× CLOSE

ゲストハウス経営成功の秘訣、町おこしプロが説く実践的アドバイス

空き家をゲストハウスとして活用 町おこしのプロ・森田陸さんとは?

静岡鉄道のパラレルワーカーとして勤務する傍ら、下田でゲストハウス事業を展開している森田陸さん。

森田さんは「合同会社コアキナイ研究所」の代表社員で、静岡市、下田市、台湾の3拠点で地域活性化事業を展開しています。空き家をゲストハウスとして利活用する取り組みなどを行なっており、下田のゲストハウスでは、単なる事業としての工夫以上の地域活性化のための取り組みが見られます。

今回は、“町おこしのプロ”森田陸さんに、自身のゲストハウス事業について、そしてワーケーションの本質について話を伺いました。

海沿いの地域密着型ゲストハウス

「地域に入り込みたい」

地域に深く関わる経験がなかったという森田さんは、そんな思いで地域活性化事業を始めたといいます。海が好きだったということもあり、事業展開拠点のひとつに下田を選びました。

そんな海好きの森田さんは、「Beachside Base Sotoura」というゲストハウスを下田に展開しています。

「下田は、電車でも車でも行きやすい立地条件も魅力ですが、やはり一番はビーチ。下田のほぼ海沿いにある、築60年の空き家をゲストハウスとして利活用しています」

森田さんが運営するゲストハウスからは、海が一望できるという贅沢なオプション付き。周辺には海の幸を味わえるお店も充実しています。時期によってはサマースポーツの「SUP」も体験できる、まさに地域密着型のゲストハウスといえます。

空き家の利活用以外の役割も

Beachside Base Sotouraは、会員になった人が使える、タイムシェア型のワーケーションハウスです。タイムシェアとはいわゆる「時間貸し」で、9時~18時の利用可能時間内で枠を予約し利用するしくみです。

場所貸しの「スペースシェア」とは異なり、時間が来たら次に予約している会員へ部屋を譲る、という流れになっています。法人契約する利用者もいるそうで、年間で100人ほどの人たちが出入りする、活気を帯びたゲストハウスなのです。

「このプロジェクトは、『空き家の利活用』や地方拠点の創出を促す『関係人口創出』、旅行客も取り込んでいく『交流人口拡大』の3つの要素を融合させたビジネスモデルです」

各自治体が抱える「空き家問題」を解決するだけでなく、昨今需要が高まっているコワーキングスペースを下田で提供することで各企業や個人事業主の拠点づくりの一助にもなります。さらに、下田の町を観光スポットとして楽しむ層へのアプローチも欠かしません。この3つの要素を持ったBeachside Base Sotouraは、人が集まる拠点の役割を果たしています。

ポイント制で下田の閑散期対策も

森田さんがこのプロジェクトで掲げる狙いのひとつに「下田特有の繁閑ギャップをなくすこと」があります。海水浴場が充実している下田は、夏の時期になるとどの宿も満室、海水浴場も人であふれかえるほど。しかし一方で、閑散期に入ると一気に人がいなくなってしまうのです。

そこで、森田さんは繁閑ギャップをなくすためにBeachside Base Sotouraではポイント制を導入しました。施設を利用するときに、ポイントが必要になる仕組みとしたのです。

「たっぷり畳主(契約期間3年)」の区分では10万5000円で30ポイント(年間利用)、「ちょっぴり畳主(契約期間3年)」の区分では6万円で15ポイント(年間利用)、「おためし畳主(契約期間1年)」の区分では2万円で4ポイント(年間利用)が利用者に与えられます。

繁忙期は多くのポイントが必要となるように設定されており、閑散期にはポイント消費が抑えられる仕組みになっているので、利用者に閑散期利用を促すことができるというわけです。

「サマースポーツとして知られるSUPは、実は秋でも体験できるスポーツなんです。閑散期利用をしてもらうことで、閑散期の下田の新たな魅力発掘にもつながります」と語る森田さん。「繁閑ギャップをなくそう」とただ呼びかけるだけではなく、サービスを工夫して利用者の行動変革を促す。事業者だからこそできる、地域への貢献方法を森田さんからは学ぶことができます。

