移住地・UIJターン先として注目を集める岩手県
リモートワークの普及や経済状況の変化を受け、都心を離れて地方でマイペースなスローライフを送る人が増えています。
そんな中、移住地やUIJターン先として注目を集めているのが岩手県。
支援金・住宅支援などの制度面、都市圏との距離感・アクセスの良さという地理的な優位性、ゆたかな自然と文化という生活環境の魅力という3拍子が揃った岩手県は、UIJターン希望者にとって“選ばれる地方”になっています。
岩手県のUIJターンが人気を集める理由1. 住まい・暮らしのコストが都市圏より大幅に低い
岩手県の持ち家比率は全国トップクラス。土地価格や家賃が安く、同じ収入でも広い住宅・ゆとりある生活が実現しやすい環境が整っています。
特に都市圏の30代・40代にとっては、子育て・住宅ローン・老後資金の不安を軽減できる生活環境です。
岩手県のUIJターンが人気を集める理由2. 全33市町村が移住促進に本腰を入れている
岩手県全域で「移住支援金」「住宅支援」「子育て支援」「奨学金返還支援」などの制度が用意され、自治体ごとに独自性があります。
UターンだけでなくIターン・Jターンに対しても市町村が積極的に受け入れを表明している点は全国的に見ても先進的です。
岩手県のUIJターンが人気を集める理由3. 自然・文化・食が身近にあるゆたかな環境
世界遺産「平泉」、三陸海岸のリアス式海岸、八幡平や早池峰山など、手つかずの自然と四季の風景が生活圏にあり、自然や歴史を身近に感じられます。
郷土文化(南部鉄器・遠野の民話)や郷土料理(わんこそば・前沢牛・三陸の海の幸)も日常に溶け込んでおり、地方ならではの豊かさを実感できます。
岩手県のUIJターンが人気を集める理由4. 東京・仙台からのアクセスが良好
東京からは盛岡まで新幹線で約2時間10分。盛岡~花巻~北上~一関までは新幹線1本でアクセスでき、「首都圏とつながる地方都市」として高い利便性を誇ります。
「盛岡⇄仙台」も高速バス・新幹線で移動可能で、Jターン(地元近郊の地方都市)にも好適な立地です。
岩手県のUIJターンが人気を集める理由5. 仕事の多様性と成長産業の基盤
「岩手には仕事がない」とネガティブなイメージを持たれがちですが、実際には医療・福祉・製造業・IT・農林水産業など多様な職種が存在しています。
近年は盛岡・花巻・北上を中心にテレワーク・複業人材の受け入れも進みつつあり、都市部でのスキルが活かせる企業も増加中です。
岩手県のUIJターンが人気を集める理由6. UIJターン向け相談体制・情報発信が全国トップレベル
専門サイト「シゴトバ・クラシバいわて」は求人+移住支援情報+体験談+支援金申請情報をワンストップで提供しています。
東京銀座には岩手県U・Iターンセンターがあり、仕事や住まいのことを専門スタッフが常駐サポートするだけでなく、毎年、東京・仙台などで移住フェアや就職フェアが盛況で、相談しやすい環境が整備されています。
岩手県のUIJターン支援策と補助金制度
岩手県では、東京圏からのUIJターン希望者に対し、国の地方創生施策に連動した「移住支援金」制度を実施しています。
これは東京23区に在住または通勤していた人が岩手県内に移住し、県が指定する法人の求人に就職した場合に支給される補助金で、単身で60万円、世帯(2人以上)で100万円が支給されます。
さらに令和5年(2023年)4月1日からは子育て世帯への支援が拡充され、18歳未満の子どもを帯同して移住した場合は子ども一人あたり100万円を上乗せ支給する制度となりました。
例えば小さなお子さん2人を連れて家族で移住する場合、支給額は合計300万円。この大幅な加算は全国的にも手厚い支援策であり、子育て世帯の地方移住を強力に後押ししています。
支給を受けるためには、移住前5年以上東京23区に在住または通勤していたことや移住後に県内の移住支援金対象企業に正規雇用され継続勤務する意思があることなど、いくつかの条件があります。
