心部よりもっと近いところにあるべき。生活値という言葉を使う人もいるのですが、働くことで生まれてくる部分も多いと思います」

地域に暮らしの循環まで考えた施設づくりが、魅力的なまちづくりの起点となるのです。

地域の人たちにもチャンスがある商業施設こそまちづくりの根幹

渋谷さんが語る「瀬長島ウミカジテラス」のコンセプトで筆者が一番魅力的に感じたのは、地域住民の働くチャンスの創出の場として作られていることです。一般的な商業施設のコンセプトは、いかに外部から人を呼び込めるか、大企業に入ってもらって話題性を作ることができるかという要素が多いように感じます。

しかし、渋谷さんが作り上げるコンセプトは真逆といって良いでしょう。

地域住民の暮らしをベースに、その暮らしがより豊かになるような商業施設を、という考え方が、まさに魅力ある移住地づくりの根幹になる部分なのだろうと思います。

筆者は、沖縄には宜野湾に日帰りで立ち寄ったことがあるほどしか行ったことがありませんが、渋谷さんのお話を伺い、瀬長島ウミカジテラスが発信する新しい暮らしの創出を実際に見てみたいと思いました。

写真提供/1.3.4枚目:渋谷正明 アイキャッチ.2.5枚目:瀬長島ウミカジテラス

文/鈴木香里

【PROFILE/鈴木香里】

元テレビディレクター。現在は地方創生系、観光系の記事を中心に執筆するライターです。地域の魅力を発掘し、お伝えする記事を発信していきたいです。

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