グランストリーム代表/大瀬志郎さんインタビューその3
退社以降10数年、西日本でのフェザークラフトの販売を主にしてきたグランストリーム。
だが、そのフェザークラフトが2017年にスキンかヤックの製造をやめた。
商材を失った大瀬志郎さん。
それでもフェザークラフトの魅力を知ってしまったからには、絶対に離れられない。
c フェザークラフトが製造をやめちゃったけど、その後のグランストリームは?
大 ハードの販売ではなく、フェザークラフトを使ったソフトを中心に変えた。
c ブランドがなくなっても、フェザークラフトにこだわってるんだ?
大 結局、いままでフェザークラフトに特化してやってきてるから、フェザークラフトがないとできない。
フェザークラフトはホールディングだから持ち運んだ旅ができる。外洋に出れて、巡航スピード6キロぐらいで、みんなでツーリングができる。
同じことができる艇がない。
漕ぎ手次第では、ほかにもあるのかもしれないけど……。
c 見つかったとしても、ゼロスタートになっちゃう?
大 とりあえず今やってることは、せっかく15年かけて積み上げてきたことだからね。
c いまやってるのは、シーカヤックインストラクターとはまた別?
大 漕ぐだけじゃなく、旅に必要なスキルを全部伝えるから、インストラクターとはちょっと違う。
ちゃんと一人でロングツーリングができるように、イチから教える。
旅するテクニックって、キャンプのノウハウも必要だし、漕げなきゃいけないし、艇も扱えなきゃいけないでしょ。
それを全部できるようになってもらわんと。
いまうちに来てるお客さんは、最初キャンプもしたこともなく、道具をそろえるところから。そういうのを全部伝えて育てた。
c 単なるシーカヤックインストラクターとは違うね。ガイドツアーともまた違うし。フェザークラフトや旅の魅力を販売せずに続けるってこと?
大 そう。
グランストリームをはじめたころはガイドツアーを否定してたの。自分の艇を持ったら、ガイドツアーとかには参加しないで、自由に旅をして欲しいっていう意味で。
雑誌とかでシーカヤックの特集をやってても、ガイドツアーの記事が多い。
たとえ自艇参加のツアーでも、ガイドが全部面倒を見てくれて、「メシまで作ってくれますよ」みたいな。そういうのを否定してたんだよね。
だからガイドをやっている先輩に「そんなんやってるから、育たないんですよ!」って言ったら、喧嘩になっちゃって。
グランストリームをはじめて5年くらいは販売だけだったけど、フェザークラフトを買ってくれたお客さんとは遊びで一緒に漕ぎに行くっていうのはもちろんやってた。でもみんな、せっかく手に入れても、ひとりでは漕ぎに行かないんだよ。海が怖くて。
たから販売した後も、きちんとしたソフトを提供しないとって結論にたどり着いた。
なので先輩には「間違ってました!」って、謝りに行って(笑)。
c ではガイドもやっている?
大 ただ単に連れて行って、メシも用意するとかじゃなくて、育てることを重視してる。
だからガイドとは違うし、インストラクターって言葉もフィットしないと思う。
最終的には、一人で旅ができるようになってもらいたいっていうのは、終始一貫してる。
c グランストリームのオリジナル商品として、寝袋もあるみたいだけど?
大 ナンガとコラボレーションして作った「焚き火繭365」。中綿のダウンが365グラム。
シーカヤックで旅に出たら絶対に焚き火をやるし、焚き火をすれば、そばで寝たくなる。
普通の生地だと穴が空いちゃうけど、これなら大丈夫。
365グラムだとダウン量が少ないけど、中にほかの寝袋をレイヤーすればいいだけだから。「焚き火繭365」だけだと対応温度が10度までだから、3シーズンプラス。組み合わせることで長く使える。
ただ、あんまり売れなくても、コンセプトみたいなのが伝わればいいかなと思って作った。「焚き火のそばで寝て、ヤケドした」とかクレームが来ても面倒だし。
理解してくれた人に使ってもらえればと思って。だから地味に売れ続ければなあって。
グランストリーム オリジナル寝袋「焚き火繭365」 https://granstream.jp/product/グランストリーム%E3%80%80オリジナル寝袋%E3%80%80「焚き火繭/
c 理解してもらうのが、何事も難しい。そのためのソフト事業でもあるってこと?
大 そうそう。
「琵琶湖ロングディスタンス50」っていうのをやってて、1日目20キロ、キャンプして次の日30キロ、2日合わせて50キロを漕ぐ。
「琵琶湖ロングディスタンス50」は自分の装備を持ってマキノ町に集合。2日間漕いだら現地解散。最後はフェザークラフトを畳んで、キャンプ道具を背負って電車で帰っていく。
それができるようになったら、次は自分で旅に出られるようになる。
フェザークラフトの創設者、ダグラス・シンプソンの暮らしに憧れ、琵琶湖のすぐそばに移住したグランストリームの大瀬志郎さん。
フェザークラフト販売の道は絶たれたが、メンテナンスに必要なパーツをダグが今後も供給し続けてくれる。
艇が存在し続ける限り、フェザークラフトの旅は終わらない。
そんな大瀬さんは2018年10月、ダグと一緒にフェザークラフトで石垣島から台湾へ渡る長距離遠征を計画中。
フェザークラフトに魅了されたこれまでの人生、そしてこれからの人生。大瀬さんはライフタイムの大半をフェザークラフトに埋め尽くされることだろう。
グランストリーム
滋賀県高島市マキノ町海津605
電話 0740-20-2620
グランストリームホームページ https://granstream.jp