また転勤ではなく新規就職であることや、申請は転入後3ヶ月以上1年以内に行う必要がある点にも注意が必要です。
これらの詳細な要件は岩手県公式サイトに掲載されていますので、該当しそうな方は確認してみてください。なお、「移住支援金」はいわて若者移住支援金など他の類似支援金との重複受給ができない点も覚えておきましょう。
いわて若者移住支援金
岩手県独自の制度として、東京23区以外の東京圏から移住する39歳以下の若者に向けた「いわて若者移住支援金」も用意されています。
こちらはUIターン希望の若者や新卒者の経済的負担を減らすための支援金で、例えば東京圏の大学を卒業後に岩手県内の対象企業へ新卒就職した場合は世帯移住の場合25万円、単身での移住の場合は15万円が支給されます。
さらに2023年度からは「子育て加算」(子ども連れの移住)、「18~25歳加算」(若年層の移住)、「女性加算」(女性の移住)といった追加支援も設けられ、より幅広い若者層のUIターンを後押ししています。
例えば若者夫婦が小さなお子さんを連れて移住・就職した場合、条件に応じて複数の加算が適用され、支給額が増える仕組みです。
地方就職支援金
また、岩手県は東京圏の大学に通う学生が岩手で就職活動を行う際の交通費や、その後実際に移住する際の引越費用を支援する「地方就職支援金」も実施しています。
これは在学中から岩手での就職活動をサポートするユニークな制度で、例えば交通費は最大15,200円、引越費用は最大108,000円まで補助されます。
対象は東京都内に本部がある大学等に在学し、その後岩手県内に移住・就職する学生で、岩手県内の多くの市町村がこの制度を採用しています。
将来Uターン就職を考えている岩手出身の学生さんなどは、ぜひ活用を検討すると良いでしょう。
盛岡市UIJターン促進支援金
盛岡市では東京圏から市内に移住し就職または起業した方に対し、経済的負担を軽減する目的で「盛岡市UIJターン促進支援金」を支給しています。
支給対象者は岩手県の移住支援金または若者移住支援金の交付決定を受け、市内企業に勤務していることなどの要件を満たす方で、世帯あたり一律10万円が支給されます。
つまり、県からの100万円(+加算)とは別に、市からさらに10万円受け取れるイメージです。盛岡市へのUターンを考えている方は、このような市独自の上乗せ支援も見逃せません。
そのほかのUIJターン支援金
盛岡市以外でも、例えば花巻市ではUIJターン就業者に奨励金を交付する制度や、金ケ崎町では若年層の移住者に対し家賃補助を行う制度があります。
また住田町・大槌町では奨学金返還を支援する助成金、二戸市では移住者向けのお試し住宅体験や住宅リフォーム補助など、多彩な支援策が展開されています。
各市町村ごとに内容や条件は異なりますが、UIターン希望者にとって金銭面・生活面で心強い制度ばかりです。
移住先の自治体がどんな支援を行っているか、事前によく調べて上手に活用しましょう(後述の「全33市町村の特徴紹介」でも一部触れています)。
岩手での仕事探しとUIJターン就職支援
「地方に移住したいけど岩手には仕事がないのでは?」と不安に思う方もいるかもしれません。しかし現在の岩手県では有効求人倍率が約1.2倍(2023年度平均)と求人件数が求職者数を上回っており、決して仕事が極端に少ない状況ではありません。
むしろ製造業や建設業、医療・福祉、IT関連まで幅広い業種で人材募集が行われており、地域によっては深刻な人手不足となっている分野もあります。
「岩手は仕事がない」というイメージはもう古く、適切に情報収集すればUIターン転職のチャンスは十分に見つかるでしょう。
岩手県はUIターン希望者向けに就職支援の窓口や求人情報サイトを充実させています。
東京都内には銀座のいわて銀河プラザ内に「岩手県U・Iターンセンター」が設置されており、平日夜間や土日を利用した就職相談会も定期的に開催されています。
専門の職業アドバイザーが首都圏在住のUIターン希望者の相談に無料で対応してくれるので、「地元に戻りたいがどんな仕事があるか分からない」という在京の方には心強い存在です。