ゲストハウスでの交流が新たなビジネスの可能性を開く

「利用者の中には、アジの干物体験をこのゲストハウス滞在時に体験し、のちにアジの干物体験パッケージサービスを始めた人もいます。このように、地域とのかかわりを通じて新たなビジネスが生み出されることが、持続可能な地域活性化に欠かせない要素であるといえると思います」

森田さんがゲストハウスの会員としてターゲットにしているのは、定期的に下田に足を運ぶ法人や個人事業主です。様々な地域を点々とするのではなく、特定の地域に通う人々こそがキーパーソンだといいます。何度も足を通うことで地域の魅力発見にもつながっていくというのです。

森田さんは地域ビジネス創出の促進には、ゲストハウス会員同士の協調が重要だといいます。

「チームビルディング」を目的とした泊まり込み合宿を行う法人や、ヨガ教室の合宿場として利用する個人事業主など、彼らが交流することで新たなビジネスの創出も期待できるといいます。仕事をするという同じ目的を持ったメンバーだからこそ、ビジネスを絡めた交流が可能になるというわけです。

下田を拠点にする人をいかに増やすか

森田さんは、会員から紐づけられた「関係人口」の拡大が重要だといいます。関係人口とは、利用者の家族や関連する団体のメンバーを含めた、“繋がりがある人口”のこと。関係人口が会員を通じてゲストハウスを利用してくれれば、より下田の魅力を広く発信できる可能性につながります。

そして、家族を連れてテレワークをする「家族ワーケーション」実施者の家族や、訪日外国人を中心とした旅行者集団といった層も観光を通じてBeachside Base Sotouraの関係者になってもらうことで、会員になっていない彼らにとっても下田が拠点になりうるのです。

「ワーケーションの本質は場所だけがあればよいわけではありません。ビジネスが生まれなければならない。地域の価値が創出されなければ流行り廃りで終わってしまうのです」

合同会社コアキナイ研究所の設立は2020年。「10年で10軒の空き家を再生する」という経営理念を掲げた同社の今後が、とても楽しみだと感じました。

まとめ:場所の提供だけにとどまらない策が地域活性化へとつながる

森田さんが盛んにおっしゃっていたキーワードに「ビジネスの創出」があります。

働く場所の提供だけであれば多くの企業が展開していることでしょう。しかし、森田さんは利用者が地域と関わりを持つことを最重要視しています。会員が下田に拠点を構えることによって地域との関わりが深まると同時に、その場にビジネスが創出されるという考えです。

筆者もさまざまなワーキングスペースを利用してきた経験がありますが、スペース提供だけではその場所の地域性はなかなか見えてこないというのが実情です。本来であれば、仕事を離れた時に目にするもの、口にするもの、耳にするものこそ、多くのインスピレーションを与えてくれるものであり、新しいアイディアにつながるはずです。

「楽しいことが基本」という森田さんの取り組み。将来的に筆者自身も森田さんのゲストハウスを利用し、窓から一望できる海のもとで仕事をしてみたいと想像しました。

写真提供/(一社)下田市観光協会

インフォメーション

ゲストハウス「Beachside Base Sotoura」Facebookページ

文/鈴木香里

【PROFILE/鈴木香里】

元テレビディレクター。現在は地方創生系、観光系の記事を中心に執筆するライターです。地域の魅力を発掘し、お伝えする記事を発信していきたいです。

【関連記事】伊豆・下田の紹介記事はこちら!

伊豆下田に行ったら迷わずGO! NanZ VILLAGEは地元に根ざした新型商業施設 移住者も続々⁉︎

日本百名月と絶景朝日と海抜0m温泉を楽しめる”穴場温泉”東伊豆・北川(ほっかわ)温泉


  • この記事が気に入ったらcazual(カズアル)に いいね! / フォロー しよう

  • 漏れない”超精密タンクキャップ”!
  • おすすめ!しょうゆ香るアウトドアソース

クラウドファンディングサイト「Fannova」

クラウドファンディングサイト「Fannova」

L-Breath

新着記事

PAGE TOP
COPYRIGHT © SHUFU TO SEIKATSU SHA CO.,LTD. All rights reserved.