ウルトラライトギアにふさわしい軽量テント
登山家からキャンパーまで幅広い層に人気のブランド「MSR(エムエスアール)」。
レッドのインナーテントとカラフルなフライシート、そしてデザイン性の高い形は、時代を経ても多くのファンが存在する。
今回は、同ブランドの中でも最軽量クラスのテントを紹介。特にソロキャンプをやってみたい人やウルトラライトスタイルを目指す人は必見だ。
※今回使用したモデルは旧製品で、使用している素材が現行モデルと異なります。その点も踏まえて紹介します。
吊り下げ型で設営がラクちん
紹介するテントは、「FREELITE(フリーライト)2」というモデル。
このテントは、フライシートとインナーテントが別々になったダブルウォールテントなのに、重量が1.3kgと非常に軽く作られているのが特徴だ。
軽量テントをうたううえで重要な点とされているのが、2kgの壁を超えられるかどうか。
2kgより重いとバックパックに入れて持ち運ぶのに重さが出てしまうが、2kgを下回るとあまり負担になりにくいそうだ。よって、フリーライト2はそれを余裕でクリアしている点で優秀だろう。
収納サイズは15×46cmで、2箇所にコンプレッション(アジャスターを使って絞る部品)があるので、ギュッと締めればよりコンパクトになる。靴を並べると、幅は2足ちょうどくらい、長さも靴1足の2倍くらいである。
内容物は、右からインナーテント、フライシート、ポール、そしてペグ。ポールは7000シリーズアルミニウムを使用しているが、現行品はイーストン社製のサイクロンポールというものに変更。航空機の部品に使用されており、弾力性があり折れにくいとのこと。
とはいえ、従来品のポールも十分にしなやかで、設営する際にはなんの問題もない。
ペグはニードルステイクというアルミペグ。1本9.6gと軽く、打点が丸くなっているのでハンマーで打ちやすいようになっている。なお、こちらはすでに生産終了しているため、手に入れるのが難しい。
設営してディテールをチェック
ではテントを詳しく見ていこう。設営方法は動画で紹介しているので、詳しくはそちらを見ていただきたい。
インナーテントはフルメッシュになっており、通気性は抜群。フリーライトは1から3まで展開しており、今回は中間の2人用サイズ。
他のテントと異なるのが、ポールの構造。
一方は二股に分かれてインナーテントの角に挿すが、もう一方は直線に伸びて裾の金具に引っかける。これは推測になるが、この構造によってポールとフックの部品の数を減らし、軽量化を測ったのではないだろうか。
インナーテントは、ポールに引っかける吊り下げ式を採用し、スリーブに通す手間を省略。これにより初心者でも理解しやすく、設営時間を短縮できる。また、四隅にはポールを挿す金具があり、スリーブに通すタイプではないので設営・撤収がしやすい。
ポール構造は他にも違いがある。
天井部にある横に伸びる短いポールである。こちらはメインポールにくっついている状態なので、ショッキングコードに従って連結すればすぐに組み立てられ、この短いポールによって天井部に開放感が生まれる。
中にマットを敷いてみた。入れたのはシートゥサミットのコンフォートプラスS.I.マット レギュラー。マットは1人分の幅なので、2枚入れるとちょうどぴったり。
個人的な使用感としては、定員2名とは書いているが、荷物の置き場などを考えるとキャンプでは1人で使用するのが快適だろうと感じた。
テントの中には、1箇所だけ広いメッシュポケットがついており、スマホだけでなく腕時計や帽子なども収納できる。
フライシートをかぶせてみた。旧製品は15デニール リップストップナイロンを採用し、それに耐水圧1,200mmのコーティングが施されているが、現行品には同じ耐水圧でもコーティングが長期間持続するものを使用している。
生地に触れてみると、手がはっきりと見えるくらいに薄いことがわかる。これほど薄く仕上げたことも軽量化につながったのだとみられる。
天井部にある短いポールは、フライシートの内側にある金具に挿すので、風が吹いてもフライシートが飛ばないようになっている。ここだけでなく、フライシートとポールをくっつけるベルクロがあるので、組み立ての際はすべてつけるように。
ガイコードポイントは前後左右に1箇所ずつあり、計4箇所から地面に伸ばして固定する。
フリーライトはとても軽量のため、少しでも風があると思ったら、面倒と思わずにガイロープを伸ばして固定しよう。
なお別売りにはなるが、MSRの2人向けテントのフットブリントが販売されている。
2人向けというのは、エリクサー2やゾイック2といったテントでも使用できるという意味で、MSRのテントを複数持っている人は兼用できるのが嬉しい。
MSRフリーライト2を使用して気になった点
今回のテントを使用して気になったところは2点。
1点目は結露。
公式ページではインナーテントをフルメッシュパネルにすることで結露を防止するとあるが、フライシートにはベンチレーションがないため、風の通りは裾のみとなる。
となると、空気の循環がうまくいかず、フライシートに結露が出てしまい、量によってはメッシュをすり抜けて中に落ちることがある。
2点目はフライシートのベタつき。
MSRのテントにはありがちな欠点だが、コーティングが経年変化することでベタつきが生まれることが多々ある。これは加水分解によって起きがちだが、自分の使用したフリーライト2にも少しみられた。
余談だが、現行品だとフットプリントなしで価格は68,000円+税。フットプリントは4,800円+税で、合わせると7万円を超えてしまう。手頃とは言い難い価格帯なので、その点ではハイエンドモデルと言えるかもしれない。
本気でウルトラライトスタイルを目指す人におすすめ
個人的には、2kgを下回るほど軽いのに天井も広いフリーライト2はとても快適であると感じた。
軽量、コンパクトなのでトートバッグに入れて持ち運ぶことも可能である。バイカーや自転車でのキャンプなど、徹底して軽量化したい人は検討してみてはいかがだろうか。
MSR「フリーライト2」アイテム紹介(※現行品の紹介です)
価格:68,000円+税
使用サイズ:280×213×91㎝
収納サイズ:15×46㎝
総重量:1.3㎏
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【文/撮影】小川迪裕
【Profile/小川迪裕(オガワミチヒロ)】
フリーランス編集者、ライター。得意ジャンルはキャンプとファッションで、雑誌からWEBまで幅広く寄稿する。最近はタブロイドやイベント冊子の製作、イベントの企画、ブランドPRなどもやる何でも屋に。