同センターでは毎月「お仕事帰りの相談会」などのイベントも行われており、仕事終わりに気軽に立ち寄ってキャリア相談をすることも可能です。
シゴトバ・クラシバいわて
岩手県全体の就職情報を集約した公式サイト「シゴトバ・クラシバいわて」には県内企業の求人情報が多数掲載されており、UIターン希望者向けに移住支援金の対象求人も一目で分かるようになっています。
前述した移住支援金を受け取るにはこのサイト(マッチングサイト)に掲載された対象法人の求人に就く必要があるので、まずは希望職種の求人があるか検索してみると良いでしょう。
サイト名の「シゴトバ・クラシバ」は「仕事場+暮らし場」の意味で、仕事探しと暮らし情報が一体となった岩手ならではの総合情報プラットフォームです。
さらに県内各地のインターンシップ情報や、UIターン経験者の体験談記事なども掲載されており、移住後の具体的な働き方・暮らし方をイメージするのにも役立ちます。
岩手県全33市町村の特徴紹介:移住先選びの参考に
岩手県内の全33市町村それぞれについて、移住先としてのおもな特徴や魅力をまとめて紹介します。
広大な岩手県は地域ごとに気候風土や産業、生活環境が異なり、都市部から山村・離島部まで多彩な選択肢があります。
ぜひ各地域の個性を知り、あなたに合った移住先探しの参考にしてください。
盛岡市(もりおかし)
岩手県の県庁所在地で最大の都市(人口約29万人)。新幹線が停車し東京から最短2時間強と交通至便です。
商業施設や医療機関が充実しており、就職先の選択肢も県内最多。市街地から車で30分圏内にスキー場や温泉、渓流など自然も豊富で、都市の便利さと自然環境のバランスが取れた暮らしを求める方におすすめです。
古くから南部藩の城下町として文化が育まれ、「わんこそば」「冷麺」「じゃじゃ麺」の盛岡三大麺など、豊かな食文化が発展しています。
岩手県の中でも特にUIJターン受入に積極的で、独自の支援金制度や移住体験住宅も整備されています。
八幡平市(はちまんたいし)
岩手県北西部、秋田県境に位置する山岳都市。雄大な八幡平や安比高原などを擁し、トレッキングやスキーなどアウトドア派に人気の地域です。
夏は涼しく避暑地として、冬はウィンタースポーツを楽しめます。
観光業が盛んですが、リモートワーク移住にも適した静かな環境で、移住者向けに空き家バンクや住宅支援もあります。温泉が点在し、四季折々の景観は抜群です。
滝沢市(たきざわし)
盛岡市の北隣に位置し、近年著しく発展を遂げているベッドタウン。
人口は約5万5千人と増加傾向で、盛岡中心部まで車や電車ですぐ通勤圏内です。
市内には岩手県立大学や岩手医科大学の新キャンパスがあり、文教地域として学生や若い世代も多く住んでいます。
大型商業施設や新興住宅地が広がる一方で、牧歌的な田園風景も残り、子育てしやすい落ち着いた環境です。都市近郊型の移住を望む方に適しています。
雫石町(しずくいしちょう)
盛岡市の西方に位置する自然豊かな町。名湯鶯宿温泉や高級リゾートホテル、スキー場を有し観光地として有名です。
また日本有数の民間農場「小岩井農場」があり、新鮮な乳製品や四季のイベントで知られます。
盛岡市中心部へ車で30分程度と通勤圏でもあり、田舎暮らしをしながら都市の仕事に通う二地域居住も可能です。
雄大な岩手山を望む風景と澄んだ空気が魅力で、近年はテレワーク移住者にも注目されています。
葛巻町(くずまきまち)
岩手山の北方に広がる山間の町で、冷涼な高原気候を活かした酪農とワイン生産が盛んです。
町営のワイナリー「くずまきワイン」は全国的にも知られ、ワイン好きには魅力的な土地です。
また風力発電など再生可能エネルギー先進地としても注目され、「エコ・エネルギータウン」を掲げています。
人口約5千人と小規模ですが、地域住民の交流が温かく、スローライフを送りたい方に適した環境です。
岩手町(いわてまち)
岩手県のほぼ中央に位置し、県名の由来にもなった町。農業が基幹産業で中でもにんにくや春みどりキャベツの生産量が日本有数を誇ります。
