「美しさ」が際立つ7年ぶりの新作
今年2020年、スウェーデンの老舗ブランドであるプリムスから新たなシングルバーナーが誕生しました。
その名もエッセンシャルトレイルストーブ。ガスカートリッジの上部に接続する直結型シングルバーナーとしては、前作から7年越しとなる新作です。
初心者からベテランまですべての人にとって「エッセンシャル(必須)」なものとなるべく開発されたというエッセンシャルトレイルストーブは、まずその美しいデザインが特徴。
真上から見るとおにぎりの形にも見えるプレートや、スラリと細いラインで構成されたゴトク。
従来のシングルバーナーのどれにも似ていない強烈な個性を持ちながら、どこか上品さを感じさせるたたずまいが魅惑的です。
しかしエッセンシャルトレイルストーブは決して見た目が良いだけのオシャレ雑貨ではありません。
デザインの美しさ以上に光る道具としての魅力、フィールドで活かされる機能美こそが最大の持ち味です。
プリムスの直結型シングルバーナーのスペックを比較
比較したのはプリムスが日本国内で正式に販売している、以下の直結型シングルバーナー4モデル。エッセンシャルトレイルストーブには「P-TRS」というモデルナンバーが与えられています。
- P-TRS エッセンシャルトレイルストーブ
- P-115 フェムトストーブ
- P-153 ウルトラバーナー
- IP-2243PA 2243バーナー
こうして比較してみると、まず目に飛び込んでくるのがエッセンシャルトレイルストーブの価格の安さ。
プリムスのシングルバーナーのなかでもとくに高い人気を誇るP-153ウルトラバーナーの半額に近い価格です。
これからキャンプや登山などを始ようとしている方にとって、とてもありがたいポイントになります。あるいはすでに使用しているシングルバーナーのサブ機としても気軽に導入できるでしょう。
最大出力に関しては、もっともコンパクトなP-115フェムストーブとほぼ同じ。お湯を沸かしたり簡単な料理をするのに必要十分なパワーです。
P-153より数値的にはだいぶ劣っていますが、これはあくまで全開にしたときの数値。状況にもよりますが、実際の使用において数値ほどの差が感じられるとは限りません。
比較した4モデルのなかでは、エッセンシャルトレイルストーブの収納サイズが大きめであることもわかります。これはゴトクを折りたたむことができない構造によるもの。
そのため荷物を極限までコンパクトにまとめたい方にとっては、少々向いていない製品であるといえるでしょう。
テーブルの上で邪魔にならないコンパクトサイズ
確かに収納サイズはそれほど小さくはありません。しかし、実際に使用するときにはかなりコンパクトに感じられます。
110サイズのガスカートリッジと組み合わせるとそのコンパクトさが際立ち、350mlのジュースの缶と大きく差がないサイズ感。そのためテーブルに乗せてもスペースを圧迫しません。
ソロ用の小さなテーブルでインスタントラーメンやコーヒーを作る。そのような使い方をするのに最適なシングルバーナーの1つです。
低重心を実現したラミナー・フロー・バーナーテクノロジー
エッセンシャルトレイルストーブ最大の特徴ともいえるおにぎり型のプレート。このプレートは「ラミナー・フロー・バーナー」という新たな機構です。
ガスカートリッジから送られるガスと空気穴から取り込んだ酸素を、空洞となっているバーナーヘッドの内部で混合させるという仕組みを採用しています。
そうすることにより、ガスカートリッジからバーナーヘッドまでをつなぐ混合管を短くすることができるというわけです。
従来の直結型のシングルストーブといえば、重心の高さが弱点の1つでした。
その弱点を克服して低重心化をはかることで、より優れた使い勝手、より安心して使用できる安定性を実現。
これこそがエッセンシャルトレイルストーブに取り入れられた新技術、ラミナー・フロー・バーナーテクノロジーがもたらす恩恵です。
風に強いゴトクの形状
Y字に配置されたゴトクは、バーナーヘッドとクッカーの隙間を吹き抜ける風を防ぐためのデザイン。
さらに火口(ひぐち)を3分割することで、たとえそのうちの1か所の火が風で消えたとしても、残りの2か所は消えないように設計されています。
横からの風を防ぐアイテムとしてウインドスクリーンがありますが、実際に必要になるかどうかは準備段階ではわからないため、場合によっては持って行こうか悩む道具です。
その点、ある程度の風であれば耐えてくれるエッセンシャルトレイルストーブは、荷物のコンパクト化にもひと役買ってくれる存在ともいえるでしょう。
点火装置がない点に注意
エッセンシャルトレイルストーブは点火装置を装備していません。ファイヤースターターやライターなどもあわせて準備しておく必要があります。
シングルバーナーを選ぶにあたり、点火装置は必ずついていてほしいと考える方も少なくはないでしょう。
そのためこの製品が気になっている方が考慮すべき、たった1つの注意点といえます。
しかし、点火装置が備わっていないことは、必ずしも欠点であるとは言い切れません。
現に点火装置を装備していないほうが軽量化においては有利なうえ、まれに故障することもあるため、そもそも必要ないという人も少なからずいるのです。
そして点火装置がついていないからこそ、これだけ美しいフォルムが実現できているようにも思えます。
もちろん点火装置を備えていることのメリットは、多くの人にとって無視できないほど大きいことも事実。
しかしながら点火装置がないという1点のみを理由に選択肢から外してしまうのは、実にもったいないと感じます。それを補って余りある魅力を確実に持っているからです。
多くのアウトドアマンにおすすめしたいエントリーモデル
サイズがコンパクトで出力は必要十分。ゴトクは折りたためないがそのぶんシンプルで堅牢。
直線と曲線が調和したデザインが美しく、初心者でも手を出しやすい手頃な価格設定もまた魅力的。
これらの特徴を持っているのがプリムスの新たなエントリーモデル、エッセンシャルトレイルストーブです。
そしてこの製品の性格をひとことで表現するならば、「フレンドリー」という言葉が適切でしょう。
「コーヒーで一服したい」、「ちょっとした料理を作りたい」といったライトな使い方はもっとも得意とするところで、持ち前の親しみやすさで休日のワンシーンをより楽しいものにしてくれます。
キャンプ・トレッキング・フィッシング・ツーリングなど、さまざまなアウトドアやアクティビティにおすすめしたいこのエッセンシャルトレイルストーブ。
ぜひ一度、実際に手にとってその良さを感じてほしい優秀なアイテムです。
プリムス P-TRS エッセンシャルトレイルストーブ 詳細
収納サイズ:9.5×7.1×9.0cm
ゴトク径:110mm
重量:113g
最大出力:2200kcal/h
ガス消費量:183g/h
価格:4800円(税抜)
写真・文/斎藤純平
【Profile/斎藤純平】
キャンプ、バイクツーリング、スキューバダイビングを趣味とするアウトドアライター。加えてこれから狩猟を始めようかと画策中。何をするのにも基本的にすべて一人で、キャンプもツーリングも思い立ったら即出発。読み手にとって本当に役に立つ情報を発信します。