「いわて銀河鉄道」が通り盛岡へもアクセス可能。町内に工業団地もあり、食品加工などの企業誘致も進んでいます。
自然薯やそばなど食の魅力も豊かで、田園風景の中で自給自足的な暮らしをしたい人にも人気があります。
紫波町(しわちょう)
盛岡市と花巻市の中間、北上川流域の肥沃な土地に広がる町。果樹栽培が盛んで、中でもリンゴやブドウは県内トップクラスの産地です。
町中心部には図書館や商業施設、住宅地を集約した「オガールプロジェクト」で注目を集めました。
オガールには起業支援施設や子育て支援施設もあり、地方創生の成功例として全国から視察が訪れるほどです。
盛岡への通勤圏ながら独自の発展を遂げる紫波町は、起業やテレワークにも魅力的な環境でしょう。
矢巾町(やはばちょう)
盛岡市の南隣に位置し、岩手医科大学病院など医療関連施設が充実した町。
計画的に新興住宅地が造成され人口増加中で、スーパーや公園など生活利便施設も整っています。
町は子育て支援にも力を入れており、待機児童ゼロや独自の子育て応援施策もあります。穏やかな郊外暮らしを望むファミリー層に人気のエリアです。
花巻市(はなまきし)
岩手県内陸南部の拠点都市。詩人・宮沢賢治の故郷として知られ、市内各所に賢治ゆかりのスポットがあります。
いわて花巻空港を有する交通の要衝で、東京直行便も発着。花巻温泉郷など良質な温泉が数多く点在し観光客にも人気です。
製造業の工場も多く雇用があります。自然豊かな田園都市で、のびのび子育てできる環境と地域医療の充実から、UIJターン先としても安定した人気を誇ります。
北上市(きたかみし)
岩手県南部の工業都市で、東北有数の工業団地を擁しメーカー企業が数多く進出しています。
自動車関連や精密機械の工場が多く、製造業での雇用機会が豊富です。
また北上川沿いの平野部に位置し、交通は東北新幹線・高速道路の北上駅/ICがあり東京へのアクセスも良好。
春の北上展勝地の桜並木は日本さくら名所100選に選ばれる絶景で、観光地としても有名です。
商業施設や医療環境も整い、都市機能と自然が調和した暮らしやすい街です。
遠野市(とおのし)
柳田國男の『遠野物語』で知られる民話の里。カッパ伝説や座敷わらし伝承など日本の原風景的な文化が色濃く残る地域です。
農業と観光が主産業で、伝統的な南部曲り家集落など昔ながらの農村風景が広がります。
近年はテレワーク拠点整備や古民家改修による移住促進にも力を入れており、スローライフ志向の移住者に人気が出てきています。
都会の喧騒を離れ、自給自足に近い暮らしや地域交流を楽しみたい人には魅力的な土地でしょう。
一関市(いちのせきし)
岩手県最南端、宮城県境に位置する市で、世界遺産の平泉町に隣接しています。
東北新幹線・東北道の一関駅/ICがあり交通至便。農業が盛んでもち米の産地として有名なほか、工業団地には食品加工や機械製造の企業も立地し雇用があります。
郊外には名勝厳美渓や温泉もあり観光資源も豊富です。
市街地は商店街や病院など生活利便性が高く、広域合併で旧町村部まで含めると山間部の田舎暮らしから市街地暮らしまで多様な選択肢があります。
奥州市(おうしゅうし)
2006年に水沢市など5市町村が合併して誕生した県南の中核市。人口約11万人と県内第3位で、旧水沢市エリアにはJAXAの宇宙研究施設(観測所)があるなど先端分野の拠点もあります。
日本三大和牛の一つ「前沢牛」(旧前沢町)の産地としても知られ、農畜産業が盛んです。
北上川沿いに広がる平野は稲作地帯で、農村風景が美しい一方、市街地には商業施設や病院も揃い生活利便性は高めです。歴史的には奥州藤原氏ゆかりの地であり、文化遺産も豊富です。
西和賀町(にしわがまち)
岩手県南西部、秋田県境の山あいに位置する人口約5千人の町。豪雪地帯として知られ冬は積雪が多いですが、その雪を活かした雪国文化やウィンタースポーツが楽しめます。
名湯夏油高原温泉郷やほっとゆだ温泉など温泉資源も豊富で、特に冬の雪見風呂は格別です。
山菜やきのこなど山の幸にも恵まれ、「西わらび」はブランド品。自然志向の移住者からは根強い人気があり、古民家や空き家を活用した移住も進んでいます。
金ケ崎町(かねがさきちょう)
奥州市と北上市に挟まれた立地で、盛岡~仙台の中間地点に近い町。
東北道金ケ崎ICもあり車移動に便利です。広大な工業団地にトヨタ自動車関連の部品工場などが立地し、若年層の雇用受け皿になっています。
また水田地帯でもあり米どころとして農村風景が広がります。町では若者夫婦世帯向けに家賃補助制度を設けるなど移住定住支援に意欲的で、住宅取得や子育てへのサポートも手厚いです。
“ほどよく田舎でほどよく便利”な暮らしを実現できるエリアです。
平泉町(ひらいずみちょう)
2011年に「平泉の文化遺産」として中尊寺や毛越寺などが世界文化遺産登録された歴史の町。
一関市の北隣に位置し、奥州藤原氏が築いた平安絵巻さながらの史跡が点在します。
観光業が主要産業で年間多くの観光客が訪れますが、町自体は人口約7千人と静かでのどかな環境です。
田園と山々に囲まれ、文化的薫り高い暮らしが送れるでしょう。観光シーズン以外は穏やかな日常が流れ、地域住民の結びつきも強い土地柄です。
宮古市(みやこし)
岩手県沿岸北部の中心都市で、三陸海岸有数の漁業基地です。名勝浄土ヶ浜をはじめリアス式海岸の風光明媚な景勝が多く、観光地としての一面もあります。
三陸鉄道や高速道路延伸で盛岡など内陸からのアクセスも改善されました。
2011年の東日本大震災では津波被害を受けましたが、市街地は高台移転など復興が進み、防災面で安心できる街づくりが進行中です。
新鮮な海の幸を味わえるのも魅力で、水産加工業など地元産業へのUIターン就職のニーズも高い地域です。
大船渡市(おおふなとし)
岩手県沿岸南部、三陸沿岸を代表する港町。天然の良港をもち、サンマや秋鮭など四季折々の水揚げで知られる漁業の街です。
同時に水産加工や造船などの製造業も発達し、沿岸地域の産業拠点となっています。
震災では大きな被害を受けましたが、市中心部は高台移転しショッピングモールや医療施設も新設されるなど、新しい街並みが形成されました。
温暖な気候で冬も内陸ほど寒くなく、海沿いの穏やかな暮らしを希望する人には魅力的です。UIJターン者向けの復興住宅も整備されています。
陸前高田市(りくぜんたかたし)
岩手沿岸南部の市で、震災津波で市街地が壊滅的被害を受けたエリアです。
現在は高台に市街地を造成し、真新しい公共施設や商業エリアが誕生しています。象徴的な「奇跡の一本松」がある高田松原津波復興祈念公園には全国から観光客が訪れています。
産業面では農業(米・野菜)と漁業(広田湾のカキ養殖など)が中心ですが、復興事業を経て新たな企業進出も見られます。
震災を乗り越えた住民の結束が強く、新しく移り住む人々も温かく迎え入れてくれるでしょう。地方創生のモデル都市を目指しており、起業支援なども行われています。
釜石市(かまいしし)
三陸沿岸中部の港湾都市で、近代日本の製鉄業発祥の地として有名です。
新日鐵住金の製鉄所があり工業都市の顔を持つ一方、2019年ラグビーワールドカップの開催都市となり「鉄とラグビーの街」として全国に名を知られました。
震災では大津波に襲われましたが、防潮堤や水門の整備、防災集団移転など復興が進みつつあります。
水産業ではサンマやホタテの水揚げが多く、海の幸にも恵まれています。沿岸部では珍しく鉄道(釜石線)で内陸と結ばれており盛岡へもアクセス可能です。
震災後の人口減少に歯止めをかけるべくUIターン促進に積極的で、移住者向け支援や空き家情報提供も行っています。
住田町(すみたちょう)
内陸沿岸間の山あいに位置する町で、岩手県唯一の海に面していない沿岸地域の自治体です。
林業が盛んで良質な木材の産地として知られ、近年は木造の公共施設建築など「住田方式」と呼ばれる地域材活用が注目されました。
特産のしいたけ等を使った地域おこしや、子育て支援策(高校生まで医療費無料など)にも力を入れています。
静かで自然豊かな環境ながら、車で大船渡や気仙沼方面へも出やすく、沿岸と内陸の中間拠点として暮らすことができます。地元企業への就職支援金制度もありUターン者に優しい町です。
大槌町(おおつちちょう)
三陸沿岸中部、釜石市の北隣に位置する町。入り江の穏やかな湾を抱える漁業の町で、サンマ・秋鮭・養殖カキなど海の幸が豊富です。
震災で町役場を含む市街地が壊滅的被害を受けましたが、高台移転した新市街地に役場や商業施設が再建されました。
復興過程で国内外から多くのボランティアやUIJターン者を受け入れた経緯があり、今も移住者が地域で活躍しています。奨学金返還支援やUIターン就業者助成金など独自支援もあります。
美しい三陸の海を望む暮らしに加え、人との絆を重んじる土壌が魅力です。
山田町(やまだまち)
三陸沿岸中部、宮古市と釜石市の中間に位置する港町。リアス海岸の山田湾は波静かで養殖漁業に適し、牡蠣やホタテの養殖が盛んな全国有数の産地です。
新鮮な魚介類は地域の誇りで、移住者にも人気のグルメ要素です。震災では壊滅的被害を受けましたが、防潮堤や高台団地の整備で安心安全の街づくりが進みました。
町は移住相談に積極的で、空き家改修補助やお試し住宅も提供しています。海と山に囲まれた環境で、釣りやシーカヤックなどマリンレジャーを楽しみながら暮らすことができます。
岩泉町(いわいずみちょう)
岩手県北東部の広大な町で、面積は東京23区とほぼ同じほどあります。海岸線から内陸山岳地帯まで含み、特に石灰岩地形の龍泉洞(日本三大鍾乳洞の一つ)が有名な観光スポットです。
森林資源が豊富で林業が主要産業の一つ。酪農も盛んで岩泉ヨーグルトなどの乳製品は高品質と評判です。
夏は涼しく、自然の中で自給自足に近い暮らしをしたい人には最適です。
町内はエリアによって雰囲気が大きく異なるため、移住希望エリアの下見は綿密にするとよいでしょう。
近年は豪雨災害も経験しましたが、防災意識を高め地域一丸で復興に努めています。
田野畑村(たのはたむら)
岩手県北部沿岸の村で、人口は約3千人。リアス海岸が織りなす絶景北山崎断崖を有し、「陸中海岸国立公園」のハイライトとも称されます。
村の産業は漁業と酪農が中心で、ウニやコンブなど海産物の質が高く、生乳生産も盛んです。村営のホテルなど観光業も小規模ながらあります。
小さな村ですが子ども医療費無料化など子育て支援も行き届き、アットホームな環境で子育てしたい移住者にも向いています。
都市部からのアクセスはやや不便ですが、その分手つかずの自然とゆったりした時間が流れる魅力的な土地と言えます。
久慈市(くじし)
岩手県北部沿岸の拠点市で、NHK朝ドラ『あまちゃん』の舞台として一躍有名になりました。
北限の海女が素潜り漁を行う小袖海岸や、日本有数の琥珀(こはく)産出地として知られます。
漁業ではウニや秋鮭が名産。内陸部では山葡萄からワイン造りも行われています。
観光知名度が上がったことで移住希望者も増えており、市では空き家情報提供や就職支援に力を入れているほか、八戸市(青森県)と近く交流も多いエリアです。
地方都市ながらスーパーや病院も揃い生活に不便はありません。海と山の幸に囲まれた暮らしが満喫できるでしょう。
洋野町(ひろのちょう)
北部沿岸に位置し、2006年に種市町と大野村が合併して誕生した町。
太平洋に面する種市地区はウニ養殖や漁業が盛んで、南部もぐり(海女)の伝統があります。
内陸の大野地区は酪農と高原野菜の産地で、特にブルーベリーは有名です。
町のシンボルとして風力発電の風車群も立ち並び、クリーンエネルギー先進地でもあります。
広域合併で海と山両方の暮らしが選べる点が特徴で、静かな環境を求める人に人気です。
新幹線最寄りの八戸駅から車で約1時間ほどと、首都圏からの移動も意外にスムーズです。
野田村(のだむら)
北部沿岸の小さな村で、太平洋に面した野田湾では荒海ホタテの養殖が行われ高品質と評価されています。
古くから製塩が盛んな土地で、「のだ塩」は名産品です。震災では高台に避難した全村民が無事だった奇跡の村として知られ、防災意識の高さは全国から注目されました。
現在は復興工事も進み、新しい道路や住宅地が整備されています。村は移住者受け入れにも前向きで、空き家改修費補助や住宅支援などを用意。
ひっそりとした海辺の暮らしを実現したい人には最適でしょう。
普代村(ふだいむら)
北部沿岸の村で、野田村の北隣に位置します。こちらも震災時に高さ15.5mの防潮堤が村を津波から守り抜いたことで全国ニュースとなりました。
漁業と農林業が主産業で、ワカメやコンブの養殖、山側では畜産や林業があります。
観光地こそ少ないものの、静かで自然豊かな環境が魅力で、近年はテレワーク移住者も見られます。
村は小規模ゆえ人間関係が密で、防災無線で村民に声掛けするなどアットホームな雰囲気です。
地域の一員として溶け込む意欲のある方には居心地の良い土地でしょう。
二戸市(にのへし)
岩手県最北端の内陸市で、青森県と接しています。東北新幹線の二戸駅があり盛岡から約30分、東京からも直通3時間程度です。
かつて南部氏の城下町で、漆器など伝統工芸の南部裂織や馬産地としての歴史があります。
現在はIC工場など先端産業の誘致も行われ、雇用創出に努めています。
周辺は良質な水と寒暖差を活かした果樹栽培が盛んで、特にももやリンゴが特産。自然公園も多くアウトドア好きにも魅力です。
都市機能と自然環境を両立した暮らしを送りたい方に適しています。
軽米町(かるまいまち)
北部内陸の高原の町で、夏でも冷涼な気候を活かした葉たばこや雑穀の栽培が有名です。
特に雑穀のアワ・ヒエ生産は日本トップクラスで、「雑穀の里」として町おこしをしています。
また養鶏も盛んでブランド卵も生産。静かな農村環境ですが八戸自動車道のICがあり、八戸市へ車で30分程度と買物圏内です。
町では定住促進住宅の提供など移住支援にも取り組んでおり、のびのびと農的生活をしたい人におすすめです。
淡雪山や折爪岳の山並みが美しく、隠れた紅葉の名所もあります。
九戸村(くのへむら)
北部内陸の村で、江戸時代に南部氏に反乱した九戸政実の名で知られる歴史の地です。
酪農が盛んで、牛乳やヨーグルトの生産が基幹産業。特産の短角牛によるブランド牛「久慈牛」の生産も行われています。
山村ならではの狩猟文化も根付いており、ジビエ料理の提供など地域資源の活用に取り組んでいます。
人口減少が進む中、村では子育て支援や移住者受入に積極的で、村営住宅への優先入居や就農支援などを実施。濃密なコミュニティの中で地域貢献しながら暮らしたい人には向いているでしょう。
一戸町(いちのへまち)
二戸市の南隣に位置する町で、その名の通り「二戸の一つ手前」の町です。
国の史跡御所野遺跡(縄文時代後期の集落跡)があり、縄文文化が色濃く残る地域でもあります。
農業では岩手県を代表する乳牛酪農が盛んで、広大な牧草地帯が広がります。
乳製品やアスパラガスなどの高原野菜が特産です。町の西部は八幡平の山麓で自然豊か、東部は二戸市街地にも近く便利、とエリアによって暮らしの様子が異なります。
高速道のICやいわて銀河鉄道線もあり交通の便も良好。地域医療体制の強化や子育て支援にも力を入れており、安心して永住できる町と言えるでしょう。
以上、岩手県内33市町村の特徴を紹介しました。それぞれの地域に固有の魅力や強みがあり、「岩手県内で暮らす」と一口に言っても多種多様なスタイルが選べます。
ぜひ現地に足を運んで雰囲気を肌で感じたり、移住者の体験談を参考にしたりしながら、自分と家族にとってベストな移住先を見つけてください。
岩手へのUIターンで豊かな暮らしを実現しよう
人口減少が課題とされる岩手県ですが、その分UIターン希望者には手厚い支援策が用意されています。
経済面では岩手Uターン補助金(移住支援金)をはじめとする各種支援金がスタートアップを後押しし、仕事面では求人情報の提供やフェア開催で新天地でのキャリア構築を支援しています。
自然に囲まれたゆとりある生活環境や、地域の人情味、そして子育てしやすい落ち着いた社会環境は、都会では得難い豊かな暮らしをもたらしてくれるでしょう。